第7章 不穏と友人の正体

第70話 変わった事

 ゴールデンウィークの後、俺は少し変わる為、髪を整える様になった。

 最初、登校した時には、じろじろ見られたし、女子が話かけて来ることもあったが、今では慣れて来た。


 基本的に、シオンや柚葉、翔子、黒絵がブロックしているので、あまり踏み込んで来る者もいない。

 もっとも、見た目が変わったからといって話しかけて来られても、なんとも思わないんだがな。


 陰キャとはもう言えないにしろ、それでも陽キャとは言わない。

 何故なら、基本的には物静かにしており、話しかけられても、差し障りの無いことしか話さず、一緒に遊びに誘われても、遊びに行ったりしないからだ。


 あくまでも、ちゃんとする一環であり、陽キャになろうとはしていないのだ。


 そんなまま、気がつけば夏休み目前まで来ていた。


 シオン達との関係は変わらない。

 あれ以来、ガンガンアピールしてくるが、決定的なものは無い。


 ・・・隙があると、頬にキスしてきたりはするがな。


 絡んでくる奴はほとんどいなくなった。

 最初は俺の側に来るのだが、俺の顔をマジマジと見て、肩を落として去っていく者が増えたのだ。


 シオン曰く、


「今までは、顔をあんまり出して無かったから、わからなかったかもだけど、今の総司はイケメンだからね〜。」


 との事。

 ・・・イケメンか?

 よくわからん。


 変わりがない者いる。


 シオン達4人と・・・光彦だ。

 光彦は、俺が顔を出した時、大爆笑しやがった。

 そして、言ったセリフがこれだ。


『あ〜!なるほど!!そりゃ、そうだよな〜!!これだけの美人に囲まれるんだ。見た目が悪い訳は無いか!!しかし、お前、その顔で陰キャになろうとしてたのか!?ブハハハハハハ!!』


 ・・・ムカつく!!


 ・・・まぁ、良い。

 取り敢えず、大きな不都合は起きてはいない。

 

 そんなこんなで月日は過ぎたのだが・・・夏休み目前にして、少し驚いた事があった。

 光彦が、学校を休んだのだ。

 それも、無断で3日も。

 何かあったのだろうか・・・


 担任は、光彦に連絡が取れないと言っていた。

 ・・・何かに巻き込まれたのだろうか・・・



 そうしていた所、俺にも衝撃が走る事が出来た。

 

 なんと、呼び出しを受けたのだ。

 裏庭へ。


 朝、下駄箱に手紙が入っていたのだ。

 無記名で、裏庭へ来て下さい。

 とだけ。


 当然、シオンや柚葉、翔子、黒絵は騒いだ。

 ・・・昼放課はひどかった。

 全員で詰め寄って、針のむしろのようになっていた。


『また、私達の知らない所で、誰か助けてたんじゃ無いでしょうね!!』


 そんな記憶はございません。


『そーちゃん!私や翔子ちゃん以外に、幼馴染みがひょっこり出て来たりしないよね!?』


 そんなもん、簡単に出来るか!!


『総司先輩・・・ナンパしたりは当然していませんよね?していたら・・・わかっていますね?』


 するかそんな事!!


『ソウ・・・男だから、性欲が有り余るのは理解できる。だがな?ワタシがちゃんと受け止めると言っているのだ。他で発散するような事は無いようにな?したら・・・もう二度とそんな気が起こらない位に・・・徹底的にしてやる・・・』


 ・・・怖い。

 黒絵が怖い。

 嫉妬で、髪が逆だっているのを幻視してしまう。


 というか、俺はどれだけ信用がないんだっての・・・

 俺は、こう見えて、お前ら以外には一切惹かれていないってのに・・・はぁ。


 そんな風にしていた所、教室に一人の男が入って来た。

 見た事は無い。

 黒絵を見るも、首を振る。

 翔子は・・・眉を寄せている。


 知っているのか?

 となると、一年生か・・・


 ちょっとやんちゃそうに見えるが・・・

 顔は整っているな。


「あんたが、西條先輩だな?放課後、ちょっと付き合ってくれよ。」

「・・・嫌よ。めんどくさい。」

「・・・ああ?・・・まぁ、良い。少しだけ時間をくれ。」


 男はムッとしたようにしたが、ちっと舌打ちをしてから、また頼み込んだ。


「・・・それ、私が付き合う義務ある?」

「・・・少しだけだ。少しだけ。」


 シオンは俺をちらっと見てから、ため息をついて、


「・・・わかったわよ。但し、期待はしない事ね。」

「・・・悪いな。テニスコートの裏でいい。じゃあ。」


 男は去っ行った。


「・・・よく、了承したな。」

「ああいう奴は、一旦でも聞いてやらないと、暴れそうだったからね。仕方がないわ。」

「・・・大丈夫か?」

「ソウ、心配するな。ワタシが陰ながら見守ってやろう。」

「・・・黒絵、ありがとう。」

「何、それくらいどうって事無いさ。」

「すまん黒絵。頼む。」

「黒絵・・・ありがと。お願いするわね。」

「気にするな。ワタシ達の仲だろう?」


 こうして、昼放課が終わる。



 放課後、シオンも同じ様に呼び出しを受けていたので、柚葉とシオン、翔子とは校門で待ち合わせる事にして、取り敢えず、裏庭へ向かう。

 黒絵は、シオンを見届けた後、今日は生徒会があるので、そちらに行く予定らしい。


 裏庭に着くと、そこには、ギャルっぽい可愛い女の子が居た。


 その女の子は、茶系の明るい髪色に、整った顔立ち、そして・・・携帯をいじって立っていた。

 俺自身に、その子に見覚えは無い。


 だが、これだけ可愛ければ、有名だろうな。

 俺は、その子に近づくと、携帯をスッとポケットにしまって近づいてきた。


「暮内先輩ですよね?あたしは一年の三津浦莉愛みつうらりあって言います。好きです!付き合って下さい!!」


 笑顔で・・・というか、あざとくそう言う、その女の子。

 ・・・なんだろう、なんか嘘くさい気がする。


 にしても・・・まさか、俺の人生で、あいつら以外で告白される事があるとはな・・・

 まぁ、答えは決まってるんだがな。

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