第62話 驚愕の関係性

「さて、はじめましての方がいるので、きちんとご挨拶しますね。」


 現在、またリビングに戻って来て、現在は全員でコーヒーやお茶を飲んでいる。

 未だ驚愕が覚めやらぬ俺達と、ムスッとした柚葉達のお袋さん達。


 そんな面々を尻目に、シオンのお袋さんは話始めた。


「私は、西條琴音。詩音の母親です。あの子達が言っていた桐生というのは旧姓よ。そして・・・総司くんのお母さんである、双葉さんの高校での先輩であり・・・そちらの三人の先輩でもあるの。」


 ・・・そういう事か。

 まさかの関係だな。


「私は、高校時代、生徒会長をしていたわ。そして、双葉さんと・・・総司くんの父親である亮司くんは、それぞれ副会長と庶務だった。そして、私の後釜として、亮司くんが生徒会長となり、双葉さんが副会長となったわ。そしてそこの三人も生徒会に入っていたのよ。」

「後輩の清見が庶務、翼が会計、葵が書紀だったのよ。」


 シオンのお袋さんの言葉に、ニコニコしながら母さんが補足した。

 なるほどなぁ・・・


「あ、あの・・・」

「何かしら?え〜っと・・・」

「あ、はい、南谷柚葉と言います。南谷清見の娘です。そーちゃん・・・総司くんの幼馴染みです。」

「ええ、良く似ているわね・・・本当に。」

「あ、ありがとうございます?じゃなくて、その・・・それだけの関係ですか?」


 そう、柚葉の言う通り、それだけじゃなくて、もっと親密な感じに見える。

 それこそ、気の置けない感じがするんだ。


「それだけ、とは?」


 面白そうに尋ね返すシオンのお袋さん。

 ・・・悪戯な笑顔がシオンにそっくりだ。

 ・・・いや、シオンが似ているのか。

 あの時は、そんな感じはしなかったのに・・・やっぱ母娘なんだなぁ。


「柚ちゃんに私も同意です。私は東儀翔子と言います。東儀翼の娘です。総司先輩と柚ちゃんの幼馴染みで、一つ後輩になります。もっと気軽・・・というかなんというか・・・」

「ふむ、翔子の言う通りだね。ワタシもこのような母上は初めて見る。あ、申し遅れました、ワタシはソウ・・・じくんの先輩で、現在の生徒会長をしています、北上黒絵と言います。北上葵の娘です。」

「翔子さんに黒絵さんね。あなた達も二人にそっくりね・・・なるほど。詩音が苦戦するわけだわ。」

「ちょ!?お、お母さん!?」


 翔子と黒絵の言葉を聞いたシオンのお袋さんが言った言葉に、シオンが焦って声を上げた。

 それを見て、にやにやした笑みを浮かべるお袋さん。


「・・・桐生センパ・・・じゃない、西條さん?一人でそんなに楽しまないで下さいよ。」

「そうです。それは、私達全員で楽しむべきものでしょう?」

「翼の言う通りです。・・・にしても、相変わらずですね・・・西條さんは。」

「あら?言いにくそうね?別に、琴音で良いわよ?それより・・・どうしましょうかね、双葉さん?」


 柚葉達のお袋さんの言葉に、シオンのお袋さんが名前呼びを許した後、母さんを見た。


「どう、とは?」

「私達の関係性を言って良いかどうか、よ。あの時の勝者であるあなたに決めさせてあげる。」

「・・・私もそれで良いです。」

「そうですね。私も賛成です。」

「・・・では、私もそれで。」

「う〜ん・・・どうしようかしら・・・」


 勝者?

 何かを戦っていたのか?


「・・・まさか。」


 黒絵が目を見開いてポツリと呟いた。


「そういう事・・・なの?」


 ほぼ、同タイミングでシオンも呟く。


「・・・え?え?」


 柚葉は、わかっているのかいないのか・・・まぁ、俺はわかっていないのだが。


「もしかして・・・だから?」


 ・・・翔子は分かったようだ。

 いや、本当に何?


「まぁ、いっか。琴音先輩達が良いなら。良いですか?」


 その母さんの言葉に、お袋さん達は頷いた。


「あのね?ここに居るみんなで・・・お父さん、つまり、亮司を取り合ってたのよ。」


 っ!?・・・何だって!?


「やはり・・・」

「やっぱりね・・・」

「・・・」


 黒絵と詩音、翔子はあまり動揺していない。

 予想が当たったようだ。


「ええ〜!?」


 代わりに、柚葉は驚いている。

 うん、そういう所、可愛いと思う。


「へ〜・・・お父さん、モテたんだ。」


 瑞希は・・・どうでも良さそうだ。

 ・・・もっと興味出してあげようよ。

 父さんが可哀想でしょ?


「私は同級生、清見と翼は亮司と幼馴染み、琴音先輩はそのまま先輩で、葵は、中学校からの後輩よ。ねぇ?どこかで聞いた話よね?」


 にやにやと俺を見てくる母さん。

 ・・・ノーコメントだ!


「うふふ・・・まあ、面白いわね。母娘二代に渡ってこんな事やってるなんて・・・」

「・・・ですねぇ。まったく、誰に似ちゃったのか・・・」

「・・・それは清見じゃないの?」

「・・・他人事みたいに言ってるけど、翼もですからね?」

「そういう、葵だってそうじゃないの!まぁ、あなたと違って黒絵さんはそーちゃんの先輩だけどね。」


 5人でキャッキャと話している母親達を余所目に、俺達は唖然としていた。

 ・・・仲が良いとは思っていたが、まさかこんな関係性だったとはな・・・

 

 そして、父さん・・・さぞ、大変だっただろうな・・・(泣)

 ・・・痛いほど、よくわかります。


「と、言うわけで、総司くんは詩音が貰って行くからね?」

「何言ってるんですか!そーちゃんは柚葉のです!!」

「いいえ、違います。総司くんは、翔子と私のものです。」

「・・・翼?ちょっと真剣に待ちなさい。翔子さんのはわかるけど、あなたはどこから出てくるのよ。・・・まぁ、うちの黒絵が攫って行くでしょうから、どちらにせよ上手く行かないでしょうがね。」

「・・・相も変わらず、小生意気な小娘達だこと。私にからかわれて涙目になっていたのに。」

「いつの事言ってるんですか!そういうセンパイこそしっかりと振られて泣いてたくせに!!」

「・・・言ってくれるわね!!あんた達も同じでしょうが!!私よりも一年長くいたのに、結局双葉さんに持っていかれてるじゃないの!!」

「くっ!?・・・そうですね。双葉先輩が悪いのです。」

「・・・それもそうね。といわけで・・・余裕見せている双葉先輩には、今日、しっかりとみんなでいじめてあげましょうよ。」

「「「「賛成」」」」

「え!?な、なんでそうなるの!?私をいじめる人に、総司はあげません!!」


 ・・・なんだコレ?

 子供か?


 ・・・まぁ、みんながみんな楽しそうな顔をしてるから、それはそれでありか。

 大人になれば、色々大変だろうからな・・・

 

 今は、昔に戻って楽しんでいれば良いよ。


 そうだろ?

 父さん?

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