第109話 文化祭(2)sideシオン

「取り敢えず生徒会室に向かいましょうか。」


 あたしはそう言って生徒会室に足を向けた。


「・・・良いんですか?明らかに・・・」

「・・・ええ、何かおかしかったわね。でも、総司が言ってたでしょ??『目』で。」

「はい。言われた通りにしろ、と。」

「そーちゃん・・・何かされるのかな?」

「大丈夫でしょ。だって・・・」


 あたしは、少し前を思い出す。





「・・・莉愛、お前は西条達と、生徒会室に向かえ。」

「・・・光彦くんはどうするの?」

「俺は、ちょっとやる事ができた。」

「・・・わかった。」

「西条。」

「何?」

「北上にこれを伝えておいてくれ。そしておそらく狙いは・・・」

「あたし達、でしょ?」

「・・・流石だ。じゃ、行くよ。」

「・・・総司を頼んだわよ?」

「ああ。」


 



 そう。

 吉岡は、総司達の跡を追ったわ。

 おそらく、何かがあると思う。

 でも、だからこそ・・・


「・・・黒絵さんの力が必要になる何かが起きるって事ね?」

「そうなる可能性が高いと思うわ。」

「じゃあ急ごう!」


 あたし達は、すぐに生徒会室に向かった。

 

 生徒会室は、施錠されていた。


「これで、あいつが嘘を言ったのは証明されたわね。」


 すぐに黒絵に電話をするけれど、繋がらない。

 話し中だった。

 何度か電話をしたけど、ずっと電話中だった。

 何か不足の事態でもあったのかしら・・・


「ん?詩音達じゃないか。こんなに早くどうした?合流まで、後一時間位あっただろう?」

「黒絵!」


 他の生徒会の女性を引き連れて、黒絵が現れた。

 耳には携帯電話をあてたまま。


「黒絵!大変なの!おそらく総司が狙われてる!!」

「・・・詳しく聞こう。すみません母上、ちょっと野暮用が出来てしまいました。また、後ほど掛け直します。」


 ・・・葵さんだったのね。


「それで一体何が?」


 黒絵は、生徒会の女性に、代わりに運営に関する指示を出し、ここから離れさせた。

 あたしは、それを見てから、ここに来る事になった経緯を説明した。


「・・・なるほど。それはおかしい。彼らは、何を考えている?」


 黒絵は、眉を顰めて考えはじめた。


「あのね?仮説を立てて見たの。」


 あたしが考えた仮説はこうだ。

 総司を体育倉庫でなんらか足止めをする。

 場合によっては、暴力的ななにかかもしれない。

 そして、その間に、あたし達を狙う。

 その為に、生徒会室に集めた。


 ・・・考え過ぎかもしれないけど、これがもっとも悪いパターンだと思う。


「・・・そこまでするとは思えんが・・・ちょっと、電話をしてみるか。」


 黒絵は、そう言って、何度か電話をした。

 そして・・・


「駄目だな。会計も副会長も電源を切っている。これは確定だな。」


 忌々しそうにしている黒絵。

 

「じゃ、じゃあそーちゃんを助けに行かないと!!」


 柚葉が焦ったようにそう叫ぶ。


「そうね。取り敢えず体育倉庫に・・・」

「お邪魔しま〜す!!」


 あたしがそう言った瞬間、生徒会室に5人位の男達が入ってきた。

 全員、うちの学校の制服着ている。


「なんだ君たちは。ここは、勝手に入っていい場所では無い。」


 黒絵が一喝するも、ニヤニヤしているだけだ。


「あ〜会長さんは相変わらず怖いねぇ!でも、それも今日まで!これからは俺達の言うことを聞いてもらうよ〜ん!」

「ひゃははははは!お前雑魚感がスゲェぞ!?」

「良いじゃねぇか!楽しまねぇとなぁ!!」

「お!?学校辞めた莉愛ちゃんもいるじゃね〜の!こりゃ良いね!!」


 ・・・うちの学校にまだこんなクズ達がいたのか。


「よう西条。」

「・・・誰?」

「おま・・・覚えてねぇのかよ!!」

「ははは!忘れられてやんの!!」

「うっせー!お前らも一緒だろうが!!

「そんな事ないよな?東儀ちゃん?」

「・・・誰です?」

「ほら見ろ!!」

「マジかよ・・・」

「俺は!?南谷!」

「・・・ごめんなさい。」

「・・・くそっ!」


 ・・・どうやら、あたし達に振られた奴らみたいね。

 全然覚えて無いわ。


「それで?君たちの要求は?」

「あ〜ん?そんなの決まってるだろ?お前らがご執心のあの陰キャをボコられたく無かったら、大人しくついて来い。あ、莉愛ちゃんもね〜。」

「・・・」


 ・・・なるほど。

 そういう事。

 あたしはちらりと黒絵を見る。


 黒絵もあたしを見た。

 お互いに頷く。 


「良いだろう。」

「よし。そんじゃまぁ、行こうぜ?ああ、大声出すなよ?あいつがどうなるかわかんねぇ〜ぞ〜?」

「・・・わかった。」


 あたし達は、男達と体育倉庫に向かう。

 

 そして・・・頭から血を流している総司をみつけた。

 嘘!?


「総司!?」


 あたし達は駆け寄った。

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