第115話 報告と修羅場(親) (2)

「・・・なんて往生際が悪い・・・」

「う、うるせぇ・・・」


 はぁはぁと息を切らしながら、なんとか抵抗を続け、貞操は守りきった。

 ・・・いや、だから逆だろうこれ。


「・・・強情な奴だ。」

「本当にねぇ・・・流石そーちゃん・・・」

「もう!総司くんったら・・・もうっ!」


 ジト目で俺を見てくる黒絵、柚葉、翔子。


「・・・なぁ、頼むよ。もうちょっと待ってくれ。ちゃんと筋を通したいんだ。」


 俺がそう言って頭を下げると、四人は難しい顔をして・・・ため息をついた。


「・・・仕方が無い、かぁ〜。」

「・・・そーちゃんはやっぱり付き合ってもそーちゃんだね。」

「総司くん・・・馬鹿・・・」

「・・・まぁ、ソウらしいと言えばらしいかもしれん。」


 良かった・・・納得してくれたか・・・


「但し、条件があるわ。」


 シオンが、俺を見て、そう口にした。

 条件・・・まぁ、待たせるのは俺の意思だからな。

 甘んじて受けよう。


 ・・・ちょっと怖いが。


「なんだ?どうしたらいい?」


 俺がそう言うと、シオンはニヤッと笑った。

 そして、柚葉達に耳打ちすると、全員がニヤッと笑う。


 ・・・だから怖えよ。


「2つあるわ。一つは、できるだけ早く親に報告したいって事。」

「・・・まぁ、それはな。」

「それまでに順番決めとくからね。それが終わったら・・・ね?」

「・・・」


 もうちょっと、ムードとかさぁ・・・

 身も蓋もねぇなまったく・・・


「2つ目は・・・その前に、総司に確認するけど、きちんと報告するまで、最後まではしない、これで良い?」

「・・・まぁ、な。」

「じゃ、2つ目言うわね?あのね?2つ目は・・・んんっ!ちょっと恥ずかしいわね、これ言うの。」


 ・・・何させる気だ?


「最後の手前まではする事。」

「・・・はぁ!?」

「良いじゃない!!だって興味あるんだもん!!」

「いや、それは・・・」

「む〜!!総司の事尊重するんだから、こっちの事も尊重してよ!!」

「ぐっ!?そう言われると・・・」


 これは、俺の覚悟を問われてる、のか?

 ・・・途中で止まれるかどうかだな。

 きっついなコレ!


「総司くん。私は賛成です。いざ本番って時に、失敗しないためにも、しておくべきです。」


 本番とか言うな!

 生々しいわ!!


「ソウ、ワタシも賛成だ。少しでもこの、悶々を解消したい。本能が訴えるのだ。」


 ・・・お前、そんなに肉食系だったか?

 本能って・・・あ、でも、黒絵っぽい。

 こいつ結構、野性味強いしな。

 敵を前にすると飛び込んで行くし。


「そーちゃん?私、恥ずかしいけど、そーちゃんとだったら、興味あるの・・・そーちゃんもそうでしょ?」


 ・・・まぁ、否定はしない・・・てか、出来ねぇな。

 

「それで、総司。どうするの?」

「・・・はぁ。わかった。わかったよ。んで?どうするんだ?これだって順番があるだろ?」

「そうね・・・ん〜・・・どうしようかな・・・ねぇ?」


 シオンがそう言って、3人を見る。

 みんな考え込み・・・


「・・・ワタシは、これについては順番無しで良いと思う。」

「なんで?」

「最後まではしないのだろう?それに、ワタシ達は全員経験が無い。だったら、それぞれを参考にすれば良いのでは無いかと思ってな。」

「あ!私も黒絵ちゃんに賛成!全然知識無いし!」

「・・・ふふふ。お母さんに教わった事をみんなにも教えてあげましょう。」

「翔子、それ助かるわ。私もよくわかんないし。」


 ・・・これ、俺の心労が4倍になる奴じゃない?

 いきなり四人とかねぇわ!!


「そうだ!まずは教材を見ましょう?」

「ん?なんだ教材って。」

「黒絵?お願い。」

「・・・なるほど。ソウ!御免!!」

「な!?またぁ!?」


 黒絵がまた俺を捕まえやがった!!

 そして、翔子と柚葉も同じ様に俺にしがみつく。


「ふ・ふ・ふ!総司・・・あなたはまだ、コレクション、持ってるわよね?」

「!?」


 な、なんで・・・クローゼットの中にあったのは、もう別の場所に・・・


「ここでしょ?・・・あった!!」

「嘘だろ!?なんで知ってるんだ!!」


 シオンが取り出したのは、机の引き出し・・・二重底の下からだった。


「この間、双葉さんに聞いたわ。」

「だからなんで母さんは知ってるんだ!!」


 いや、本当に!

 どうやって見つけてるんだ!!

 この部屋監視されてる!?


「二本か・・・ふ〜ん。こっちの『みんなが迫って来る!?寝る間も無く搾り尽くされちゃった』は良いとしても・・・『彼女の母は欲求不満!逆NTRは背徳の味』・・・ねぇ。・・・ねぇ総司。まさかとは思うけど、お母さんや翼さんを狙って無いわよね?」

「断じて!断じて違う!!誤解だ!!」


 ・・・買ったのは、夏休み中だけど。

 魔が刺したんだ・・・

 だって、あんなの見ちゃったら・・・さぁ。


「・・・ソウ。そっちは見終わったら壊しても構わんな?いや、いずれは両方とも壊すが。少なくとも、事を終えるまでは前者は壊さないと誓おう。」

「そ、それは・・・」

「総司くん。良いですね?良いですよね?総司くんにはちゃんと彼女が居るんですから。それに、お母さんもいます。心配いりません。見終わった後、壊しますね?大丈夫です。ムラムラしたら言って下さい。きちんと、しますから。」

「い、いや、翔子、だからな?俺は別に翼さんを狙ってるわけでは無くてだな?」

「そーちゃんのエッチ!お母さん達はダメ!ダメだよ!!私達だけにして!!」

「柚葉、だから誤解なんだって!でも・・・壊すの止めない?」

「「「「ダメ!!」」」」


 ああああ・・・またお宝が壊されるのか・・・

 

 そして、今から見るのか?

 これを?

 みんなで?


 ・・・どんな罰ゲームだよコレ・・・

 

 



 こうして、上映会は行われた。

 音量は搾り、みんなでテレビに近づき、食い入るように見る四人。


「・・・ふ〜ん・・・なるほどねぇ。こういうのが、好きなんだ・・・」

「わ!?わ!?こんな事するの!?うわぁ・・・出来るかなぁ・・・あ、でも、私の胸なら出来るかも・・・そーちゃん喜んでくれるかなぁ・・・」

「・・・これは、早急に総司くんに育てて貰わなければいけませんね。総司くん?これから、朝昼晩とマッサージお願いしますね?全部総司くんの為ですから。良いですね?」

「・・・ほほう。勉強になる。何せ、こちら方面はまったく手つかずだったからな。何、ワタシの事だ。こっちでも才能がある筈だ。ソウ、安心するがいい。」

「・・・」


 なんか、俺、すっげぇ恥ずかしい目に遭ってる気がするんだけど・・・

 こいつら、なにエロいのをこんな真剣に見てるんだ?

 

 俺、どんな表情してれば良いんだ?

 

 光彦・・・助けてくれ・・・


 いたたまれない・・・ 

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