突発イベント2

閑話 バレンタイン記念SS

 この話は、本編の少し先の未来です。

 お付き合い下さい


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 今日は2月14日

 バレンタインデーである。


 黒絵は、卒業を選ばず大学院に進み、研究者となる進路をとっていた。

 俺とシオン、柚葉の3人は最終学年になっており、既に内定は取れている。

 だから、黒絵は翔子と共に卒業し、俺達は先に卒業し、社会に出る事になる。


 ちなみに、みんなで話し合った結果、俺とシオンは琴音さんの会社に就職、柚葉は、家を守る事になった。

 

 同居は続け、家事関係は基本柚葉が行い、俺とシオンは家に金を入れる、翔子と黒絵も、卒業次第、琴音さんの会社に就職し、四人で家計を支える事となっていた。


 これには、暮内家、南谷家、東儀家、西条家、北上家全てで同意しており、琴音さんはとても嬉しそうだった。

 琴音さんの会社には、現在、翼さんと母さんも居る。

 翼さんは琴音さんの秘書として、母さんは琴音さんの右腕として会社を回しているらしい。


 琴音さんの展望では、優秀な研究者として黒絵が、シオンは母さんの、翔子は翼さんの後釜として、そして、俺は琴音さんから社長を引き継ぎ、後継者となるらしい。

 俺は、社長はシオンが継ぐ方が良いと思っていたが、琴音さんは、ガンとして首を振らず、シオン自身も、『支える方が性にあっている』と言って譲らなかった為、そうなったようだ。


 当然、すぐにでは無い。

 俺も経験を積んで、周りに認められなければ行けない。

 今後も努力は必要だ。


 閑話休題




 そんなわけで、俺達には余裕があった。

 内定が貰えていない学生はまだまだいる。

 恵まれていると言っても良いのだろう。


 今日はバレンタインデーという事で、女性陣たっての頼みで、待ち合わせをしてデートする事になっている。


 俺はポツンと駅で待ちぼうけ。

 待ち合わせの時間は、後30分後だ。

 まあ、俺は一時間位前からいるんだが。


 あいつらは、みんな魅力的だ。

 遅れると、すぐにナンパほいほいとなる。

 だから、早めに行って、待っているのだ。


 もっとも、あいつらは早めに俺が行くのを、いつも嫌がるのだが・・・なんでだ?


 ぼけ〜っとベンチに座って時間を潰している。

 今日も良い天気だ。


「あの・・・暮内くん、だよね?」


 そんな俺に話しかけてくる人がいた。

 そちらを見ると、綺麗な女性・・・ああ、そうか。


「久しぶりだね。」


 女性は、にっこりと笑ってそう言った。


「ああ、久しぶりだね。授業が無くなってからだから、3週間ぶりくらいかな?」


 この子は、同じ学部で講義を受けていた子だ。


「う、うん!今日はどうしたの?こんな所で・・・暇してるなら、一緒に喫茶店でもどう?」


 この子は親切な子で、大学でも、何かと気にかけてくれていた子だ。

 無下には出来ない。

 だけど・・・


「ああ、待ち合わせ中でね。これからデートなんだよ。」

「そ・・・かぁ・・・それって、あの四人だよね?」


 俺達の事は、大学でも知れ渡っていた。


「そうだよ。今日はバレンタインだからね。」

 

 俺がそう言うと、その子は露骨に落ち込んだ。

 ・・・そんなに暇だったのか?


「・・・そう。・・・はぁ・・・やっぱり無理かぁ・・・チャンスだと思ったのになぁ・・・」


 チャンス?

 ああ、暇つぶしのチャンスって事か?

 そりゃ、悪いことしたな。


「いや、こちらこそごめんね?」

「ううん!良いんだよ別に・・・あ!そうだ!今度一緒にお茶でも・・・」

「暮内せんぱ〜い!み〜ま〜し〜た〜よ〜?」


 いきなりの声。

 目の前の女性がビクッとする。

 俺も、声がした方を見ると、そこには、


「なんだ三津浦か。久しぶりだな。」


 三津浦が居た。

 その女性は、三津浦を見た後、最初はむっとしていたが、すぐに何かを考えはじめ、それに気がついた。 


「あなた・・・あれ?見た事あるような・・・あ!?モデルの莉愛ちゃん!?」

「は〜い!莉愛ちゃんで〜す!どうも〜!!」


 三津浦がそう元気に応える。

 

「なんだ三津浦。こんなとこで。」


 俺がそう言うと、三津浦はムスっした。


「なんだじゃないですよ暮内先輩!こんな所で他の女性と話して・・・知りませんよ?」

「はぁ?大学の同級生と話していただけだろうが。お前の方こそどうしたんだ?」

「今日は、光彦くんとデートなんです!」

「ああ、そうか。」


 光彦と三津浦は、まだ続いていた。

 それなりに上手く行っているようで、たまにみんなで会ったりしている。


「と〜こ〜ろ〜で〜」


 三津浦がそんな言い方をして俺にニヤニヤしている。


「なんだよ?」

「実は、少し前から見てたんですけど~、暮内先輩、翔子達に、デートの時に早く来すぎるなって言われてませんか?」

「・・・なんで知ってるんだよ。あいつら、俺を待たせたくないみたいで、しょっちゅう怒るんだよ・・・だから、早めに来たことは内緒な?」


 本当になんで知ってるんだ?

 

「そりゃ、わかりますよ。てゆ〜か・・・変わりませんねぇ。ま、良いです。天罰はすぐに下りますから。ほら、後ろに。」

「へ?」


 俺が後ろを振り向こうとした時だった。

 ガシッと両肩を掴まれる。


「あ、く、暮内くん・・・また、今度ね〜?」


 目の前の女性がそそくさと立ち去る。

 

「・・・莉愛。よく教えてくれました。」


 冷たい翔子の声が聞こえた。

 俺はぶるりと震える。


「あれほど・・・早めに来すぎるなと言ったにも関わらず・・・ソウ、お前はどうやら、過去の事を反省していないと見える。」


 イテテテテテテ!?

 か、肩が・・・


「そーちゃん・・また逆ナンされてたね?もう!!」

「ち、違う!あれは同じ学部だった子で・・・」

「言い訳しない!!」


 理不尽すぎねぇか!?


 そして、俺の目の前に来る女性が一人。


「総司・・・どうやら、その身体にしっかりと教え込まないといけないわねぇ・・・」


 シオンだ。

 仁王立ちをして、覇気をまとっている。

 な、なんだ?身体が震えて・・・


「おお・・・なんだ、なんか目立つヤツらがいると思ったが、お前らだったか。」

「あ!光彦くん♡」


 そんな中、光彦が現れた。

 三津浦は光彦に飛びついている。

 そして、光彦は俺の状態を確認した後、ため息をついて、哀れな生き物を見るような目で俺を見た。


「・・・お前、ちょっとは成長しろよ・・・」

「・・・?どういう・・・」


 意味がわからん。


「莉愛、ありがとね?」

「いいえ、詩音さん。さ、光彦くん行きましょ?暮内先輩達は用事がある様ですし。」

「・・・総司、強く、生きろよ?」

「ま、待ってくれ!光彦!三津浦!!俺を置いていかないでく・・・」

「じゃあね莉愛!」


 俺の言葉を遮るようにシオンが別れを告げる。


「またな莉愛!」

「莉愛ちゃんばいば〜い!ありがとね〜!!」

「莉愛、今度女子会をしましょうね?また!」


 あああ・・・行ってしまう・・・


「さぁ、総司?行きましょう?そうね・・・本当は最後に渡そうと思ってたけど、気が変わったわ。すぐにチョコを渡したいから、ちょっとお店に入りましょう?確か、駅裏にあったわよね?」

「え、駅裏?店?なんで店?というか、なんで怒って・・・」

「ソウ・・・今回は、ちょっと特殊な食べ方をして貰おうか。文字通り舐め回すようになると思うがな。」

「く、黒絵・・・そんな食べ方を店でやれるわけ・・・」


 そう話す間も引きずられて行く。

 

「ほら・・・そーちゃん?お店が見えて来たよ〜?近場で良かったね〜?」


 柚葉が指をさす先、そこは・・・


「ラ◯ホテルじゃね〜か!?」

「ええ、そうですよ総司くん。まったく・・・目を離すとすぐに逆ナンされて、そんな総司くんにはわからせる必要があります。安心して下さい?いや〜!!っていう程、わからせますから。」

「しょ、翔子、あれは同級生で・・・」

「さて・・・行くわよみんな。チョコのお返しは総司の白いチョコよ。最後の一滴まで搾り取りましょう。」

「「「了解!!」」」

「嫌だ!助けて!光彦!!みつひこ〜!!!」


 あああ・・・助けてくれ!

 

 しかし、無情にも引きずり込まれ・・・フリータイムで入ったのに、更に延長に継ぐ延長で翌日の夜まで出られませんでした。

 ・・・途中、翔子が翼さんと琴音さんを呼ぼうとしたのにシオンが気が付き、流石にみんなで止めて阻止できたけど・・・とんでもねぇ・・・つ〜か・・・もう、限界・・・がくっ。


 


side光彦


「嫌だ!助けて!光彦!!みつひこ〜!!!」


 今、こっそりと見ている俺と莉愛の目の前で、総司が引きずられてホテルに消えた。


「・・・暮内先輩、本当に勉強しませんねぇ・・・」

「・・・まったくだな。哀れな奴だ・・・あれで元『クレナイ』ってんだから・・・」

「ええ・・・『クレナイ』に潰された身としては、ギャップが酷すぎて、どう受け止めたら良いのか・・・」

「・・・だな。」


 俺は、両手を合わせ総司の無事生還を祈る。

 悪いな総司。

 俺には、これくらいしか出来ない。


「さ、行きましょ光彦くん?私達はデートを楽しみましょ♡」

「ああ、そうだな。久しぶりの莉愛の休みだしな。」

「仕事が本当に忙しすぎて・・・でも、今日は楽しみますよ。勿論、夜も♡」

「はは・・・お手柔らかにな?」

「嫌で〜す♡」


 ・・・こいつも、底なしなんだよなぁ。

 総司、俺も頑張るわ。

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