第72話 真相、そして光彦との遭遇

 終業式まで、あと2日となった。

 未だに、光彦は来ない。


 これで、もう、1週間だ。

 家族も、警察に捜索願を出していると聞いた。

 

 これは、担任からの情報で、何かあればすぐに、学校に報告して欲しいと言う事だった。


 この日、黒絵に昼放課に生徒会室に呼び出された。

 シオンと柚葉、翔子は置いてきて欲しいという事だった。


 俺が、生徒会室に入ると、深刻な顔で黒絵が待っていた。


「来たか・・・ソウ、お前のクラスの吉岡についてだ。」

「何か知っているのか?」

「・・・詳しくは知らない。内緒にしておいて欲しいと言われていたが、ここまで来たら話さざるをえない。」


 そう言って、黒絵は光彦について話はじめた。


 黒絵によると、黒絵に色々情報を渡していたのは、光彦だったそうだ。

 光彦は、ZCTというチームの幹部をしており、ナンバー3だったらしい。


 そのチームは、トップの方針で、一般人には手を出さず、あくまでも他の悪さをするチームを潰すという方針でやっていたらしい。

 このチームが出来たのは、俺や黒絵が姿を消した後らしく、俺たちのやっていた事に感銘を受けたトップが、その志を勝手に継いでやっていたそうだ。

 まあ、俺や黒絵はみんなの為になんて毛頭無かったのだがな。


 黒絵が知ったのは、プライベートの時に、たまたま、うちの生徒が、絡まれているのを、光彦がZCTと名乗った上で助けたのを目撃したからだったそうだ。


 光彦の強さはそこそこで、街の喧嘩程度であれば問題ないくらいには強いらしい。

 しかし、人数を呼ばれてしまい、劣勢になった為、仕方がなく加勢したが、その時の格好が黒かった上、帽子を被っていた事もあり、『黒蜂』だとバレてしまったそうだ。


 光彦は、黒絵の口止めに素直に応じ、それ以降、黒絵に対し情報屋のように振る舞うようになったそうだ。

 それで、翔子の件も分かったらしい。


 今回、ZCTのトップが、街を離れ、それまでのナンバー2が頭になった事から起きたそうだ。

 トップは、けじめをしっかりつけるために、携帯を変え、今後は一切連絡は出ないと言って去ったらしい。


 どうも、ナンバー2は、トップのやっていた事はあまり好んで無く、ただ、喧嘩が好きだっただけでチームに居たようだ。

 それで、喧嘩の強かったトップが居なくなり、やりたい放題する今のトップに苦言を呈した所、光彦は的にされたようだ。

 ある事を断ったのが、決定的だったらしい。


 その内容が、


『今のトップは、俺に、あんたと西條、南谷、東儀を連れて来るように言っていた。目的は透けて見えるだろ?あいつはただのゲスだ。俺はそれを断って、追われている。あんた達も気をつけろ。・・・それと、総司にも伝えておいてくれ。迷惑をかけるかもしれない、とな。その時は、すまないと言っておいてくれ。』


 電話で黒絵にそう告げ、すぐに電話は切れたらしい。

 そして、衝撃の事実を口にした。


「ソウ、あいつは、お前が『クレナイ』である事を知っていたよ。」

「!?」


 なんであいつが知っている!?


「お前が言ったのか?」

「まさか。あいつが知ったのは、詩音の件と、翔子の件さ。どちらも『クレナイ』が関係していて、そして・・・学校でのお前を取り巻く環境。そこに行き着くのは、そんなに難しい事では無いだろうな。」

「・・・そうか。あいつは、今、どうしてるんだ?」

「・・・わからん。だが、どこかで逃げ延びている・・・筈だ。」

「・・・無事なら良いが・・・」


 光彦は、良いやつだ。

 ちゃんと、俺を気遣って、『クレナイ』であることを内緒にしておいてくれるし、安易に助けを求めず、警告してくれた。

 助けられるなら、助けてやりたいが・・・


「ソウ、おそらく、近い内に、何かに巻き込まれるだろう。ワタシも、お前も、・・・おそらく、詩音や柚葉、翔子も、な。どうする?」


 黒絵の言葉に、俺はニヤッと笑った。


「決まってるだろ?『黒いの』。俺が・・・『クレナイ』がやる事は一つだ。ゲスは・・・潰す。」


 俺の言葉に、黒絵は笑った。

 只の笑顔では無い。

 その笑みは俺と同じで・・・獰猛なものだった。


「ああ・・・『紅いの』。久しぶりに、共闘と行こうじゃないか。お前が家に来た時には、一緒に戦えなかったからな。今度は・・・遠慮はいらんさ。思う存分、潰してやろう。ZCTには思い知らせてやらねばな・・・誰を相手にしたのかを、な。」


 まったくその通りだ。

 

 そうと決まれば、シオンと柚葉、翔子にはきちんと理由を話して、備えてもらわないとな。

 にしても・・・どんな馬鹿か知らんが・・・俺達を相手に、無事で居られると思うなよ?

 地獄を見せてやる!! 



 俺と黒絵は、携帯で連絡し、シオン達に生徒会室に来てもらい、事情を話す。

 最初驚いていたシオン達だったが、


「・・・心配なんかしてないわ。だって伝説にまでなってる『クレナイ』と『黒蜂』がいるんだもの。むしろ、後腐れが無いよう、徹底的にやって欲しいわ。・・・吉岡はちょっと心配だけどさ。」

「・・・そーちゃんや黒絵ちゃんが危ない事するのは怖いけど・・・でも、そうしないとみんなが危なくなるかもしれないし・・・吉岡くんも危ないんだよね?だったら・・・わ、ワタシも覚悟を決めるよ!」

「私は、何も心配していません。それだけの事を見せて貰いましたから。でも、どうか無事で・・・二人共、怪我しないようにして下さいね?」


 そう言って、覚悟を決めた表情をした。


 ・・・こいつらだけは、なんとしても守らないとな。


 

 そして、放課後になった。


 俺たちは、今日は4人で帰った。

 最後に柚葉と別れて、家に入ろうとした所で、


「よう、総司。ちょっといいか?」


 声をかけて来た男が居た。


「・・・光彦。」


 行方不明になっていた光彦だった。


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