第120話 男同士の会話

「いやぁそれにしても驚いたね・・・総司くん、モテるねぇ。」

「からかわないで下さいよ翔一さん・・・」

「いや、南谷くんの言う通りだよ。総司くん、君はモテる。」

「双牙さんまで・・・」


 俺は、琴音さん達からなんとか逃げ出し、今は双牙さんと翔一さんと一緒に話している。

 

「それにしても・・・昔は、柚葉の旦那さんは総司くんになってくれると良いなぁと思っていたけど・・・まさかこんな風になるとはねぇ。」

「・・・すみません。」


 苦笑いしている翔一さんに対して、頭を下げると、翔一さんはにっこり笑った。


「謝らなくても良いよ。さっきはつい頭に来て怒ったけど・・・よくよく考えてみれば、清見が言う通りだった。柚葉が望む幸せなら、それを尊重すべきだった。それに、君が良い子だってのも、知ってた筈なのに・・・こちらこそ、ごめんね?」


 翔一さんはそう言って頭を下げた。


「や、やめて下さい!翔一さんは悪く無いです!」

「・・・うん。じゃあ、もうお互いに謝るのはやめよう。それにしても・・・詩音さんも翔子さんも黒絵さんも、みんな美人だねぇ。」

「それを言ったら、南谷くんの所の柚葉さんも綺麗じゃないか。

「ありがとうございます北上さん。・・・総司くん。親としても、男としても頼む。どうかあの子達を幸せにしてくれよ?」

「・・・はい。絶対に幸せにします。」

「総司くんならば大丈夫だろう。何せ、私達の失敗も君に正されたんだからな。」

「ほう、それはどういったものか聞いても?」

「ああ、それはだね、うちの道場での事なんだが・・・」


 北上道場に絡む話しで盛り上がる双牙さんと翔一さん。

 ・・・良かった。

 この人達に認めて貰って。


 俺は知っている。

 翔一さんがとても良い人だという事を。

 双牙さんがとても家族思いだという事を。


 この人達は、今まで家族を守るために、一生懸命生きてきた、男としての大先輩だ。

 尊敬している。


「お兄ちゃ〜ん!」

「ん?総司くん、妹さんが呼んでいるようだ。また、何かあったら言いなさい。いつでも相談に乗ろう。」

「そうですね。総司くん?僕達に遠慮はいらないよ?困ったことがあったら、いつでも言ってね。」

「はい!ありがとうございます!」


 ああ、本当に良かった・・・


 俺はそんな事を考えながら、瑞希に近づいた。

 瑞希の側には、琴音さんへの説教が終わったシオン、柚葉、翼さんとの打ち合わせが終わった翔子、そして黒絵が居た。


「お兄ちゃん!みんなで写真撮ろ?」

「・・・ああ、良いよ。」

「じゃあ、ここに座って?」

「わかった。」


 俺があぐらで座ると、その横にシオンが来て、腕を組む。

 そして、反対側には翔子が座って同じ様にする。

 次に、右肩に手を置き・・・俺の頭に肩胸を乗せる黒絵と、左後ろで同じ様にする柚葉。


「・・・おい。」


 なんでそんなに密着する? 


「お兄ちゃん、静かにして。」


 そんな俺に、瑞希は黙るように言ってから、そのままあぐらの上に座った。


「・・・瑞希?なんだこの状況?」

「いいからいいから!あ!お母さん!写真撮って〜?」


 瑞希が母さんに声をかけると、母さんはこちらを見てにっこり笑った後、近づいて来た。

 

「あらあら、総司良いわね〜?両手に華どころじゃないわ。」

「・・・恥ずかしいんだが・・・」


 俺がそう言うと、シオン達から声が上がった。


「良いじゃない。記念よ記念。」

「そうそう、そーちゃんそんなに硬く考えないで?」

「ええ、そうですよ総司くん。」

「ソウ、慣れるんだ。今後はこれくらいでは済まないぞ?」


 ・・・いや、写真だよね?

 黒絵、お前どんな写真撮るつもりなんだ?


「撮るわよ〜?チ〜ズ!」


 パシャッと音が鳴る。


「今度は詩音さんのお父さんと柚ちゃんのパパも!」

「ははは。良いだろう。」

「うん、撮りますか。」

「あ、総司?お父さんも一緒に撮ってあげて?」

「ああ、わかったよ。」


 そう言って、俺が立ち上がり、母さんから父さんの遺影を受け取ると、双牙さんと翔一さんと並んで写真を撮る。


「次はね〜お母さん達ね!お兄ちゃんまた座って。」

「はいはい!」


 母さんは嬉しそうに、


「あいよ。」


 俺は苦笑しながら言う通りにした。

 瑞希は本当に嬉しそうだ。

 喜んでくれて良かったよ。


「お母さんは、さっきの私達と同じ位置になって下さ〜い。」

「「「「はーい。」」」」


 俺の隣に琴音さん、反対側に翼さんが座る。

 右後ろに葵さん、左後ろに清見さんが立った。

 葵さんと清見さんが両肩にそれぞれ手を置く・・・流石に、胸は置いて無いぞ!

 

 ・・・そして・・・


「じゃあ、私はここね〜?」

「い”!?か、母さん、そこ座るの!?前で良くないか!?」

「何言ってるのよ。瑞希が同じ位置って言ったでしょ?」

「・・・え〜。」

「お兄ちゃんうるさい!」


 そんな俺達を見て、シオン達も双牙さん、翔一さんも笑っている。

 ・・・まぁ、いっか。

 母さんも楽しそうだし。


「撮るよ〜?はい、チ〜ズ!」


 その瞬間だった。 

 ドンッと衝撃。

 驚いた顔をする俺。

 パシャッ!

 

 無情なシャッター音。


「ナイス!」


 瑞希がめっちゃ笑顔だ。

 何故なら・・・


「「うふふ」」

「琴音さん!?翼さん!?」

「あ、あなた達また!!」

「全然反省してないわね!」

「お母さん!!もうっ!!」

「私は許します。」

「・・・翔子は本当にぶれないね。」

「本当だよ・・・翔子ちゃんったら。」

「・・・総司くん、やっぱり君はモテるよ。」

「ですねぇ・・・にしても、相手の母親って・・・これ、なんてエロゲ?って奴ですかね?」


 両サイドに琴音さんと翼さんが、笑顔で俺の腕にしがみついて・・・思いっ切り腕が胸の谷間に・・・


「「だって同じ構図って言うから。」」

「「同じ構図とは言ってない!!」」

「あははははは!」


 琴音さんと翼さんの取って付けたような言い訳に、清見さんと葵さんがまた噛み付いている。

 そして、母さんは大爆笑。


 シオン達と双牙さん、翔一さんは・・・苦笑している。


 こうして、食事会は無事終了した。


 これで、俺達は親からも認められた。

 俺はとてもホッとするのだった。

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