第105話 光彦との相談

「・・・なるほどなぁ。」


 今は昼放課。

 俺は光彦と飯を食っている。

 何故こうなっているのか、それは今朝、学校に着いてすぐに、光彦が寄ってきたところから始まりだった。


「おい、総司。お前ら喧嘩でもしたのか?」


 心配そうにそう言う光彦。

 ・・・こいつはやっぱり良いやつだな。

 

「そういう訳じゃない。な?シオン?」

「ええ、そうよ。あたしが総司を好きなのは変わってないわ。」

「・・・そうか。ならいい。余計な詮索をした。」


 どうやら、他のクラスメイト達も、いつも一緒にいて、俺にべったりのシオンや柚葉達が、今日は離れていた為、気になっていたようだ。

 様子を伺うような視線をいくつも感じていた。


 特に、ちらちらとシオンを見ている視線が多い。

 男からの物が多いから、あわよくば、シオンに告白でもしようとしているのかもしれない。


 しかし、光彦の言葉に、堂々とシオンが俺への気持ちを口にすると、がっかりしたように、視線を外していた。

 ・・・相変わらず、人気があるな。

 シオン達は。

 この様子だと、おそらく、柚葉や翔子、黒絵も同じ様なもんだろうな。


 しかし、光彦は、逆にホッとしたような素振りを見せた。

 ほんと、いい友達だよまったく。

 よし!


「なぁ、光彦。今日、俺と一緒に飯を食わないか?」

「・・・いや、だが・・・」

「あたしは良いわよ?今日は柚葉と翔子、黒絵と食べるから。」

「な、なら良いが・・・」


 唖然としてシオンを見るが、あっけらかんとそう言われ、腑に落ちないながらも了承してくれた。


 こうして、俺は光彦と二人で飯を食うことになった。


 シオン達は、生徒会室で食事を取るようだ。




 そして、俺は光彦に事情を話し、それを聞いた光彦の反応が、最初の通りだったのだ。



「四人を好きになっちまったってか・・・普通に聞いたら、馬鹿にするか呆れ返るかなんだが・・・お前らの場合は事情がなぁ・・・」


 そう言って、難しい顔をする光彦。

 

「まあな・・・自分でも気が多いとは思うが・・・事実こうなったからには、きちんと考えたいんだ・・・」

「・・・ま、そうだわな。う〜ん・・・まぁ、俺なら、で、聞いてくれ。」

「ああ。」


 光彦はそう前置きをして話しはじめた。


「もし、俺なら・・・気持ちを正直に言って、そして・・・どうするか、みんなで話しあうな。」

「話し合う?」

「ああ、このままの状態で行くのか、それとも、見極める為に一人ずつ付き合って行くのか・・・付き合うという関係無しで、同じ様な状態で行くのか。だが・・・うまく行くビジョンは見えん。」

「・・・」

「だが、これはお前たちの場合は当てはまらないと思う。ぶっちゃけると、あいつらがその辺を話し合っていないとは思えん。」

「・・・ああ、俺もそう思う。」

「あいつらはなんて言ってるんだ?」

「なんでも、一つの展望はあるらしい。だから、それに行き着いて欲しい、と。」

「・・・なるほど、な。しかし・・・」


 光彦は、そう言って、ブツブツと考え込んだ。

 そして、「・・・まさか、いや、多分・・・」と言った後、


「いや〜・・・これは、俺は余計な事は言っちゃ駄目そうだな。」

「・・・そうなのか?」


 そう言って苦笑した。

 

「お前が自分で考えて決断するしか無いやつだわ。まぁ、頑張れ!」

「・・・はぁ〜。そうか・・・」


 あまり、建設的な意見は聞けなかったか。

 いや、そうじゃないか。

 光彦は、何かに気がついたようだった。

 

 ということは、こいつの事だ。

 助言が入っているのだろう。

 

 なんだ・・・?


「総司。」


 考え込む俺を見かねてか、光彦が俺に話しかけてきた。


「深く考えるな。ドツボにハマるぞ。良いか?お前がどうしたいか、それを良く考えろ。他の人・・・誰か、そんな事、言わなかったか?」

「そう言えば・・・」


 母さんがそんなような事を言っていたような気がする。

 なんだったか・・・


『あなたが一番大事なモノを、全てにおいて優先しなさい。』


 そうだ。

 確かにそう言った。

 全ておいて優先する・・・一番大事なモノ・・・俺の大事な・・・


「・・・どうやら、言われているようだな。だったら、後はお前次第だよ。他の人間はいい顔しないだろうが・・・まぁ、俺は応援するよ。後、多分莉愛も、な。」

「・・・そうか。わかった。ありがとな?」

「良いってことよ!本音で話せる数少ない友達だろう?俺も、お前も、な。」

「・・・ああ、そうだな。」


 俺の大事なモノ、か。

 俺の大事なモノは、家族・・・そして、あいつらだ。

 

 それを優先する・・・何よりも優先・・・

 クソッ!

 もうちょっとで答えがでそうなんだが・・・


 後一つ何か後押しがあれば・・・答えが出そうなんだが・・・

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