第79話 野心家の末路

「あはははははは!楽しいなソウ!やっぱりお前と一緒に戦うの最高だ!!」


 黒絵が高笑いをしながらぶっ飛ばしている。

 相変わらず、出鱈目なパワーだなこいつ。

 

 ・・・前より強くなってねぇか?


「おい、黒絵!あんまりシオン達から離れるなよ?」

「分かってるとも!」


 俺は、目の前にいる男の膝を、前蹴りでへし折る。

 

「ぎゃああああ!?」

「うるせぇなぁ。」


 そのまま裏拳で顎を殴り飛ばすと、男は倒れた。

 

「この野郎!!」


 後ろから鉄パイプを持った男が殴りかかってくる。

 振り下ろされる鉄パイプを、転身しながら躱し、そのまま腕を取り、裏拳で鼻面を殴りつけ、そのまま腕を極めながら体勢を崩したところに・・・後ろから蹴り上げて金的。


「☆◯が■◆〜!?」


 声にならない悲鳴を上げて倒れ込む。

 

「ははははは!ほらほら!どうしたクズ共!もっと頑張るが良い!!」


 おお・・・黒絵、絶好調だな・・・何人かいた女も、黒絵に襲いかかっていたが、殴りつけられてシクシクとすすり泣く声が聞こえる。

 相変わらず容赦ねぇ。


 俺は、黒絵に入口側を任せる事にし、光彦が居る部屋の奥側に走り出す。

 そして、何人か倒し・・・


「おらっ!!」

「ぐえっ!?」


 光彦を助け出した。


「・・・悪い、総司・・・」

「・・・まぁ、お前のせいじゃないわな。悪いが、ちょっとあいつら守ってくれねぇか?」


 俺は、光彦の縛られているロープを近くに落ちていたナイフで切る。

 

「・・・ああ、それくらいはさせて貰うさ。」

「頼む。」


 これで、あいつらは大丈夫、と。


「う、嘘だ・・・なんだこれ?なんでこんな・・・」


 俺は、狼狽うろたえているZCTのトップの所に歩みよる。


「さて、次はお前だな。黒絵!こいつ貰っていいか?」

「ん?ああ良いぞ!きっちりやれよ!」

「勿論だ!・・・さて、覚悟は良いか?」


 俺がそう言うと、トップは俺を睨みつけ構えた。


「・・・舐めやがって!俺も腕っぷしでのし上がってんだ!てめぇを倒して、名を挙げさせて貰うぜ!『クレナイ』ィィィィ!!」


 ・・・ボクシングか。

 中々隙が少ない良い構えだな。


「シィッ!」


 おお、早い。

 ジャブをいなすのも一苦労だな。

 リングの上でボクシングのルールで戦ったら、ヤバかったかもな・・・


 連続で攻撃して来るトップ。


「はっ!どうしたぁ!!逃げる一方か!!」

「いや、そうでもない。」

「!!馬鹿が!!」


 俺は、立ち止まり、ガードの手を下げると、こいつはストレートを放ってきた。

 

 馬鹿はお前だ。

 フェイントも入れずに打つとは。


 俺は正確に俺の鼻を撃ち抜こうとする拳に対し、状態をそらしながら膝を足裏で蹴り止める。


「うお!?」


 人は膝を押さえられるとそれ以上前に出られない。

 急激に止められ、状態が流れるトップ。

 俺はその腕を掴み、ひねりながら脇固めに移行し・・・そのまま折った。


「ぎゃあああああああ!?」


 そして、すぐに手を離し、そのまま顔面を蹴り上げる。


「がっ!?」


 そのまま背後に周り、膝裏を思いっ切り蹴りながら、前に体重をかけて踏み込む。


「ぐわ!?があああああ!?」


 体勢を崩し、コンクリートの地面に思い切り膝を打ち付けるトップ。

 ゴギィ!と、凄い音がした。

 多分、折れているか、罅は入っている。

 その上、踏み込まれているので、逃げられない。


 そのまま後頭部から鷲掴みにして全体重をかけ、地面にトップの顔面を叩きつけた。


「がはっ!!」


 俺は、そのまま体を起こし、男の体を蹴り飛ばし、仰向けにした。


「この程度で偉ぶってたのか?救えねぇなお前。」


 見下ろしながらそう言うと、まだこちらを睨みつけてくる。


「・・・後悔しろ!俺は必ず仕返しに・・・があ!?」

「仕返し?出来るのか?」


 俺は取り敢えず、もう片方の腕を踏み折る。


「おい?質問に答えろ。」

「ぐぅぅぅぅ・・・」

「黙ってんなよ・・・次は、逆の足にするか。良かったな?これで、両手足が骨折になるな。その後はどうしようか・・・肋一本づつ折っていくか・・・」

「ひぃ!?わ、わかった!俺の負けだ!!」

「何偉そうにしてんだ。」


 俺は、骨折していなかった足も折ってやった。


「ぎゃあああああ!わかりました!すみません!許して下さい!!許して〜!!!」


 涙を流しながら叫ぶトップの顔の前でしゃがみ込む。

 見下ろしながら、


「どうすっかなぁ・・・お前に正体知られちまったし・・・二度と喋ったり書いたり出来ないよう、グシャグシャにしてやるか・・・」

「言いません!!絶対に言いませんから!!仲間にも徹底させます!!もし、他の奴がバラしたら俺がそいつを殺します!!それで許して下さい!!」

「・・・仕方がねぇな。それで勘弁してやる。それと・・・分かってると思うが、ZCTは解散だ。良いな?」

「はい!!」

「他のチームでも同じだ。俺達の前に二度と姿を見せるな。」

「わかりましたぁ!!」


 そこで、立ち上がり、見回すと、全員が倒れており、すすり泣くのと呻き声だらけになっており・・・黒絵がいい笑顔で立っていた。


「ふ〜!いい汗かいたな!いや〜楽しかった!!」


 ・・・笑顔が輝いてやがる。

 クソ!

 あんなんみても可愛いと思っちまうとは・・・俺も末期かもしれんな。


 その後、トップを除き、全員を正座させ、いつも通りにしていく。

 黒絵が気絶させたらしい、通路に寝ていた仲間も一緒にな。


 そして、最後に大石と三津浦の前に立つ。

 

「・・・さて、お前らの処遇だが・・・」

「許して下さい!許して下さい!知らなかったんです!!『クレナイ』と『黒蜂』だったなんて!!」

「・・・そう言う問題じゃね〜んだよ。誰が相手でも許せねぇ事もある。それはお前も同じだ。三津浦。」


 涙を流して俯いている三津浦。

 

「取り敢えず、お前の裏の顔をネットに晒してやるとするか。」

「・・・ひっく・・・ひっく・・・」


 そう言って、携帯を取り出した所で、


「待ってくれ総司!」


 光彦が声をかけて来た。


「なんだ光彦?」

「・・・ZCTが潰れるのはわかった。だが・・・莉愛は勘弁してやってくれないか?」

「・・・ひっく・・・吉岡・・・さん・・・」


 三津浦が光彦を見る。

 だが、


「駄目だ。」


 俺がそう言い放つと、三津浦は絶望した顔をする。


「こいつらは、シオンや柚葉、翔子、黒絵に手を出した。下手したら、人生が無茶苦茶になるような事をしようとな。そんな奴を許すつもりはない。」

「・・・頼む!この通りだ!!」


 光彦が土下座し、額を地面にこすりつけた。

 ・・・なんでこんな奴を庇うのかねぇ。


「よしおかさん・・・」


 三津浦が、それを見て、先程よりも涙を流しはじめた。

 ・・・はぁ。


「おい、三津浦。」

「・・・はい。」

「お前、光彦にこんな事させて、それで良いのか?」

「・・・良く、ないです・・・」

「光彦に免じて、選択肢をやる。ネットに動画を流されるか・・・学校を辞め、俺達に姿を見せないように過ごすか、どちらか選べ。勿論、仕事でのことでの顔を見せは構わない。それが最後の譲歩だ。」


 人の人生どころか、下手したら命まで奪おうとしたんだ。

 反省させるためにも、徹底的にやらないとな。


「・・・総司。もう少しなんとか・・・」

「駄目だ光彦。甘い所を見せたら、こいつはまたやるぞ?その時に責任を取らせるのは簡単だ。だが、被害に遭った人の事は取り返しがつかん。今回の件、それだけの行為だと思い知らせないといけない。」

「・・・はぁ。わかった。お前の言う通りだろうよ・・・莉愛、馬鹿な真似をしたな・・・」


 光彦が悲しそうにそう呟いた。

 悪いな光彦。


「どうする三津浦?」


 俺がそう言うと、三津浦は、顔を上げ、そして、


「・・・学校を辞めます。だから、動画を流すのはやめて下さい。もう、二度と、あなた達の前には現れません。許して下さい。」


 そう言って土下座した。

 

「・・・良いだろう。なら、この動画を流すのはやめてやる。ただし、約束を破ったらその時は遠慮なく流すからな。」

「・・・はい。」


 後は、


「大石。」

「はい!」

「お前はどうする?」

「・・・お、俺も学校辞めます!も、もう二度と顔を見せません!それで許して下さい!!」

「必ず守れ。じゃないと・・・俺が必ず責任を取らせる。良いな?」

「はいぃぃ!!」


 ふぅ・・・これで取り敢えず終わりか。

 俺がシオン達を見ると、シオン達はホッとした顔をしていた。

 ・・・心配かけちまったか。 

 すまん。

 そして、黒絵を見ると、

 

「は〜!ソウ!楽しかったな!またやろう!!」


 笑顔で俺の肩を叩いてきた。


「いや、やらねーよ?」

「何故だ!?」


 まったくコイツは・・・


 こうして、ZCTに絡む出来事は終息することになったのだった。

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