第9章 猛攻 但し、女性陣に限る

第92話 新学期となって

 夏休みも終わり、新学期となった。

 今日も俺は、朝から柚葉と翔子と共に登校中だ。

 

「今日からまた学校だね〜!」

「そうですね。とはいえ、まだ暑いので、熱中症には気をつけましょう。」

「・・・暑いなら、少し離れてくれた方が・・・」

「「駄目!」」


 この様に、今日も今日とて、両手に花での登校だ。

 ・・・怨嗟の視線の凄いこと。


 そして、いつものシオンとの合流地点に差し掛かる。


「総司、柚葉、翔子!おはよ〜!!」

「おはよう詩音ちゃん。」

「おはようございます詩音さん。では、代わりますね?」

「ありがと。ローテーションで行きましょ。」

「「うん。」」


 ・・・ん?

 なんだ?

 何か違和感が・・・なんだろうなこれ?


「どうしたのそーちゃん?」

「そうよ総司?不思議そうな顔をして。」

「・・・い、いや別に。」

「変な総司先輩ですね・・・うふふ。」


 ゾクッ


 な、なんだ?

 今の翔子の笑顔に、言いようの無い何かを感じた。

 ・・・なんだ、この、蟻地獄に引きずり込まれたような感覚は・・・


 そうこうしている間に、校門に着く。


「おはよう、ソウ。それに詩音達も。新学期初日、良い天気で良かったな!」

「ああ、おはよう黒絵。良い天気だな。」

「おはよ!黒絵。朝から大変ね。」

「黒絵ちゃんおはよう!お昼一緒にするでしょ?」

「ああ、昼にまた伺うさ。」

「おはようございます黒絵さん。お待ちしてますね?もっとも、私もお邪魔する方ですが。」

「そうだね。だが、今日も仲良く食べようでは無いか。なぁ?」

「ええ・・・」


 ゾクゾクッ


 くっ!?

 なんだ本当にこれ!?


 黒絵の笑み、それとシオンの目配せ。

 何を企んでる!?


 背筋に冷たいものが走る。

 周囲を見回すが・・・嫉妬にまみれた視線、それと、俺を殺したいくらいの視線を送っている生徒会の副会長と会計の男、興味深そうな女子の視線・・・いつも通りだが・・・これではないな。


 わからん!


 とりあえず、挨拶を済まし、教室に向かう。

 

「おう!総司!オッス!!」

「ああ光彦、おはようさん。」


 教室には、既に光彦が居た。

 

 シオンも挨拶を済ませ、雑談する。


 ちらりと他の生徒の言葉が聞こえて来た。


「ねぇ!あの、読モやってた三津浦さん、なんか学校辞めたんだって!」

「ええ、モデルに専念するんですってね!凄いわね!」


 ・・・三津浦は、約束どおりにしたか。

 少し悪い気もするが・・・まぁ、そこは罰として甘んじて受けてくれ。

 その代わりと言ってはなんだが、モデル業は応援するからさ。


「あの、一年の怖い奴、辞めたってよ!」

「理由はよくわからんけどな・・・ま、良いんじゃないか?その方が学校的には良いだろうし。」


 大石も辞めたか。

 まぁ、アイツは三津浦よりも反省して貰う必要もあるからな。

 男が女を襲うってのはどうしても許せんし。

 

 光彦が、複雑そうな顔をしているのが目に入った。


「・・・光彦、悪いな。」

「いや・・・あれは、あいつらの自業自得だからな。仕方がないさ。」

「すまん。」

「良いさ。実際、莉愛も気合入ったらしいからな。今は、仕事を頑張ってるようだ。」

「そうか・・・応援してるって言っといてくれ。」

「・・・ま、あいつも、お前の心使いは気づいていたみたいだぞ?」

「・・・そうか。」


 あんなつまらない事に関わって、折角頑張っている仕事に影響が出るのは、勿体ないからな。

 最後は、発破をかけるつもりもあったし。

 頑張って欲しいものだ。


 


 そうして、昼放課を迎える。


「そーちゃん来たよ〜?」

「総司先輩、来ました。」

「ソウ、待たせたかな?さぁ、食事にしよう。」


 俺を囲むように、右手に翔子、左手にシオン、正面右に黒絵、その隣に柚葉が陣取る。

 ここまではいつも通りだった。

 

 そう、ここまでは。


「さ、総司?あ〜ん?」

「・・・おい、何やってる?」

「え?」


 きょとんとするシオン。

 

「何って・・・食べさせようとしてるんだけど?」

「いやいやいや・・・だからなんで食べさせようと・・・むぐ!?」

「総司先輩、隙きありです。」


 翔子が口の中に、箸で摘んだ卵焼きをつっこみやがった。


「もぐもぐ・・・ごくん。何するんだ翔・・・もごっ!?」

「くくく・・・ソウ、隙だらけだぞ?」


 今度は、黒絵が唐揚げをつっこみやがった!!


「ごくっ。こら黒絵!何しやが・・・もがっ!?」

「そーちゃん、美味しい?」


 そして、次は柚葉だ。

 どういう事だ!?

 なんでこんなに連携が!?

 

 いつも、競うようにしているのに・・・


「さて、総司?当然私のも食べてくれるわよね?あ〜ん♡」

「・・・っく。わかったよ・・・」


 シオンの箸から、直接ご飯を食べさせられる。


 周りからは唖然とした表情と・・・嫉妬で炎でも燃やしてるんじゃないかってくらいの表情を見せている男子生徒達。


 ・・・一体、何がどうなってんだ!?


 この後も、それぞれから手づから食べさせられるのだった。

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