第66話 お説教
「・・・うっ?」
目を覚ますとそこはリビングだった。
何か大きな声が聞こえてくるのでそちらを見ると・・・
「お母さん!やりすぎ!!酔っ払って何やってるの!!」
「・・・ごめんなさい。」
正座の琴音さんを仁王立ちで怒るシオンと、
「もう!お母さんもだよ!!お母さんがそーちゃんを誘惑してどうするの!!」
「・・・返す言葉も無いわ。」
同じく、正座で怒られている清音さんと、同じく正座でプリプリ怒っている柚葉。
「・・・お母さん。私が言いたい事がわかりますか?」
「・・・ええ、失敗してごめんなさい。」
「そうです。2日連チャンで総司先輩を気絶させてしまいました。大失敗です!」
・・・翔子は何を怒ってんだ?
ちょっと違くない?
「母上。流石に今回のはやりすぎです。それに、ワタシよりも先にソウに全裸を晒してどうするのですか!」
「・・・ごめんなさい。酒に呑まれるとは・・・いい歳なのに・・・」
黒絵と葵さんも膝を付き合わせている。
どうやら、各家庭毎に娘に説教されているようだ。
・・・まぁ、俺にしてみれば、どっちもどっちではあるのだが・・・
「あら?総司、気がついた?」
俺の頭の上から母さんの声がした。
となると、仲間はずれはいけないな。
「良かった。びっくりしたのよ?いきなり気絶するから・・・」
「母さん。」
「何かしら?」
「正座。」
「え?」
「母さんも正座しなさい!!」
「はい!」
何をしれっとしてるんだ!!
元はと言えば母さんが元凶だってのに!!!
「母さん!昔の仲間と楽しくしてるのは、子供として俺も嬉しい!だけどな?俺達をおもちゃにするなぁ!!」
「ご、ごめんなさ〜い!!」
「そもそもだな?年頃の男女を一緒に・・・」
俺はこんこんと母さんに説教する。
いくらなんでも、今回のはやりすぎだ!
・・・おかげで二回も見られちまったじゃねぇか!!
それもストロング状態のを!!
「総司〜。もう許して〜!!」
「駄目だ!この際言わせてもらうがな!?いくらなんでも男の入ってる風呂に突入・・・」
・・・思えば、母さんにこんな風に怒るのは初めてかもしれんな。
ガミガミと怒っていると、ポンと肩に手を置かれた。
俺が振り返ると、そこにはシオン達と、お袋さん達が並んでいた。
「総司?もうお母さんを許してあげてよ。」
「シオン・・・だがな?」
「そーちゃん。そーちゃんママだって、面白がってただけじゃないと思うよ?」
「柚葉・・・しかし、」
「総司先輩。お義母様だって、今の総司先輩の有り様を心配なさったのだと思います。理解してあげて下さい。」
「翔子・・・」
「ソウ、お前が家族に尽くし過ぎていた事を、お母様は気に病んでおられたのだろう。許してあげて欲しい。」
「黒絵・・・」
・・・そう言われてしまうと、何も言えなくなる。
そもそも、俺の我儘で初めた事だからな。
罪滅ぼしの為に。
「総司くん。ごめんさない。酔っていたとはいえ、やりすぎたわ。」
「ええ、琴音センパイの言うとおりだわ。ごめんねそーちゃん。」
「総司くんごめんなさい。双葉先輩を許してあげて?」
「総司くん。酔っていたとはいえ、迷惑をかけました。今回の件は私達も同意したものです。だから、双葉先輩だけが悪いわけじゃないの。ごめんなさい。」
母親達が頭を下げた。
・・・はぁ。
「・・・頭を上げて下さい。・・・こちらこそ、不可抗力とはいえ、その・・・裸を見てしまい、あまつさえ、・・・む、胸に顔をつっこむなんて事をしてしまい、申し訳ありませんでした。」
「「「「総司くん!?(そーちゃん!?)」」」」
・・・まぁ、裸を見た以上、これは仕方がない。
俺は、お袋さん達に頭を下げた。
「い、良いのよ?こんなおばさんの裸なんて・・・」
「そ、そうよ?それに・・・こっちも見ちゃったし・・・」
「ええ、総司くんのはとても立派でしたよ!?今から楽しみですから!」
「翼!あなた反省してるの!?まったく・・・総司くん、ごめんなさい。これでお互い様にしてくれないかしら?」
「・・・女性の裸を見て、俺の裸を見せるなんてのでは釣り合わない気もしますが・・・お互い様にして下さい。それと・・・」
ちゃんと言わないとな。
「琴音さん達といる時の母さんは本当に楽しそうで、子供として俺も嬉しいんです。父さんが死んでから、こんなに楽しそうな母さんは初めて見ました。だから・・・ありがとうございます。どうか、これからも、母さんと仲良くしてあげて下さい。」
「・・・総司。」
母さんが手を口にあて、目は少し潤んでいる。
でも、これは本心なんだ。
俺のせいで、迷惑かけて来た母さん。
少しでも楽しんでくれれば俺は嬉しい。
ぎゅっという感触に包まれる。
俺が顔を上げると、琴音さんたちが俺を抱きしめていた。
「・・・本当に良い子ねあなたは。詩音の近くに、こんなに優しい子が居て良かったわ」
「そうですね・・・琴音センパイの言う通りよ。そーちゃんはやっぱり良い子だわ。昔よりもずっと良い子になってる・・・」
「そうですね・・・双葉先輩?良かったですね?総司くんがこんなお母さん想いに育って。」
「翼の言う通りですね。総司くん。あなたは自分を誇って良いのよ?そう言えるあなたはとても優しい。双葉先輩の自慢の息子だと思うわよ?」
そうだろうか・・・俺は罪滅ぼしで・・・
「総司。」
母さんが俺を呼んだ。
俺は母さんを見る。
「あなたは、私と亮司の自慢の息子よ?どうか、そのまま優しく良い子でいてね?そして・・・ちゃんと自分の幸せを大事にして?それがお母さんと・・・お父さんからのお願いよ?」
母さんは微笑んでそう言った。
「・・・わかった。俺は・・・母さんや父さんの子供として、ちゃんと自分の幸せも考えるよ。そのためには・・・」
俺はシオン、柚葉、翔子、黒絵を見る。
「・・・待たせて本当に悪いが、もう少しだけ待ってくれ。だけど約束するよ。・・・ちゃんとするから。」
4人は嬉しそうに頷いた。
想いは受け取って貰えたようだ。
ちゃんとする。
それは・・・陰キャからの脱却だ。
・・・少しづつ、変わっていこう。
ところで、俺、また服着てるんだけど・・・やっりみんなで着せたんだよな・・・ここに居るみんなに。
・・・はぁ〜〜〜どれだけ見られてるんだ俺は・・・
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