第82話 海(1)

「海だ!!」

「きれ〜だねぇ!!」

「いい天気で良かったですね!」

「ああ、快晴だし、とても良い。」


 俺たちは、電車を乗り継いで海に来ている。

 

「お〜!気持ちよさそうだなぁ!!」

「そうですね!光彦くん!行きましょ?」


 光彦と三津浦も楽しそうにしている。


 俺は朝からの事を思い返した。





「よし、集まったな。それじゃ出発するか!」


 光彦のそんな声で、俺たちは電車に乗り込んだ。

 みんな笑顔だ。

 俺たちは、最寄りの駅に待ち合わせ、目的地まで向かった。


 電車の中では、女性陣と、俺と光彦に別れて席に着いた。


 きゃぴきゃぴと朝からハイテンションで話している女性陣を見て、俺は微笑む。


「どうした総司?ニヤニヤして。」

「・・・ニヤニヤなんてしてねぇよ。」

「まぁ、良いじゃねぇか!綺麗所しか居ない旅行なんて貴重だぜ?」

「・・・かもなぁ。」


 確かに、光彦が言うように、シオンも柚葉も、翔子も黒絵も、三津浦だって綺麗だし可愛い。

 文句のつけようが無かった。


「にしても・・・お試しで付き合う、かぁ・・・俺には無い発想だったなぁ。」

「お前、硬そうだからな〜。」

「うるせぇ。」


 仕方がないだろうが。

 こちとら、そういう経験ねぇんだっての。


「ま、色々自分なりに考えて見ればいいさ。人は人、自分は自分だ。人にとやかく言われて付き合う方がおかしいしな。」


 ・・・その通りだ。

 現に、柚葉も以前それで失敗してるしな。


 俺は俺か・・・ちゃんと自分なりに考えよう。



 そうこうしている間に、目的地の最寄りの駅に着く。

 そのまま、バスを使って宿の近くまで行く。


「光彦くん?大きくなったわねぇ。皆様、ようこそおいでくださいました。ごゆっくり。」

「おばさん、世話になります。よろしくお願いします。」

「「「「「「よろしくお願いします。」」」」」」」


 宿は、落ち着いた雰囲気の民宿で、目の前には海があるとても良い立地だった。


 部屋は・・・5人部屋を2つ。

 俺と光彦は、当然、男女で別れる事を提案した。

 だが、


「え?何言ってんの?私達と総司、吉岡と莉愛で別れるに決まってんじゃん。ねぇ?」

「うん!「ええ。」「ああ。」「はい!」

「「いやいやいやいや。」」


 なんでや!!

 男女で良いじゃん!!

 

「「「「「良くない」」」」」


 なんで息ぴったりなんだよ!!



「・・・総司、どうする?」


 先日のキャンプを思い出す。

 あの時の苦労・・・忘れて無い。


「・・・なんとかならないか?」

「いや、俺だってそうしたいが・・・総司はなんか良い案無いのか?」

「・・・無理だ。俺は・・・無力だ・・・」


 こういうので、俺の意見が通った事は無い。

 光彦!お前だけが頼りだ!!


「あ〜・・・その、だな?やはり、男女で別れた方が・・・」

「吉岡?それ以上抵抗するのなら・・・お前を気絶させて、莉愛に自由にさせる。」

「!?わ、わかった!その部屋分けで行こう!うん!!」


 おい!?

 光彦!!

 なんで黒絵の脅迫に負けてんだ!!

 こうなったら俺が・・・


「総司?あたし達、総司の事、最大限に尊重してるわよね?でも、我儘言うのなら・・・無理やり襲うから。」

「そーちゃん?そーちゃんママも、みーちゃんも私達の味方だよ?いつでも家に入れるの。どういう意味か・・・わかるよね?」

「総司先輩・・・なんなら、お義母様にお願いして、総司先輩が今度うちにお泊り、でも良いんですよ?お母さんと一緒にしっかりとしたおもてなし、しますね?朝も、昼も、夜も、翌日も・・・勿論、入浴や、ベッドの中も、ね。」

「ソウ・・・母上達がまたみんなで旅行をしたいそうだ。さて、どうなるのかな・・・無事でいられると良いなぁ・・・お前の貞操が。」

「・・・好きにしてください・・・」


 駄目だ・・・

 みんなには・・・勝てなかったよ・・・





 




 こうして、部屋も決まり、俺と光彦は先に水着に着替えて拠点の設置を申し付けられた為、浜辺に来ている。

 客入りは・・・そこそこだな。

 芋洗いなんてこともなく、どちらかと言えば家族連れが多い感じだ。

 これなら、あいつらがナンパされる可能性が減って良い。


 光彦と協力して、パラソルを3つほど並べてシートを敷く。

 設置も終わりのんびりしていると、


「総司〜!来たわよ〜!」


 シオン達が来たようだ。

 さて、目の保養をさせて貰おうかな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る