第84話 海(3)

明けましておめでとうございます!

今年もよろしくお願いします!!

**********************



「・・・あ〜熱かった・・・」

「総司・・・お前、いつもこんな感じなのか?」

「・・・ノーコメントで。」

「・・・『クレナイ』も、女には形なしかぁ・・・」

「・・・うっせぇ。」


 あの後、許しを得て、俺たちはパラソルなんかの片付けをし、宿に戻った。

 

「許してあげる。でも、罰は受けて貰うから。」


 という、不穏な言葉を耳にして。

 

 ・・・あれ、罰じゃ無かったのかよ・・・

 何されるか、今から不安なんだけど。


 現在は、とりあえずシャワーを浴びて浴衣に着替え、食事待ち中だ。

 俺は、光彦達の部屋で着替えさせて貰って、逆に三津浦は、俺達の部屋に行って女性陣で着替えている。


「・・・なぁ、総司。」

「なんだ光彦?」

「お前、誰を選ぶとか決めてんのか?」

「・・・いや、まだだ。それぞれに色々あってなぁ・・・惹かれてるのは間違いないんだが、決定打が無いんだ。それに・・・俺自身の過去も関係していてな。ちょっと付き合う事に恐れているのもあるんだ。」

「・・・なるほどな。まぁ、後悔しないように・・・するのは難しいかもしれんが、自分でしっかりと考えるんだな。」

「おう。そうするつもりだ。そういうお前は、いつまでお試しの予定なんだ?」

「・・・俺も、あいつは大事な後輩だったからなぁ。すぐに、彼女として見るのは、難しいんだよ。だが・・・」


 光彦は、ぼんやりと天井を見上げた。


「ここ数日、あいつが可愛く見えて仕方がない。時間の問題かもなぁ・・・」

「そうか・・・」


 こいつは良い奴だ。

 三津浦とは色々あったが・・・まぁ、光彦が納得してるならそれで良いんだろうな。

 どうやら、シオン達も三津浦と仲良くなったみたいだしな。


 本質的には悪い奴じゃないんだろう。

 何か、他の要素・・・感情が関係して、爆発したんだろうな、この前のは。






「美味し〜い!!」

「ホントだね!!すっごく美味しい!!」

「・・・新鮮な海の幸。とても美味です。」

「この煮付け・・・なるほど・・・参考になる。」

「美味しい!最高!!」


 ニコニコしながら舌鼓を打っている女性陣。

 勿論、俺と光彦も同じくだ。


 光彦達の部屋で、みんなで食事を取っている。

 

 美味いなぁ・・・

 



 食事後、少し駄弁だべってから、風呂に行くことになった。

 ここはちゃんと男女に風呂が分かれているし、家族風呂も無い。

 流石に前の様に、突撃される事も無い。

 こう言っちゃなんだが・・・安心して入れるなぁ。



 俺は光彦と二人で風呂に向かった。



「あ”〜。」

「・・・総司、お前おっさん臭いぞ?」

「うるせぇ。落ち着いて足伸ばして入れる風呂は貴重なんだよ。誰か男と入る時じゃないと無理なんだ。」

「どういう・・・まさかお前・・・」

「・・・突撃してきやがるんだよあいつら・・・旅先だと。」

「・・・良く我慢できてるなぁ・・・」

「毎回必死だよ。何回か気絶もしてるしな。」

「・・・『クレナイ』のそんな面、知りたくなかった。」

「うっせぇ。」


 俺たちはのんびり風呂に入っている。

 

「そういうお前こそ、今日は二人寝だろ?大丈夫なのか?」

「・・・大丈夫、だと思うが・・・」

「あいつらが変な入れ知恵してねぇと良いが・・・」

「怖いこと言うなよ・・・」


 光彦がげんなりする。


「・・・お前は知らないからな。あいつら・・・ピラニアと変わんねーぞ?」

「マジか・・・人は見かけによらねぇなぁ。」

「まったくだぜ。しかも、あいつらの母親も、止めるどころか、それを後押ししてやがるんだよ・・・もう、俺どうしたら良いのか・・・」

「・・・大変だなぁ。そう聞くと・・・早めに身を固めた方が良いような気がしてきたわ。ま、俺はお前ほどモテねぇからな。」

「よく言うぜまったく・・・お前の方がモテモテだろうに。」

「俺のは、チャラ男を演じたからこそだからな。お前の逆だ。」


 こうして見ると、俺と光彦が仲良く出来てた理由がなんとなく分かるな。

 俺は陰キャを、光彦は陽キャを、お互い演じていた。

 そこに共通点があったんだ。

 だが、俺とは決定的に違う点がある。


「それでも、告白位されてんだろ?」


 ここだ。

 陰キャではまず無いこと。


「まぁなぁ。だが、だからこそ、付き合わなかったんだよ俺は。本当の俺じゃ無い所を見て告白されてもな・・・」

「・・・だろうな。」


 確かに・・・わからなくも無いな。

 しみじみと二人で話し合う。

 というか・・・俺たちの本音は一つだった。


 少しでも部屋に戻って部屋に軟禁されるのを遅らせたい。

 

 これに尽きる。


 なんか、妙に気合入れてたんだよ。

 夕飯の後。


 怖え・・・

 頼むから無茶苦茶はやめて欲しい。

 本当に頼むから。

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