第87話 母親への直訴
海からの帰宅後、みんなと別れ帰宅。
そして、家事を簡単に済ませ、ある人の帰りを待つ。
瑞希は、今日は友達の家に泊まりに行っている。
「ただいま〜。あら、おかえり総司。楽しかった?」
「おかえり。・・・そして、ただいま母さん。ちょっと話がある。」
「・・・それ聞かなきゃ駄目?」
「駄目。」
俺は、夕飯時、母さんに文句をつらつらと言った。
今回の押入れ監禁事件。
実行する方も実行する方だが、入れ知恵する方もする方だ!!
面倒臭そうに聞いている母さん。
・・・まったく反省しているようには見えない。
「はぁ。もうちょっと自重してくれよ・・・こっちの身が持たない。」
「いやあね。それは、あなたの方にも問題があるからでしょう?」
「俺に問題?」
「そうじゃない。あなたが、4人も引っ掛けて、それを放置していたからでしょう?」
「・・・引っ掛けてって・・・そんなつもりは無いが・・・」
俺がそう言うと、母さんは呆れたような表情をした。。
「それはあなたの都合だもの。あの子達には、あの子達の都合も気持ちもあるわよ?」
「それはそうだが・・・」
俺の言葉に母さんは真面目な顔をした。
「総司?優しいのは美徳よ?それに、何かあった時に助けてあげるのもとても良いと思う。でも、その結果、好意を持たれるのは、自分で巻いた種なのよ。だから、それを否定してはいけないわ。」
「・・・」
「それに、確かに今回のは行き過ぎてるかもしれない。でも、それだけ、あの子達は、あなたの心を掴みたいのよ。それとも、あなたはあの子達に羞恥心が無いとでも思ってるの?」
「っ!!」
母さんの言葉にハッとさせられる。
そうだ・・・あんな事をして、恥ずかしくない訳が無い。
「むしろ、私は本当に実行したあの子達を褒めてあげたいくらいだし、嬉しいわ。だって、それを押してでも、なんとか総司と一緒になりたいって思ってくれている証拠だもの。だから、何があっても、私はあの子達の味方だし、これからも協力するわよ?」
「・・・」
確かにありがたい話だ。
あれほどに、俺に好意を持ってくれている事については感謝しかない。
シオンも、柚葉も、翔子も、黒絵も、みんな美人だし性格も良い。
俺にはもったいないほどだ。
彼氏を作ろうと思えば、すぐにでも作れるだろう。
だが、あいつらがそうなりたいとのぞんでいるのは俺だ。
それを忘れちゃいけない、か。
「総司、よく聞きなさい?あなたは、貞操を捧げられる程好きって気持ち、これがどれくらい大きなものかわからないといけない。そして、それを受け止めないといけないわ。私は、あなたが誰を選ぶかどうかについては口出しするつもりは無いし、資格も無い。それを決める事ができるのは、あなただけなのよ?あの子達が愛しているあなただけ。よく考えなさい。」
「そう・・・だな。」
中々耳が痛い言葉だ。
「そうそう、後、一つだけ助言・・・というよりも忠告、いえ、警告ね。」
「警告?」
母さんは俺を睨むようにように言った。
「あなたが誰を選んでも良い。愛せないと確信して、誰を選ばないでも良い。だけど、もし、”あの子達の為を思う”なんて事を考えて、誰も選ばないという選択をしたら、私はあなたを許さない。」
「っ!!」
それは、実は以前に考えた事があるものだ。
俺が誰かを選べば、仲の良さそうなあいつらの関係性に
だったら・・・俺が身を引いていなくなれば、あいつらは仲の良いままだ。
俺一人が寂しい思いをすれば良い。
・・・そう考えた事がある。
「そんなのは、あの子達に対する侮辱よ。あの子達を舐めすぎている。あの子達は強いわ。きっと結果を受け止めて、それでも関係性を維持しようとするでしょう。それを、あなたの小賢しい考えで踏みにじろうとするのだけは絶対に許せない。良いわね?」
「・・・」
思いの外、きつい言い方だった。
俺が母さんから感じるはじめての圧力。
・・・この人は、こんな面があったのか?
その辺のチンピラの放つ圧力なんて比較にならない。
初めて『黒蜂』に相対した時に匹敵するようなプレッシャー。
背筋に氷柱を入れられたみたいだ。
いつもニコニコしている母さんが・・・
この俺が気後れしてしまう凄みを感じるとは・・・
「総司?返事は?」
「・・・わかったよ。それはしない。」
「そ?じゃあ良いわ。」
俺がそう言うと、母さんはいつものニコニコに戻った。
・・・ふぅ。
肝を冷やした。
驚いたな・・・虫も殺さないような顔をして・・・冷や汗が出た。
母さんにこんなに意思が強い所があるのなんて、知らなかったな。
「じゃあ、これからもあの子達に色々教えてあげよっと。」
「ん?」
「だって、私はあの子達の味方だもの。」
何!?
あれ!?
俺、説教してたよな!?
なんで、逆に言いくるめられてるんだ!?
「ちょ、母さん!俺はそれを止めろと・・・」
「あら?そんなの、あなたが早く決断すれば問題無いでしょう?」
「そ、それは・・・」
「じゃあ、良いじゃない。はい、これでお話しおしまい!」
「・・・」
・・・なんて事だ。
まったく改善出来ないどころか、大義名分を作られてしまった。
・・・母さんには敵わないなぁ。
どこが最強の『クレナイ』だよまったく。
俺はため息をつくのだった。
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