第89話 祭り(1)

「おお〜!これは眼福だな!!」


 光彦の大きな声が響く。

 周囲の人も、ちらちらとこっちを見ている人が多い。

 俺達の目の前には、シオン達が浴衣で並んでいる。


「ああ、みんな良く似合っている。流石だ。」


 シオンは、白色に墨色のバラが咲き誇っているかの様な浴衣。

 派手な感じで、ギャルっポイ感じがよく似合っている。


 柚葉は、オレンジ色の生地に、帯は薄緑、良く似合っている・・・が、胸が・・・浴衣ってこんなに胸が強調されてたっけ?


 翔子は、紺色の生地に、黄色の帯のものだ。

 翔子の色白さが際立って良いと思う。

 流石にネタに走らなかったか。


 黒絵は、黒地に、薄墨色で大きく金魚が何匹か描かれ、縁取りなどが赤で引かれる着物を着ている。

 地味・・・と思いきや、逆に派手に感じる。 

 そして、黒髪ロングの黒絵には恐ろしく程似合っていた。

 

 三津浦は、ギャルチックな浴衣・・・で、良いのかこれ?

 ミニスカートだし、派手派手だ。

 しかし、その派手さに負けていない可愛さもあるため、似合っていると言えるだろう。


 それぞれ、俺や光彦に褒められて、満更でも無い顔をしている。


 俺や光彦も浴衣だが、やっぱりおとこの浴衣は地味だな。

 まあ、特筆すべきも無いだろう。

 

「・・・総司格好いい・・・」

「うん・・・そーちゃん似合ってる・・・」

「凄く大人びて見えますね・・・抱いてほしい・・・」

「落ち着いた雰囲気が、ソウによく合っている。流石はソウだ。」

「光彦くん!カッコいい!!」


 女性陣が俺たちを褒めてくれた。

 まぁ、リップサービスだな。

 ありがたく受け取っておこうか。

 

「うわぁ!皆さん、すっごくお綺麗ですね!!」


 妹の瑞希だ。

 ピンク地に桜が咲き誇っている。

 うむ!控えめに見ても可愛いな!

 こいつらにも負けていないぞ!!

 シスコン?

 知ったことか!

 妹を可愛く思って何が悪い!!

 うちの妹は本当に良い妹だよ。


「瑞希ちゃんも可愛いわよ。」

「うんうん!みーちゃん可愛いね!」

「瑞希ちゃん、よく似合ってるよ?お義母様の血を引いているだけの事はありますね。」

「ああ、とても可愛らしい!それでこそ我が義妹にふさわしい!!」


 ・・・おい、黒絵。

 勝手に人の妹を自分の妹にするんじゃねぇよ。

 瑞希は俺のだ!!


「あ、お兄ちゃんの友達ですか?うわーカッコいいですね!!それに彼女さん?お似合いですね!!すっごくかわい・・・あれ?まさか・・・読モの莉愛ちゃん?いや、まさか・・・」

「おう!元気だな!俺は吉岡光彦って言うんだ。総司の妹ちゃん可愛いな。よろしくな?」

「うん、暮内先輩の妹さん可愛いね。ああ、そうそう、私読モやってるの。その莉愛で間違いないよ?よろしくね?」

「うわぁ!私ファンなんです!!すごーい!こちらこそよろしくお願いしまーす!!」


 ・・・三津浦のファンだったのか。

 ・・・あっぶねぇ!

 もうちょっとで、スキャンダルで潰しちまう所だった!!


「さて、それでは出発しようじゃないか。」


 黒絵のそんな声で、俺たちは電車に移動する。

 移動中も見られる見られる・・・

 まぁ、そりゃ、こんなに綺麗所ばっかりでは目を惹くわな。

 しっかりと守らねぇと!

 

「・・・ねぇ、あの二人カッコよくない?」

「うん、浴衣似合うね・・・あの子達の知りあいかな?」

「彼氏じゃないの?良いなぁ、あんなカッコいい人と付き合えて・・・」

「どの組み合わせかなぁ?誰でもお似合いだけど・・・」

「羨ましい・・・」


 うん?

 なんだ?

 視線を感じるような・・・


「・・・やっぱりね。総司の今日の格好ヤバいもの。」

「ああ、メチャクチャ格好いいな。恐れ入ったよ。」

「そうだよね!そーちゃんカッコいいもん!!」

「・・・他のメス猫達が見てますね。絶対にあげません!私が守ります!!」

「そうね。べったりと張り付いて、隙を見せないようにしましょう。海の時、忘れて無いわよね?今日は絶対に死守するわよ!」

「「「意義無し!!!」」」


 こそこそとシオン達が小声で話している。

 なんだろ?


「・・・光彦くんはあたしのだもん。誰にもあげない。」

「ん?莉愛、なんか言ったか?」

「別に?」


 光彦も、首を傾げている。

 よくわからんが、祭り楽しむ前に、疲れちまうなぁ・・・

 こんなに見られるのは、苦痛だよまったく。


 やっぱり、目立つ奴らといるのは大変だよ。

 俺の性には合わないなぁ。



「・・・あれ、絶対勘違いしてるわね。」

「だな。まったく、ソウめ!」

「そーちゃんったら・・・もう!」

「総司先輩・・・鈍感も罪に問われますよ?私達に。」


 ん?

 なんだか、シオン達が睨んでるような・・・なんだろう?


 こうして、俺たちは祭り会場に着くのだった。


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