閑話 文化祭の後

「という感じだったのよ。双葉さんは。」

「ううう・・・は、恥ずかしい・・・」


 琴音の昔語り。

 双葉は、黒歴史を話され、真っ赤になって俯いている。

 総司や瑞希から見ても、初めて見る姿だった。


 今は後夜祭も終わり、みんなで総司の家に帰って来たところだ。

 そして、食事を取りながら、みんなで琴音の過去について聞いていた。


「・・・はぁ〜そうだったんだぁ。」

「・・・血は争えないわね。」

「・・・そうですね。」

「まぁ、だからこそ、ソウもこうなのだろうな。」


 驚きながらも納得している詩音達と、


「・・・全然知らなかった。」

「・・・うん。お母さんうまく隠してたんだねぇ。」


 同じく、驚いている総司と瑞希。


「一番面白かったのは、亮ちゃんと双葉センパイが喧嘩した時よね。」

「ちょ、ちょっと清見!?それは・・・」


 清見が笑いながらそう言うと、双葉が焦ったように立ち上がる。


「ああ、ありましたね。私と清見、葵が入学してからでしたから、良く覚えています。」

「・・・あれには驚いたわね。みんなでバーベキューしていたら、突然、双葉先輩が、『亮司!デレデレしてんじゃねぇこの女たらしが!!』とか言って、いきなり胸ぐら掴んだのよね。」

「あれは・・・その・・・うう・・・」


 翼と葵の暴露に、更に縮こまる双葉。

 それは、清見と翼、葵が入学後、異様に亮司と距離の近い琴音と双葉にヤキモキした三人が、バーベキュー中に亮司にベタベタした為、それにヤキモチを焼いた双葉が亮司に絡んだのだ。


 夏休み中の事で、それより前に一度双葉が爆発した事があるので、双葉が夜叉姫だという事は3人にはすでにバレていたのだが、それでも驚いたようだ。


『ふ、双葉!?いきなり何を・・・』

『うっせぇ!!このたらし!!』

「ぶっ!?や、やったなこのっ!!」

『おっ!?やるかこの〜!!』


 ビンタされた事で、亮司も怒り、掴み合いになる二人。


『や、やめなさい二人共!!』

『そうだよ亮ちゃん!双葉センパイ!!』

『駄目です!喧嘩は止めましょう!!』

『双葉先輩!やめ・・・うわっ!?なんでこんなに力強いの!?』


 必死に引き剥がす四人。

 しかし、何度か手を出した双葉に対し、亮司は掴みはしたものの、手を出さなかった。


 少しして、落ち着いた双葉と亮司。


『・・・なんで、手を出さなかったんだよ・・・』

『・・・女の子に、手を上げられるかよ・・・それに・・・』

『それに?なんだよ?』

『傷付けたく、ないんだ。仲間だから・・・』

『・・・そっか。・・・悪かったよ。ごめん。』

『・・・良いよ。でも、なんで怒ったんだ?』

『・・・うっせぇ。内緒だ。』

『なんだよそれ。』


 二人はそう言って笑い合う。

 そして、そんな二人を面白く無い顔で見つめる四人。


『・・・納得いかない。』

『・・・ほんとですね。』

『・・・亮司さん・・・馬鹿・・・』

『・・・面白くありませんね。』

『説教ね。』

『『『はい!』』』


 こうして、四人から説教される二人だった。



「・・・って感じでしたね。」

「葵・・・お願い・・・もうやめて・・・」

「あら?珍しいわね双葉さん?からかい好きのあなたが、からかわれるなんて。」

「ううう・・・琴音先輩、もう許して・・・」

「駄目ですよ?双葉センパイ?これも、敗者から勝者へのやっかみだと思って下さい。」

「清見〜。」

「いいじゃないですか双葉先輩。これもいい思い出です。」

「翼も〜。そんな失敗、子供に知られたく無いわよ〜。」

「それもこれも、今日、大暴れしたからね。あれほど、そういう面を子供に見せるなって言ったのに。」


 腕を組んで呆れた様にそういう琴音。


「だって〜・・・瑞希の泣いてる顔見た瞬間に、頭が真っ白になっちゃったんだもん・・・」


 しょんぼりしてそう言う双葉。


「・・・そうだったんだ。・・・あのねお母さん?私、お母さん見て怖がらないし、嫌にならないよ?だって多分・・・お兄ちゃんもおんなじ様なもんだろうし。」

「っ!?なっ!?お、お前知って・・・」


 総司は瑞希の言葉に驚いて振り向く。

 瑞希は、呆れた様にした。


「あのねお兄ちゃん?あんなに血まみれで帰って来たり、変な空気で帰ってきたら分かるって。お母さんも気がついてたでしょ?」

「う”ん”っ!」

「ぐっ・・・!」


 瑞希の言葉に即答する双葉。

 そして、地味にダメージを受ける総司。

 総司も黒歴史が家族にバレていたのだ。


「でも、お兄ちゃんの事嫌ってないでしょ?だから、お母さんの事も嫌わないよ?」

「・・・瑞希〜!」

「よしよし。」


 涙ぐんで瑞希に抱きつく双葉と、その頭を撫でる瑞希。

 それを微笑ましそうに見ている琴音達。


「・・・まさか、お前まで・・・ってことは無いよな?」


 恐る恐る瑞希に問う総司。

 瑞希は苦笑して、


「無い無い!私はいたって普通だよ普通!・・・ボソッ(学校では、ちょっと変な風に呼ばれてるけど。)」

「・・・瑞希?」

「あ、なんでも無いよ?」


 瑞希と総司が話していると、葵が黒絵を見て、そう言えば、と口を開いた。


「あ、黒絵?あなたも、夜な夜なでかけて喧嘩してたでしょ?私も気がついてたからね?」

「え”っ!?母上も気がついて・・・」


 いきなりの葵のカミングアウトに、黒絵も固まる。

 おそらく初めて出る声を出しながら。


「あなたも、私をなんだと思ってるの?これでも、あなたの母なのですよ?娘がどういう行動をしていたかなんて、お見通しです。その時に総司くんと会ったのでしょう?」

「・・・その通りです。」

「ま、そう考えれば、悪い事では無かったわね。いい出会いをしたわけだから。」

「・・・はいっ!!」


 そう微笑み合う黒絵と葵。

 

「人に歴史あり、ね。それにしても、隠し事すると後が大変ね〜。」

「・・・それ、お母さんが言う?」

「・・・い、良いじゃないの。」


 琴音の言葉に、半眼でツッコむ詩音に、琴音が冷や汗を流す。

 彼女も、隠し事をしたせいで、娘と揉めた一人なのだ。


「お母さん、私は特に隠し事は・・・ありましたね。」

「・・・まぁ、翔子の場合は、仕方が無かったから良いじゃないの。私は・・・無いわね。」


 翔子も、家族に迷惑をかけたく無かったが為に隠していて、大事になりかけた一人だ。


「・・・ねぇ、お母さん。お母さんは何かある?私は・・・そーちゃんとの失敗の件、かなぁ・・・耐えきれなくて、自分から話ちゃったけど。」

「ん?私は無いわよ〜?あ、初ちゅーが亮ちゃんってくらいかな?」

「「「「!?」」」」


 その言葉に、双葉と琴音、翼と葵が、ぐりん!っと清見を見る。


「き、清見?それ・・・私、亮司から聞いてないんだけど・・・」

「そ、そうね・・・い、一体、いつの事かしら・・・?」

「・・・清見。吐きなさい。吐け。」

「清見・・・あなた・・・」


 頬をひくひくさせながら、口を開く四人に、清見はテヘペロっとしながら、


「えっへっへ!私が中学生の頃、高校生の亮ちゃんが、翼と私に、部屋で勉強教えてくれる事になってて、翼より先に亮ちゃんの家に行ったら、亮ちゃんうたた寝しててさぁ、こそっと・・・ね?」

「「「「・・・・・・」」」」

「いや~翼があの時、少し遅れて来てくれたからさぁ。チャンスだ~って思ってね~ってあら?な、なに?」


 そう言う清見に、無言で詰め寄る四人。

 そして、


「何してくれてんだ清見ぃ!!あたしと亮司はお互いに初キスだと思ってたのによぉ!!」


 ヤンキー丸出しで怒鳴る双葉。


「こればっかりは双葉さんを止められないわね!く〜っ!!あの頃、あなた内心、リードしてるってニヤニヤしてたんでしょ!そうでしょ!!」


 う〜!!っとうなりながら涙目の琴音。


「清見・・・おのれ・・・何故私が来るのを待たなかった・・・そうしたら童貞まで奪えたというのに・・・」


 微妙にずれている翼。


「清見・・・それはちょっと許せないわよねぇ・・・一人だけ・・・うふふ・・・」


 威圧しながら笑顔で近寄って行く葵。


「ちょ、ちょっと・・・む、昔の事でしょ?あはは!スマイルスマイル!」

「「「「清見(さん)〜!!」」」」


 必死で謝罪する清見。

 説教している四人。



 そんな母親達を見て、総司は思った。


「・・・やっぱ、隠し事は駄目だな・・・」


と。


************************

これで今章も終わりです。

次章は、先に書いたとおり付き合った事による変化と、親への挨拶、そして幸福な日々となります。

最終章に向けての甘々な日々となる・・・予定です。

最終章は、丸々エピローグとなると思います。


その後にアフターを書くかどうかは・・・まだ決めかねているところ

です。

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