第88話 祭りに行こう

「と、言うわけで、お祭りに行こうでは無いか。」


 8月の半ば、クソ熱い最中、黒絵が喫茶店に俺たちと光彦、それと三津浦を呼び出した。

 この祭りは、花火も上がる大規模なもので、電車で行くことになる。

 日程的に、俺には問題は無い。


「あたしは良いわよ。浴衣買わないとなぁ。」

「私も大丈夫だよ!楽しみ!」

「勿論、私もです。普通の浴衣にするか、ネタ浴衣にするか・・・ぶつぶつ。」


 シオン達は既に乗り気だ。

 

「莉愛、行きたいか?」

「うん!光彦くんと一緒に行ってみたい!」

「じゃあ、行くか。」

「うん!」


 光彦達も大丈夫なようだ。

 

「という事みたいだぞ。お前は勉強は良いんだな?」


 俺が黒絵に問いかけると、黒絵は頷いた。


「ああ、まったく問題は無いとも。それよりも、ソウ。お前はどうだ?ちゃんと志望校受験に向けて勉強しているか?」

「まあな。やってるよ。」

「ならいい。お前と一緒に大学に行く為にそこにしたのだからな。しっかりと受かって貰わねば。」

「あ!黒絵ちゃんズルい!う〜・・・私にはちょっとハードル高いなぁ。」

「あたしは多分大丈夫ね・・・今から勉強しておけば。」

「・・・私も、勉強します。今からやれば間に合うと思うので。黒絵さんの一人勝ちにはさせません。」


 ・・・ちゃんと、自分の希望する分野がある大学に、行ったほうが良いと思うんだが・・・まぁ、良いか。

 こいつらとのキャンパスライフも楽しそうだし。


「では、たまには勉強会でも開くか?なんなら教えよう。」

「え!?良いの黒絵ちゃん!?すっごく助かるよ!!」

「あたしも、正直助かるわね。お願いできるかしら?」

「黒絵さん、お願いします。」

「任された。なら、祭りを終えた夏休み後半から、夏休み中は週2回、それ以降はまた考えて、開くか。ソウの家で。」


 俺の家!?


「「「賛成!!」」」


 ・・・マジか。

 でも、黒絵に教えてもらえるのは助かるな。

 不動の学年一位は伊達じゃない。

 それに、噂では全国模試でも上位に居るらしいしな。


 下手な予備校とか行くよりも、良いかもしれん。

 俺たちはみんな部活もやってないしな。


「では、当日は浴衣で待ち合わせでどうだ?待ち合わせ場所は、海に行った時と同じで。」

「俺は構わない。」

「私も。」

「わかったよ!」

「ええ、それで行きましょう。」

「了解っと。そうと決まれば、浴衣買わねぇとなぁ・・・」

「光彦くん!一緒に買いに行こうよ!」


 みんなワクワクしてるのがわかるな。

 かくいう俺も、内心テンションが上がっているのがわかる。


 ずっと祭りなんて行って無かったからなぁ。

 シオンや柚葉達の浴衣も楽しみではある。


 浴衣かぁ・・・ちょっと母さんに相談してみるか・・・






 その日の夕方、夕飯を母さんと瑞希で食べている時にその話をする。


「へ〜?お祭りかぁ。良いじゃない。行ってきたら?」


 母さんが嬉しそうにそう言う。

 そして、瑞希は、


「あ〜!良いなぁ・・・あたしも行きたい!」


 という反応だった。

 というか行きたいのか?


「うん?だったら、あいつらに聞いて見るか?」

「え?良いの?じゃあ聞いて!」


 俺は、LINで作っているグループに、瑞希の参加の可否を聞く。

 すると、すぐに反応があった。


『私は良いわよ。』

『みーちゃんも来るの!?良いよ!!』

『瑞希ちゃんと一緒にお祭りなんて、転校する前以来ですね。賛成です。』

『将来の義妹かもしれないからな。むしろ、仲を深めたい。是非、来て欲しい。』

『俺は良いぞー。』

『光彦くんと同じで。』


 ・・・ありがたい。

 出来れば、瑞希も連れて行ってやりたかったんだ。

 可愛い妹だからな。


 あ!そうだ!!


『光彦、三津浦、妹の瑞希は、「クレナイ」の事は知らないから、黙っててくれよ?』


 光彦からは『了解した!』という文字と、敬礼する某赤い彗星と呼ばれるキャラクターのスタンプが来た。

 そして、三津浦からは、『OK!』という猫が直立して、前足で大きく◯を作っているスタンプが送られて来た。

 よし、これで問題無いな。


 二人から了承をえてたので、瑞希に一緒に行く許可が出た旨とメンバーを説明する。


「へ〜。お兄ちゃんのお友達かぁ・・・どんな人か楽しみ!やっぱ陰キャなの?」

「いや?どっちかって言うと、真逆だな。彼女もいるし。」

「そうなんだ〜。楽しみだなぁ!」


 瑞希は既にご機嫌だ。


 さて、後は浴衣の問題だけか。

 そんな風に考えていると、母さんが俺を見た。


「総司。お父さんのお古でも良ければあるけど、どうする?新しいの買っても良いし。どうせ瑞希の浴衣買わなきゃいけないし。どっちでも良いわよ?」


 ・・・父さんのお古か。

 どうせなら・・・それを着させて貰おうかな。

 こだわりも無いし。


「そ。なら、出して置くわ。念の為、一度着てみてね。それと、雪駄なんかもあるから、履いてみて。」

「わかった。」


 こうして、祭りに向けて、色々準備する事になった。

 一番大変だったのが、瑞希の浴衣を買うことだった。


 ・・・本当に女の買い物は長い。

 そして、めんどい。


 ま、可愛い妹の為だから、甘んじて受け入れたがね。

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