第111話 文化祭(4)

「はぁ?なんだお前?パーカーなんか被って!女から貰った服着て強くなったつもりか〜?」

「まったくだ。本当に馬鹿の考えることはわからんね。」


 会計と副会長が俺を馬鹿にするようにそう言った。

 しかし、副会長と一緒に俺を攻撃した男は違ったようだ。


「・・・パーカー?・・・赤い・・・いや、まさかな・・・こんな陰キャの筈・・・」


 ぶつぶつとそう言って訝しげにしている。

 まぁ、こいつらに合わせてやる必要も無いか。


「どうした?不意打ちしか出来ないのか?性格が腐った奴は、男としても腐ってんな。」

「・・・なんだとこの陰キャが!!」


 男の仲間の一人が襲いかかってきた。

 大ぶりに殴りつけてくる。

 相手を威圧するための殴り方だ。

 

 そして、だからこそ隙が多い。


「阿呆。」

「がっ!?」


 俺はカウンターで殴ってきた男の顔面を掌底で撃ち抜いた。

 

「がぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「うるせぇクソだなぁ。」

「ごほっ!?」


 鼻が折れたそいつは、顔を押さえて悲鳴をあげながら転げ回っていた。

 うるさかったので腹を蹴って黙らせる。


「な・・・ぁ・・・?」

「お、おい・・・!?」


 会計と副会長が黙った。


「さっさと来いよ。」


 俺がそう凄むと、こちらに来ようとしていた他の男たちが、動きを止める。


「来ねぇなら、こっちから行くぞ?」


 俺はスタスタと近くにいた奴の所に近づく。


「くそっ!舐めんな!!」

「舐めるに決まってんだろ。」

「ごふっ!?」


 俺の顔面を殴ろうとした男に、カウンターで膝蹴り。

 そしてそのまま、


「寝てろ。」

「がっ・・・!?」


 顔面に回し蹴り。


「ぼさっとしてんなよ?」

「え・・・?ぐあっ!?があああああ!?足がアアア!?」


 その隣にいた男の膝を蹴り抜いて骨を折ってやる。


「おら、てめえもだ。」

「ひぃっ!?ぐはっ!!げっ・・・!?」


 その後ろにいた男には、ボディブローからの顎への掌底。

 今、こいつの視界はぐちゃぐちゃだろう。


「にしても、おもしれーことしてくれんな糞ども。こんな事、学校でやっちゃあ終わりだなぁ?」

「あ・・・あ・・・」


 ふらふらしている馬鹿にそう言ってやるが、返答は無い。

 まぁ、そうだろうな。

 気持ち悪くて、それどころじゃ無いだろう。


「ほれ、楽にしてやる。お前も寝てろ。」

「あっ・・・」


 俺は今度は縦に揺らすように掌底を打つ。


 直撃し、そのまま倒れ込む男。

 そして、俺はそのまま会計と副会長、そして、もう一人を睨んだ。


「あ・・・う、嘘だ・・・こいつ・・・ただの陰キャじゃ・・・」

「な、な、ふ、副会長の僕に向かって暴力を・・・」

「あ?てめえらから始めたんだ。覚悟は出来てんだろ?」

「「う・・・」」


 俺が、一歩歩き出すと、じりじりと下がる。


「こ、こいつ・・・まさか・・・『クレナイ』?いや・・・でも・・・こんなとこに居るわけが・・・」


 お?

 こいつは知ってるのか。

 だがな?


「『クレナイ』?『クレナイ』はもういない。ここに居るのは暮内総司、だ。もう、逃げも隠れもしねぇ。」

「「「「っ!!」」」」


 俺の言葉に、シオン達が息を飲んだのが分かった。

 そう、もう隠さない。


「てめぇら、よくも俺の女に手をだしてくれたな?地獄を見せてやる。」

「・・・総司・・・」

「・・・そーちゃん・・・」

「総司先輩・・・」

「ソウ・・・」


 俺はちらっと四人を見た。


「悪い。後でしっかり言うが、俺、やっぱりみんなが好きだわ。どれだけ考えても決めらんねぇ。だから、俺のものになってくれないか?いや、俺のものになって貰う。どれだけかかってもな!」


 そう言って、ニカッと笑った。

 コレが俺の出した答えだ。

 そんな答えを聞き、四人は・・・笑顔になった。


「・・・返事は後でしてあげるわ!だから・・・」

「うん!まずは終わらせましょ!そーちゃん頑張って!!」

「ええ、総司先輩?これ以上怪我しないで下さいよ?」

「ああ、そして、ワタシは、こいつらが逃げ出さないようにしてやろう。数人は貰うぞ?」

「・・・頼む。」


 ・・・良かった。

 ボロクソ言われるんじゃ無いかって思ってたが、そうじゃ無かった。

 まぁ、それは後の話か。


 黒絵がニヤッと笑って、残りの奴に襲いかかった。

 ・・・おお・・・ふっ飛ばしてるなぁ・・・

 多分、フラストレーション溜まってたんだろうな・・・


 ま、それはそれとして・・・


「さて・・・と。よくもまぁ、殴りつけてくれたもんだ。」

「お、お前が・・・」

「黙れ。」

「ぎゃあっ!?て、手が!?痛えええええ!?」

「おら!ぶっ倒れろ!!」

「ぐはっ!!」


 会計の腕を回し蹴りで折り、そのまま返す足で胸を蹴り飛ばしてやった。

 会計はそのまま後ろにぶっ倒れて、気絶した。


「ひ、ひぃ・・・やってられるか・・・!!」


 副会長がジリジリと後ろに下がり、そのまま転身して逃走・・・しようとした所に、早々に男たちを倒した黒絵が立ちはだかった。


「・・・貴様には以前に伝えたな?生徒会に属する者として、生徒を平等に見ろ、と。貴様は生徒会役員失格だ。今をもって罷免とする。そして・・・」

「か、会長!僕は・・・!!」

「よくもソウを傷付けてくれたな!!その痛み思い知れ!!」

「ひっ!?ぎゃあ!?がっ!?ごふっ!?」


 黒絵はそのまま高速で懐に飛び込み、足の甲を踏み抜き、肘で顎をかち上げ、左の掌底を胸に当て、副会長をぶっ飛ばした。

 ・・・あいつ生きてるよな?

 ピクピクしてるから多分大丈夫だと思うが・・・


 さて、俺は、と。


「後は、てめえだけだな?」

「・・・くっ!だ、だが、今頃仲間が・・・」

「ん?そんなもん、お前をぶっ倒した後、向かって倒すだけだ。もう、隠さないしな。」

「おう。なんせ、お前らの悪事はしっかりとこのケータイで撮ってたからな。隠せないぞ?」


 近くに寄ってきた光彦がそう言う。

 男は、苦虫を噛み潰したような顔をした。


「くそっ!こ、ここで俺をボコっても後から・・・ぎゃ!?ぎゃああああああ!?」


 俺はくっちゃべってた男の頬を張り倒す。

 そして、そのまま指をへし折ってやった。


「どんだけでも来い。それと参考に教えてやる。『クレナイ』が今まで仕返しが来なかった理由、なんでかわかるか?それはな・・・そんな事を思い浮かべられない位の目に遭わされるからだ。」


 俺はそいつの髪を掴み、至近距離まで顔を寄せ、そう笑いかけた。


「ひぃ!?」


 おいおい、折角、人が笑顔で教えてやってんだ。

 もうちょっと良い顔しろよ。


「だから・・・お前も勿論そうなる。あらよっと。」


 ボキィッ!!


「あがああああああ!?う、腕があああああ!?」


 腕を掴んで脇固めにし、そのまま折る。


「さて、次は・・・」

「か、勘弁して下さい!!仕返しなんてしません!!しませんから!!」

「・・・不意打ちする奴のことなんて信じられなぇな。」


 俺は、掴んでいた髪をそのまま引きちぎる。


「ぎゃあああ!絶対!絶対しませんから許してぇぇぇぇ!ぐふっ!?」


 俺は転げ回るそいつを蹴って止める。


「後で、てめぇらが何をして、何をしようとしたのか、しっかりと先生に話せよ?良いな?それで勘弁してやる。」

「はぃぃぃぃ!!必ずぅぅぅ!!」


 俺は、そいつを放置し、立ち上がる。

 

「さて、騒ぎになっている所に行って止めよう。」

「ああ、そうだな。」


 Prrrrrrrrr!


 そのタイミングで黒絵の携帯が鳴る。


「もしもし・・・わかった!すぐ、そちらに向かう。ソウ!正門前だ!何やら保護者を相手に揉めているらしい!すぐに向かおう!!」

「ああ!!」

「あ、俺はこいつら見てるわ。」

「じゃあ、私も。」


 光彦と三津浦が、そう言ってくれたので、俺達はすぐに正門前に向かう。

 そして、そこで見たものは・・・


「は・・・?」

「え・・・」

「嘘・・・」

「・・・なんです?コレ・・・?」

「こ、これは・・・」


 俺達は唖然とした。

 何故ならそこには・・・


「おらぁ!!小僧共!!それでもキン◯マついてんのかぁ!?ああん!?」

「ふ、双葉センパイ!それ以上は!!」

「落ちついて双葉さん!!もう終わってるから!!」

「くっ!?相変わらず凄い力ね双葉先輩!!」

「葵!頑張って!!」


 母さんが、イキった髪型をした男の顔面をボコボコにして胸ぐらを掴みあげていて、それを必死で止めているお袋さん達と、


「・・・お母さん・・・元ヤン?」


 呆然としている瑞希だった。


 ・・・何がどうなってんだ?

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