第81話 そうだ!海に行こう!

 夏休み初日、二日目と押しかけられて、本日は三日目。

 今日は5人で喫茶店に来ている。

 何故なら、ある奴に呼び出されたからだ。


 呼び出して来た相手とは・・・


「よ!総司!それと西條達も!暑い中悪いな!」


 光彦だ。

 それと・・・


「こんにちは、暮内先輩、西條先輩、南谷先輩、東儀さん、北上先輩。」


 三津浦だった。

 

 昨日、黒絵から、光彦達から、用事があるので全員で喫茶店に来て欲しいと連絡を受けたようで、全員で来ている。


「よう。光彦。それと三津浦も。用事ってなんだ?」


 俺がそう言うと、光彦はニヤリと笑った。


「総司、もう、完全にそれで行くのか?」

「まぁな。今更誤魔化しても意味ないしな。お前らには素を出してくよ。」


 これ以上、光彦達に隠してもなぁ。

 そんな風に話していると、シオンが割り込んで来て三津浦に話しかけた。


「ねぇ、あたし達友達なんでしょ?だったら、詩音で良いわ。あたしも名前で呼ぶから。莉愛だったわよね?」

「はい、そうです。」

「じゃ、莉愛って呼ぶわね。」

「・・・詩音さん、よろしくお願いします。」

「あ、じゃあ、私も柚葉で良いよ?莉愛ちゃんって呼ぶね?」

「ありがとうございます、柚葉さん。」

「私も翔子で良いです。呼び捨てで良いですよ。同じ歳ですし。」

「・・・わかったわ翔子。あたしも莉愛で良いわ。」

「はい。莉愛、色々あったけど、よろしく。」

「うん、よろしく翔子。」

「ワタシも黒絵で良いぞ、莉愛。」

「はい、黒絵さん。よろしくお願いします。」


 女性陣は、本当に打ち解けたんだな。


「じゃあ俺も・・・」

「吉岡は駄目。」

「吉岡くんは駄目だよ。」

「吉岡さんは駄目です。」

「吉岡は駄目だ。」

「なんで!?」


 愕然とする光彦。

 えげつねぇ・・・

 ・・・俺も三津浦って呼んどこう。

 こんな目に遭いたくないし。


「それより、用事を教えてくれよ。」

「ああ、そうだった。あのな?色々迷惑をかけた詫びに、海にでも行かねぇかなと思ってな。1泊2日、宿はこっち持ち。どうだ?」

「海か・・・」


 俺はちらりとシオン達を見る。


「あたし行きたい!」

「海・・・良いね!私も行きたいよ!」

「・・・総司先輩が行くのであれば行きたいです。」


 ふむ・・・黒絵はどうするんだ?受験生だが・・・


「ん?ワタシも行くぞ?受験は問題無い。まず、志望校に落ちる事は無いからな。」

「・・・そう言えば、お前志望校はどこなんだ?」

「近場の国立に行くつもりだ。ソウもそこに行くつもりなんだろ?」

「・・・なんで知ってる?」

「そんなの決まってるじゃないか。進路希望調査を見たのさ。勿論、こっそりと、ね。」


 ・・・怖い。

 どうやってそれを見たのか知りたいような知りたくないような・・・


「ま、まあいい。で、受験が大丈夫なら・・・行くか。」

「「「「うん(ああ)」」」」

「と、言うわけだ。宿は本当に良いのか?」

「おう、俺と莉愛で出す。莉愛は読モで稼いでるし、俺もバイトしてるからな。全員分出しても、余裕だ。」

「・・・すまんな。頼む。」

「任せとけ!そうと決まれば日程だが・・・来週の水、木で良いか?」


 シオン達を見ると、全員が頷いている。


「大丈夫だ。だが、そんな近々に宿が取れるのか?」

「一応、その宿は俺の親戚筋の所でな?毎年行ってるんだ。その為に、部屋を準備してくれてるんだよ。今年は、親父もお袋も行かねぇらしいから、使わせて貰おうと思ってな。格安でお願いする事になってる。」


 なるほど。

 じゃあ、遠慮なく行かせて貰うかな。


 こうして、海に行く日程は決まった。

 その後は、雑談をしていたのだが、とんでも無いことが発覚した。


「え!?付き合えたの!?莉愛おめでとう!!」

「莉愛ちゃんおめでと〜!良かったね!」

「莉愛、おめでとうごいざます。」

「良かったな!莉愛!!」


 なん・・・だと?


「お、お前・・・三津浦の事好きだったのか?」

「あ〜・・・なんと言っていいか・・・俺の中では、莉愛は大事な後輩だったんだ。だが、あの後、熱烈な気持ちをぶつけられてなぁ・・・それで、とりあえずお試しで付き合ってみるかってな。」

「お、お試し?」


 そんな軽く!?


 愕然としていると、そんな俺を見て、三津浦がフォローしてきた。


「お試しと言っても、大事にしてくれてるし、エッチな事はしないから、健全ですよ。むしろ、お試しでも付き合ってくれて嬉しいです。ワタシはエッチして貰っても良いんですが、光彦さんはお試しが取れるまで駄目って言うんです。まぁ、この間に本気で好きになって貰えば良いですし。」

「・・・」


 ・・・そういうもんなのか?

 う〜ん・・・


「だってよ総司。そろそろ、私とお試しで良いから付き合ってよ。勿論、エッチな事も可よ。」

「駄目だよ!お試しで付き合うのは私だよ!!」

「いいえ、柚ちゃんや詩音さんではありません。お試しで付き合って、そのまま子供が出来てゴールインするのは私です。」

「こら翔子!流石に、その発言は見過ごせん!!ソウの子を孕むのはワタシだ!!」

「ちょっと黒絵!その言葉チョイスはどうなの!?生々しいわよ!!」


 ・・・途端に騒がしくなった。

 

「お、お前らもうちょっと静かにだな・・・」

「総司!「そーちゃん!」「総司先輩!」「ソウ!」

「「「「誰と付き合うの!?」」」」


 ・・・駄目だ。

 話を聞いてくれん。


 ガクリと肩を落としていると、ニヤニヤしている光彦と、笑っている三津浦が目に入る。


「・・・なんだよ。」

「いや?大変そうだなと思ってな?」

「暮内先輩頑張って下さいね?」


 はぁ〜・・・

 まぁ、自分で巻いた種、か・・・


 とりあえず、海行くこと考えよ。

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