第10章 揺るがない気持ち
第104話 お泊り会を終えて
現在、学校に登校中だ。
今日は、一人で登校している。
これには、理由がある。
先日、シオン達が泊まった日、母さんと話した後、俺は母さんと共に家に帰った。
そして、部屋に入ると、シオンや黒絵達が、赤い目を
「・・・どうしたお前ら?」
明らかに泣いた跡だった。
気になった俺は、そう四人に尋ねると、
「総司が気になって、眠くても待っていたのよ。」
「ああ、ソウが帰った来た事だし、寝るか。」
「うん、そうしよう?」
「それでは、布団を敷きましょうね。」
そう言って、寝る準備をはじめた。
何かを隠している。
そう思って、聞こうとした。
だが、
「何も聞かないで。」
「ソウ、すまないが、話せない。」
「そーちゃん・・・お願い。」
「わかって下さい。」
そう言われてしまい、口を閉ざした。
釈然としないが、話せないなら仕方がない。
俺たちは、敷き詰めた布団に横になる。
何故か、今日は、シオン達は積極的に誘惑して来なかった。
だが・・・
「・・・お前ら、本当にどうした?」
「「「「・・・」」」」
何故か、しがみつくように、甘えるようにすり寄って来るシオン達。
当然、四人でしがみつく事は出来ない。
だが、柚葉が頭の上に横になり、小柄な翔子が、俺の右側にいる黒絵と俺の隙間に入り、左からシオンが寄り添っている。
過剰な接触では無く・・・どちらかと言うと、子供が、親と離れたく無いと、しがみついているかのようだった。
「・・・なぁ。」
「・・・何?」
俺は、当然それが気になっていたが、それでも、そこには触れず、先程自分で得た答えだけでも伝えようとした。
もう、これ以上こいつら相手に逃げたくは無かったのだ。
「俺・・・お前たちの事、好き、みたいだ。」
「「「「・・・」」」」
無言だった。
全員が好きだなんて言ったから、嫌われるかとも思ったが、しがみつく力が強くなるだけで、そんな感じはしなかった。
「だから、今はまだ、一人が選べない。こんな誠実じゃない、優柔不断ですまないが・・・きっと結論を出す。だから・・・待っててくれないか?もう、見限れだなんて言わない。自分を卑下する様な事も控える。だから・・・」
俺が、そこまで言った時だった。
クスン・・・クスンと、泣き声が聞こえて来た。
「・・・泣いてる、のか?」
誰か・・・では無くて、みんなだった。
シオンも、柚葉も、翔子も、黒絵も、みんな泣いているようだった。
「・・・傷付けたか?」
俺が心配になって、そう尋ねると、
「・・・違う。違うぞソウ。嬉しいのさ。お前が、きちんと本音で話してくれているのが。」
「そうよ・・・総司がちゃんと、その感情を認めてくれているのが嬉しいの。」
「そーちゃん・・・あのね?私達、ちゃんと待つよ?心配しないで?」
「そうですよ・・・でも、一つだけ聞いて下さい。どうか、妥協しないで下さいね?」
「・・・妥協?」
「そうだな・・・翔子の言うとおりだ。いくらでも待つ。だから、お前が最善だと思うようにして欲しい。」
・・・最善、か・・・
「あたしも、翔子や黒絵に賛成。実はね?あたし達には、一つの展望があるの。総司・・・どうかそれに行き着いてね・・・待ってるから・・・いつまでも待ってるから・・・」
シオンからの懇願めいた言葉。
よくわからないが・・・真剣に受け止める。
「・・・わかった。それが何かはまだわからない。でも、いつかきっと・・・その答えにたどり着いて見せる。」
そう言うと、四人は俺にしがみついたまま・・・俺の頬にそれぞれキスをした。
俺は、一つの考えを四人に話した。
「なぁ、一つ頼みがある。」
「・・・何かしら?」
「当分・・・そうだな。少しでいい。俺を一人にしてくれないか?」
「・・・何故だ?」
「少し、確かめたいんだ・・・俺がお前らを好きな気持ち、これが俺の心の弱さから来たものじゃなくて、心の底からお前たちを好きなのか、確認したい。駄目か?」
「「「「・・・」」」」
無言が続く。
そして・・・
「・・・詩音、柚葉、翔子、ワタシは、ソウの考えを尊重したいと思う。」
黒絵がそう、ぽつりと呟いた。
「・・・わかりました。では、私も尊重します。ただし、期限を設けて欲しいです。だって・・・寂しくて、私が耐えられそうにありません・・・」
翔子の言葉に、
「・・・そうだね。そーちゃん、それなら私も我慢する。」
「・・・あたしも、我慢するわ。総司、それでも良い?」
柚葉とシオンもそう言った。
期限か・・・
「・・・じゃあ、来月の文化祭、その時まででどうだ?」
「・・・文化祭は一緒に廻ってくれる?」
「ああ、シオン、約束するよ。文化祭は、みんなで廻ろう。それで良いか?」
「わかった。」「うん。」「はい。」「ええ。」
こうして、俺は、少しの間、一人で考える時間を貰ったのだ。
今日から、一ヶ月弱。
それが俺に与えられた時間。
その間に・・・俺の気持ちをきちんと見つめ直す。
もう、
あいつらに寂しい想いをさせているんだ。
恥ずかしいなんて言っていられない。
学校に着いたら・・・光彦にも相談してみよう。
勿論それを指針にする訳ではない。
ただ、色々な意見を聞いて、俺なりに考えてみたい。
俺は強くそう思った。
俺の考える、最善の未来に行き着くために。
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