第98話 秘密の一夜 side黒絵

「総司?大丈夫?」

「・・・大丈夫。」

「そーちゃん?気持ち悪くない?」

「・・・気持ち悪くないよ。」

「総司先輩、ちょっと横になりましょう?」

「・・・なる。」


 ・・・なんだこの可愛い生き物は!?


 今、ワタシ達は、酔っているらしいソウを連れて、ソウの部屋まで来ている。

 既に、布団は持ち込んであり、床に敷き詰めてある。


 酔っているソウは・・・とても可愛い!

 普段とのギャップが更にそれを後押ししているようだ。

 全員、目を輝かせている。

 正直、琴音さんや翼さんが暴走したのも頷けるというものだ。


「ソウ、少し寝るかね?」

「・・・うん。」


 ワタシの問いかけに、ソウが答えた。

 可愛い!!

 おのれソウめ!!

 ワタシをこれ以上惑わせるな!!

 理性が飛びそうだ!!

 詩音達も欲望で目がギラギラしているな!!

 

「はい、そーちゃん?ねんねしましょうね〜?」


 柚葉、それではソウが子供みたいではないか!


「うん・・・寝る。」

 

 そう言い、目をこすりながら、こくりと頷くソウ。

 ・・・あ〜!ソウ!あざとい!あざといぞ!

 いつからそんなにあざとくなったのだ!!

 あの、凛々しい『クレナイ』はどこに!?


「総司先輩?ぽんぽんしてあげますね?」

「・・・ありがとう。」


 うとうとしているソウ。

 あどけない顔をしてからに!!


 ・・・ごくりっ


 誰かが生唾を飲み込む音が聞こえた。

 

「・・・黒絵。興奮しずぎ。あんたの唾を飲む音が、こっちにまで聞こえたわよ?」


 ・・・どうやら、ワタシだったようだ。

 だが、仕方がないでは無いか!

 ソウが可愛すぎるのが悪いのだ!!


 そうこうしているうちに、ソウは寝てしまった。

 ・・・パンツ一枚で。


「どうしましょうか・・・」

「どうも何も・・・着せるしか無いでしょう?」

「そうだね・・・確かそーちゃんのパジャマは・・・あった!」


 おお、柚葉がタンスからソウの寝間着を発見したようだ。

 流石は幼馴染みだな。


「・・・ねぇ。もうちょっと着せるの待たない?」


 シオンがぽつりと溢した。

 難しそうな顔をしている。


「詩音?どういう事だ?」

「そうだよ詩音ちゃん?風引いちゃったらどうするの?」

「風邪・・・そうです!こうすれば!」

「あ!翔子!!あたしがしようと思ってたのに!!」

「「!?」」


 ソウに布団を被せ、同じ様に隣に寝そべる翔子。

 それを見て、すぐさま逆側に寝そべる詩音。

 くっ!?出遅れただと!?


「ず、ズルいよ二人共!!」

「そうだ!我々にも権利はある筈だ!」

「勿論よ。それよりも・・・さぁ。総司には悪いんだけど・・・ちょっとだけ・・・ごにょごにょ。」

「「「!?」」」


 な、なんという悪魔的な事を考えるのだ詩音!?

 だ、だが、興味が無いかと言えば・・・嘘になる。


「・・・い、良いのかなぁ?」

「・・・大丈夫です。今日の事は無かった事にすれば・・・」

「・・・と、取り敢えず、みんなで布団の中に入ろう。電気は・・・豆電にして、と・・・」


 布団を被せてあるソウの周りに、囲む様に私達は寝そべり、それぞれ布団に顔を突っ込んで、ソウのとある場所に顔を寄せる。

 布団を被っているが、うっすらとお互いの顔はわかる。


「・・・みんな。今日の事は、総司には内緒よ?良いわね?」

「・・・ああ、これはソウには言えん。」

「・・・そーちゃんごめんなさい。でも、私達も興味があるの。」

「・・・総司先輩。これは仕方が無いんです。」

「そうね。お母さん達に飲まされて、酔って隙だらけの総司が悪い。」

「「「異議なし」」」


 ワタシ達は、そ〜っと、ソウのとある布を下げる。

 そして、まじまじと見る。


「・・・相変わらず凄いわね・・・」

「・・・ごくりっ。」

「・・・うう・・・恥ずかしい・・・でも、見ちゃう・・・」

「・・・はぁ・・・はぁ・・・総司先輩・・・」


 これも、全てソウの為!!

 いざと言う時に気後れしない為にな!!

 積もり積もって、ソウに返って来るのだ。

 心を鬼にしなければ!!


 だからソウ・・・甘んじてされるがままになって貰おうか。


「こ、こんなに・・・!?」

「・・・至近距離で見ると、迫力があるな・・・」

「・・・うわ!?ツンツンしたらピクッてしたよ!?」

「・・・ちょ、ちょっと味見をしてみても良いですか?」

「しょ、翔子!?それはやりすぎよ!駄目!!」

「匂いが・・・総司先輩の匂いが私を狂わせるんです・・・!!みんなですれば怖くありません!!」

「「「「・・・」」」」


 この後の事については、黙秘権を行使させていただこう。

 我々の名誉の為にな。


 ただ、大変参考になったという事だけ付け加えさせて貰おう。


 ソウ、すまん。

 後で、きちんと寝間着は着せるから許して欲しい。

 それと、将来的にしっかりと尽くすから、今は見逃して欲しい。


 ・・・明日ソウと視線を合わせるのは、中々苦労しそうだ・・・

 

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