第71話 不穏な空気

「すまないが、俺は君の事をよく知らない。知らない人と付き合いたいとは思わない。申し訳ない。」


 俺がそう言うと、三津浦と名乗った女の子は意外そうな顔をした。


「・・・それ、関係あります?あたし、可愛く無いですか?先輩にだったら・・・なんでもしてあげますよ?」


 そう言って、胸を強調するようにする三津浦。

 結構あるようだ。


「・・・すまないな。俺はそういうのを目的で付き合おうとは思わない。君が可愛いか可愛くないかであれば、可愛いとは思うが・・・大事なのは内面だ。」

「・・・へぇ。そうなんだ〜・・・じゃあいいでーす!さよなら〜!!」


 三津浦は、そう言って立ち去っていった。

 

 ・・・やはり、何か気になるな。

 あいつは、本当に俺が好きで告白したのか?

 罰ゲーム・・・なんかであれば、同じ学年でするだろうし・・・わからん。

 

 まぁ、良い。

 さっさと、校門に行こう。


 柚葉達が待ってるだろうからな。

 俺は、その場を後にした。





side三津浦


「もしもし?そっちはどう?」

『・・・あの女、そっこーでフリやがった・・・ムカつく女だ!!』

「あっはっは〜!やーい振られてやんの〜!!」

『・・・そういう、お前だって、このタイミングで電話してきたって事は、振られてるんだろが!!』

「まぁ・・・そうなんだけどね?」


 そう言って、三津浦は顔を顰める。


「あいつ・・・ムカつくわ。ちょっと顔立ちが良いだけの、元陰キャのクセして、この私をフリやがった!!こっちは読モしてるってのにさぁ!!」

『けっ!てめーも同じじゃねーか!!・・・にしても・・・』

「・・・ええ。わかるよ言いたい事。調子に乗ってんね?」

『・・・だな。まぁ、あいつらも終わりだよ。予定はあっちに移行すんだろ?』


 あたしの顔は見なくてもわかる。

 悪い顔して笑ってる筈だ。

 だって・・・


「そうね・・・あのムカつく東儀も!・・・それに北上も、西條も、南谷も・・・これで表には出て来れなくなるわ!!それどころか・・・学校やめちゃうか、死んじゃうんじゃないの〜?」

『お〜こわ!女の嫉妬は恐ろしいな!!ぎゃはは。』

「・・・あたしは、あたしより可愛いなんて言われる奴は許せないだけよ。あんただってそうでしょ?綺麗所を侍らせてる陰キャ・・・あの、暮内ってのをぶっ飛ばしたいんじゃない?」

『あったりまえだ!まぁ・・・あいつも終わりだな。調子に乗った罰だ。せいぜい、ズタボロにして追い込んでやるさ。』


 そんなコイツを尻目に、あたしは気になっていた事を聞いた。


「・・・ねぇ、吉岡さん今、どうなってんの?」

『あいつは、今、逃げ回ってるらしいぜ?あいつも馬鹿だよなぁ・・・今のボスが誰だかわかってねーんだからさ?義理なんて果たさなきゃよかったのによ?』


 その言葉にどーんと胸が重くなる。


「・・・そう。まぁ、仕方がないね。・・・馬鹿だなぁ吉岡さん・・・だから言ったのに・・・」

『ん?なんか言ったか?』

「ん〜ん別に〜?さて、そんじゃ、あんたから報告しといてよ。」

『ああ、わかった。んじゃな!』


 あたしは電話を切った。


 ・・・吉岡さん。

 あなたが悪いんだよ・・・

 あれだけ忠告したのに・・・


 でも、もう、止まらないよ・・・多分、あたしたちは。

 

 その為に・・・東儀達には生贄になって貰う。

 

 東儀・・・東儀翔子・・・ざまあみろ!!

 あんたが悪いんだ!!

 あたしよりも、可愛いなんて言われてるあんたが!!


 北上も!西條も!!南谷も!!!

 みんなみんな絶望していなくなっちゃえ!!!





 side総司


「待たせたな。」

「ん〜ん!そんなに待ってないよ!」

「そうです。すぐでしたよ。」


 そんな柚葉や翔子に混じって、シオンも既に居た。


「あたしもすぐに終わったからね。」

「・・・何も無かったか?」

「ええ、特に何もね。速攻断ってやったわ。それより、そっちは?」

「勿論、断ったさ。」

「可愛かった?」

「・・・ノーコメントで。」


 言えるかそんなの。

 俺は振った側だぞ?

 そんな傷つけるような事言えないだろ。


 ・・・まぁ、疑問は残るんだがな。


 そして、俺達は帰路に着く。

 俺は、相手が誰だったかは、のらりくらりと躱した。

 シオンたちはしつこく聞いてきたが、一切しゃべらなかった。


 それより、気になった事がある。


 翔子によると、シオンに告った奴は、一年で有名な奴で、名前を大石龍悟というそうだ。

 ・・・あまり良くない仲間が居るらしい。

 まぁ・・・何かあったら守るだけなんだがな。


 もし、万が一にも、こいつらに手を出したら・・・

 その時は・・・一切容赦せずに・・・潰す!!

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