第90話 祭り(2)

「・・・混んでるなぁ。」

「だな。莉愛、俺から離れるなよ?」

「うん!」

「瑞希、俺から離れる・・・」

「あたし、詩音さん達と一緒にくっつくー!!」

「良いわよ?可愛いわねぇ。よしよし。」

「みーちゃん良い子良い子。」

「瑞希ちゃん、お義姉さんが守ってあげますからね?」

「うむ。ワタシがいるから大丈夫さ。安心すると良い。」


 ・・・別に寂しくなんかない。

 瑞希を取られたって思ってない。

 ・・・ぐすん。


「ごろごろ。」


 みんなに撫でられて、瑞希はご満悦だ。

 猫みたいになってる。


 おのれ!

 俺の妹なのに!!

 俺にはそんな風になった事ないのに!!


「さて、総司とは、代わる代わる手を取り合うとして、それ以外の時間は瑞希ちゃんの手を取ろう。それで良いかな?」

「「「賛成!」」」

「わーい!両手に花だー!!」


 そんな風にして、祭りを楽しむ。

 

 まずは出店を荒らす。


 たこ焼き

 綿あめ

 りんご飴

 かき氷

 

 その辺を回り食べ物を食べながら、


 風船釣り

 輪投げ

 射的


 なんかを楽しんだ。

 

 特に、射的は熱かった。

 ・・・最初はな。


「全員で勝負をしよう。取れた景品の大きさで勝敗を決めようか。一番だった人は、願いを聞いて貰うと言うのはどうだろう?」

「良いな!絶対負けんぞ!!」


 俺は、基本、勝負事は好きだ。

 気合を入れて返事をする。

 みんなも乗り気なようだ。


 みんなで射的をする。

 それぞれ、景品をゲット出来たのだが・・・


「み、瑞希?お前・・・それ・・・」

「ふっふっふ!どうだぁ!!」


 なんと、瑞希がミラクルを起こし、そこそこデカいぬいぐるみを取りやがった!!

 クソッ!

 妹とはいえ、負けるのは悔しい!!


「さて、瑞希ちゃん、お願い事を言うと良い。」

「ん〜?どうしよっかなぁ・・・あ、じゃあ、女の子はみんな、好きな人とあたしのほっぺにチューして欲しい!!勿論ここでね!」

「「「「「「「!?」」」」」」」


 な、何!?

 とんでもないことを言いやがった!!

 そんなの・・・駄目に


「・・・良いだろう。」

「良いわ。」

「良いよ。」

「良いですよ。」

「・・・わかった!」

「「はぁ!?」」


 女性陣が了承する声に、俺と光彦は愕然とする。


「ま、待て瑞希!まさか本当にここでする気じゃ・・・」

「勿論、ここでだよ?それと、写真取るからね〜。」

「嘘・・・だろ・・・?」


 こんな所でやんのかよ!


「あれ?お兄ちゃんまさか・・・約束守らないの?あ〜あ・・・男らしいと思ってたけど、一度決めた約束を守れないんじゃあ・・・軽蔑しちゃうなぁ・・・」

「・・・や、約束は・・・守るさ・・・」

「そう?なら良いよ。流石はお兄ちゃんだね!」


 ・・・逃げは完全に封じられた。


「おい、総司・・・お前の妹、とんもないな。」

「・・・ぐっ・・・あの、母さんの娘なだけある。」

「・・・お前の母親どんな人なんだよ?」

「・・・押し入れ事件を考えて、あいつらに吹き込んだ真犯人だ。」

「あ、納得だわ。」


 光彦が呆れたように言った。

 いや、一番呆れてるのは俺だからな?


「それじゃ撮るよ?はい、チーズ!」


 こうして、頬にキスをする写真を取っていく。

 まずは、光彦と三津浦。

 照れくさそうにして目をそむけている光彦の頬に、三津浦がキスをしている。


 そして、


「あっはっは!お兄ちゃん凄いねぇ!角度を変えて何枚か撮るから、良いって言うまで動かないでね!はい、チーズ!!」


 俺を取り囲んで、頬の右上に黒絵、右下に翔子、左上にシオン、左下に柚葉が一斉にキスしているのを、パシャパシャと撮影していく瑞希。


 く〜!?

 そこら中からいい匂いがして・・・顔が熱くなっていく!!


「・・・すっげぇなぁ。」

「・・・流石は、あの4人です。尊敬します。」

「・・・真似すんなよ?」

「それは約束出来ません。」


 そんな、光彦と三津浦の会話が聞こえて来る。

 まだか!!


「・・・よし!動画も取れたっと!お兄ちゃん達もう良いよ〜。」


 ・・・はぁ・・・終わっ


 ぺろっ


「!?おい!誰だ舐めたのって全員か!!」


 ニヤニヤしているシオン達。

 その頬は赤くなっているが、俺ほどでは無いだろう。

 ぐ〜!!


「・・・翻弄されてるなぁ。あの、『クレナイ』が・・・」

「・・・驚きですよね・・・あの人、あたし達を脅した人と同一人物なんですよね?」


 ほっとけ!!


 この後、同じ構図にプラスで三津浦が加わり、長身の黒絵と場所を変わって、更に額にキスをされた状態の瑞希を写真におさめる。

 

「いや〜!ハーレムですなぁ!!みんな美人だし、役得役得!」


 ・・・俺の妹が、おっさん臭い件について。

 笑顔の瑞希をみんながナデナデしている。


「・・・あれ、何?撮影?」

「こんな公衆の面前で・・・どういう関係?」

「テレビかなんかの企画か?」

「みんな綺麗だし、可愛いし、あの男二人もイケメンだし・・・あの二人!死ね!!クソッ!!」

「・・・あれ、読モの莉愛ちゃんじゃない?」

「さっきキスしてたの彼氏かなぁ。かっこいいね〜!」

「私は、あっちの男の子の方が好みかも・・・いっぱいキスされてた人。こっそり行ってキスしてもバレないかなぁ?」

「いや、そりゃバレるでしょ!」


 周りが遠巻きにざわついている。

 死ねって酷くないか?

 ・・・まぁ、こんな状況では言い訳もできんがな。


「さて、騒がしくなって来たし、移動するか。そろそろ時間だろうし、早めに場所を取っておこう。」

「・・・そうしよう。」


 俺たちは花火の場所取りに移動した。

 

 ・・・あ〜!

 恥ずかしかった!!



 にしても、瑞希め・・・母さんの血が、しっかりと流れていやがる・・・末恐ろしいなまったく。

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