第63話 落ち着いてから、そして柚葉と翔子との時間

「・・・みっともない所を見せたわね。」


 ひとしきり騒いだ後、落ち着いた母さんと、微妙に頬を赤くしたシオンのお袋さん達。

 

「・・・いえ、そんな事は。母さんの楽しそうな姿も見えましたので。」

「・・・そう。そう言って貰えると嬉しいわね。」

「シオンのお母さんは・・・」

「琴音で良いわよ?」


 ・・・お袋さんを名前呼び。

 中々ハードル高いが・・・じっと俺の目を見ている。

 ・・・とても期待した目で。

 シオンそっくりだな・・・こういう所は・・・

 ・・・はぁ。


「・・・琴音さんは・・・」

「あ!?ズルい!!そーちゃん!なら、私は清見でいいわ!!」

「清見だけじゃないわ。私も、翼で良いわ、総司くん?」

「・・・で、あれば、私も葵で良いですよ。」


 ・・・マジか。

 う〜ん・・・だけど、多分だが、もう、琴音さんを名前で呼んだ以上、他の人を呼ばないと・・・機嫌が悪くなりそうなんだよなぁ。

 仕方が無い・・・か・・・


「・・・わかりました。」

「じゃあ、ほら!そーちゃん?早く呼んでみてよ!」

「・・・清見さん。」

「きゃー!!良いわねこれ!」

「総司くん?」

「・・・はい、葵さん。」

「・・・何かしら?ゾクゾクするわね・・・確かに良いわね。」

「さぁ、総司くん。私も呼んでみましょうか?」

「・・・わかりました。翼さん。」

「・・・なるほど。では、次は呼び捨てで・・・」

「こら!翼!あなたは本当に・・・もう!」

「・・・総司くん?気をつけなさい?この子には隙を見せたら・・・ぱくり、よ。」


 ぱくり・・・だと・・・ごくりっ。


「・・・人聞きの悪い。私は、今までそういう面を見せたのは、亮司さんと、今の主人だけですよ。」

「・・・まぁ、亮司には失敗してたけどね〜?」

「双葉先輩うるさいです。確かに、あの人の鋼の理性に、当時の私では勝てませんでした・・・翔子?あなたは怯んではいけませんよ?引かば押せ、押さば押せ、です。」

「はい!!」


 ・・・いや、はい!じゃないんだが・・・


「まぁ、取り敢えず、あなた達には予定があるのでしょう?夕飯までそれぞれ過ごしましょう。私も少し羽を伸ばさせて貰います。」

「ええ、琴音先輩、ゆっくりして下さい。」


 その言葉で、取り敢えず、俺達は、子供部屋に移動した。


「・・・しかし、驚いたな。まさか母上達が・・・」

「ええ、総司のお父さんを取り合ってたなんて、ね・・・」

「私もびっくりだよ・・・お母さんから、一回も聞いたことないもん・・・」

「私もです・・・でも、多分、その時の後悔が、私の背中を積極的に押すことにつながっているのでしょうね・・・おそらく、柚ちゃん達のお母さん達も同じ理由で・・・」

「私からすると、そんな関係なのに、あんなに仲良くしてるが驚きなんだけどねぇ〜。それにしても・・・お父さんモテたんだね。お兄ちゃんもだけどさ〜。だって、柚ちゃん達も、柚ちゃんのお母さん達も、凄く綺麗なのにさぁ。びっくりしちゃうよね〜?」


 瑞希の言葉。

 ・・・それは、俺も思う。

 父さんモテたんだな・・・

 ・・・父さん、やっぱり父さんとしっかりと話したかったなぁ。


「さて、それでは、続きと行こう。ソウ、翔子と予定を過ごすと良い。瑞希ちゃんは昨日と同じく、ワタシ達と過ごすので良いかな?」

「はい!だって、黒絵さん達と話すの面白いし、将来のお義姉ちゃんになるかもしれないし!」


 ・・・瑞希、やめなさい。

 恥ずかしくなっちゃうから・・・俺が。

 そして、シオン達は、みんな満更でも無さそうだな。

 ・・・心強すぎない?




 そうして、翔子との時間を過ごす。

 

 翔子からの要望は、俺とマンツーマンでのゲームだった。

 ・・・ただし、罰ゲーム付きの。

 

 俺達は、子供部屋でゲームに興じた。

 シオン達は、みんなで散歩をしに行った。


 ゲームは多岐に渡った。

 基本はトランプなどの簡単なもの。

 そして・・・罰ゲームも多岐に渡った。

 翔子が求めた罰ゲーム・・・最初は、負けた方が服を脱ぐと言い出したので、それについては拒否した。


 ・・・めちゃくちゃ言いやがる・・・


 そして、代わりは簡単なものになった。

 例えば、負けたほうが相手の好きな所を3つ言うとか、肩を揉むとか、腰をマッサージするとか、1分間こしょぐるとか・・・そして、気がついたら、俺は、翔子を膝に座らせ、後ろから抱きしめさせられていた。


 ・・・なんで?

 

「さて、それでは最後のゲームにしましょう。コレです。」

「・・・それはなんだ?」

「ツイスターゲームと言います。」

「・・・なんだそりゃ?」

「シートに色が付いているでしょう?ルーレットを回して、その指示通りにしなくてはいけません。例えば、左手を青に置け、とか、右足を赤に、などですね。そして、体勢が崩れてしまったら負けです。罰ゲームは、耳元で、ずっと囁くというのはどうでしょう?残りの時間を。」

「・・・ふ〜ん。まぁ、やってみるか。罰ゲームはそんなので良いのか?」

「ええ。それで。」

「まぁ、身体を使ったもので俺に勝とうなんて甘いぞ翔子?」

「・・・ふふふ。それはどうでしょう?」


 こうして開始したツイスターゲーム。

 俺は・・・完全に見誤っていた。

 これ・・・すっげー恥ずかしい。


 今、俺は仰向け状態で、後ろ手に大きく手を広げ、足もかなりきつい体勢で耐えている。

 そして・・・ミニスカートの翔子のお尻が、徐々に俺の顔に迫ってきている。

 勿論、丸見えだ。


「ま、待て!翔子!このままだだと顔に・・・!!」

「え?なんですか先輩?そうやって私を負けさせようって魂胆ですか?そうはさせませんよ?」


 そうじゃない!

 そうじゃないんだ!!

 くそっ!!

 こんな事になるとは!!


 もう、鼻先が翔子のマズイ所に触れそう・・・くっ!

 仕方がない!!


 俺は体勢をワザと崩して、倒れ込んだ。


「あら、先輩の負けですね。」

「・・・」


 ・・・確信犯の癖に!!


「では、失礼します。」


 翔子は俺をあぐらで座らせ、後ろから抱きついてきた。

 そして、コアラの様にしがみつく。


「・・・おい?」

「こうしないと、先輩の耳に口を寄せられないので。」


 嘘つけ!!


 そして、始まる蹂躙。

 こいつ、このタイミングにかこつけて、凄まじい言葉攻めをしてきやがった。


「・・・はぁ。先輩?どうしたんですか?こ〜んなにドキドキして・・・ふ〜」

「ひぐぅっ!?ひゃ!?しょ、しょうこ・・・もうやめ・・・」

「・・・駄目ですよぉ?せ・ん・ぱ・い♡・・・大きくしちゃったのかなぁ?盛り上がってますよ♡」


 誰か!

 誰か助けて!!


 当然助けが来るわけも無く。

 俺は20分間位かけて骨抜きにされるのだった。







「そーちゃん?大丈夫?なんかフラフラしてるけど・・・」

「い、いや、大丈夫だ。」


 今度は柚葉の時間だ。

 柚葉が希望したのは、昔良くやっていたおままごとだった。

 ・・・この歳でやるのは中々恥ずかしい。

 

 だが、それを柚葉が望むなら、まぁ、付き合おう。


「ただいま。帰ったよ。」


 場所は、やはりそのまま子供部屋だ。

 勿論、シオン達はいない。


「あなたお帰りなさい!ご飯にする?お風呂にする?そ・れ・と・も♡」

「あ、ご飯でお願いします。」

「も〜!そーちゃんやり直し!!」

「・・・」


 え〜・・・


「私にする?柚葉にする?そ・れ・と・も・・・エッチする?」

「おい!?それ一択しか無いじゃねーか!!」

「え?だって新婚夫婦ってこんな感じじゃないの?」

「・・・結婚したこと無いからわからん。」

「だよね〜。でもぉ、私と結婚してくれたら・・・ね♡」

「・・・」


 ぐぅっ!?

 こ、こいつ・・・本当にやるようになった!!

 こんなに色気を出すとは・・・


「取り敢えず、お腹空いたのでご飯にしてください。」

「も〜・・・仕方がないなぁ。はい。どうぞ?」


 そんなこんなで、おままごとは進み・・・


「さぁ、あなた?お布団敷いたので、寝ましょうね?」

「・・・なぁ、柚葉。なんで一組しか敷いてないんだ?」

「え?あなたが何を言ってるかわからないよ?さぁ?」

「いや、待て待て。これ、ごっこだよな?」

「そうだよ?」

「じゃあ、なんで本当に横になろうとしてるんだよ。」

「・・・あなたが何を言っているかわからないよ?」

「嘘つけ!!」


 なんとか、防ごうとしたが、結局無理やり布団に引きずりこまれてしまった。


「・・・ねぇ、あなた。」

「・・・なんだ?」

「私ね・・・そろそろ子供が欲しいの。」

「ぶふっ!?」


 思わず、変に咳き込んでしまった。


「だから・・・ほら、こんなに胸がキュンキュンしてるの・・・確かめて見て?」

「スト〜ップ!!柚葉!スト〜〜ップ!!!」

「も〜!何?」

「いや、何本当に触らせようとしてんの!?」

「え?だって、新婚夫婦でしょ?これくらいするんじゃないの?」

「おままごとだよねこれ!?」

「・・・あなたが何を言ってるのかわからないよ?」

「お前そればっかだなぁおい!?」


 なんとか防ぎました。

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