第61話 夜が明けて、そしてサプライズ
「・・・眠い・・・」
ほとんど寝れなかった。
二人はぐうすか寝ている。
・・・良いなぁ・・・
「ほう・・・ソウ。良い御身分だな・・・女二人を侍らせて寝るとは・・・」
「!?」
すぐそばに、目を嫉妬に燃やした黒絵が仁王立ちしていた。
「お、お前、もう起きて・・・」
「ワタシはいつもこれくらいの時間に起きる。それに、話を逸らそうとしても無駄だ。これは罰を与えねば、な。」
黒絵の背後に嫉妬の炎が轟々と燃え盛っている。
「ゆ、許してくれ黒絵。これには訳が・・・」
しかし、俺がそう言うと、黒絵は表情を苦笑に切り替えた。
「・・・そうだな。どうせ、柚葉と翔子に押し切られたのだろう。ならば・・・ワタシとも今度、早ければ今夜、添い寝をしてくれれば許してやろう。」
「!?」
ぐっ・・・なんとか誤魔化せないか!?
「そ、それよりも、今度何か買ってやるとか・・・」
「無駄だ。交渉には応じん。・・・そうだな・・・お前が応じないのであれば・・・ん〜」
こ、こいつ!?
逃げ場のないこの状況でキスをしようと・・・
「わ、わかった黒絵、わかったから!」
「ふむ、ならば良しとしよう。それはそれとして嫉妬するから・・・よいしょっと。」
「な・・・!?」
黒絵はそばに正座し、枕をどけて俺の頭を掴み、膝に乗せた。
膝枕だ。
戸惑っている俺をよそ目に、黒絵は柔らかい笑顔で、俺の頭を撫でる。
「・・・ソウ、お前、ほとんど寝ていないだろう?少し寝るといいさ。」
「黒絵・・・」
「ふふふ・・・こうして見ると、良いものだね・・・やはり、ワタシは好きな男に尽くすのが向いているようだ。多幸感が凄い。さぁ、ソウ、もう少し寝なさい。」
「・・・あ・・・」
優しく微笑む黒絵に頭を撫でられていたら、途端に睡魔が来た。
・・・ありがとう、黒絵・・・
「総司?そろそろ朝ごはんよ?起きて?」
「・・・くあぁぁぁ・・・おはようシオン・・・飯か・・・」
「もう、みんな起きてるわよ?ご飯作るの手伝ってるわ。行きましょう?」
「・・・ああ。」
シオンに手を引かれ、洗面所に向かう。
顔を洗うと目が覚めた。
「翔子と柚葉から聞いたわよ?あんた達、くっついて寝たんだってね?」
「むぐっ!?」
歯を磨いていると、そんな事をジト目で言うシオン。
「当然、あたしともそうしてくれるわよね?」
「・・・わかったよ。」
「ん!よろしい!!」
・・・俺は学んだ。
下手に抵抗すると、状況は悪化すると。
リビングに行くと、全員揃って席に着いていた。
「おはよう総司・・・よく寝た・・・わけじゃ無さそうね。」
「お兄ちゃん・・・ムラムラしちゃったんじゃないの〜?」
母さん、誰のせいだ。
瑞希、ほっとけ!
「おはようそーちゃん!寝起きも可愛いわね!・・・あっちは凶悪だったけど。」
「おはようございます総司くん。もう、大丈夫そうね。・・・やだ、思い出しちゃったわ・・・ごくり。」
「おはよう総司くん。男子たるもの、たくましくあるべきです。しっかりと食事を取りましょうね。・・・まぁ、あっちは、誰よりもたくましかったですが・・・」
「おはよう・・・ございます。」
お袋さんたち、ちゃんと目を合わせて挨拶して下さい。
どこ見て挨拶してるんですか!
そこに挨拶しても、挨拶は返って来ませんよ?
それと、セクハラは女性から男性にも適用されるんですからね!
・・・ほらぁ!!
シオン達が顔を真っ赤にしてるし!!
絶対思い出してるじゃんか!!
・・・駄目だ!
これ以上このまま放置して置くと、変な方向に話が進みそうだ。
「そ、それよりも食事にしましょう。シオンも、席に着こうぜ?いただきます!!」
こうして、みんなで食事を開始した。
人数が多いからか、朝からたっぷりのボリュームだ。
上手いし、朝から箸が止まらん!
もりもり食べてるのは、俺と柚葉、黒絵だ。
他は普通。
まぁ、変な雰囲気は吹き飛び、俺達は舌鼓を打った。
食事を終え、本日の予定を聞かされる。
取り敢えず、俺達は自由行動となった。
母さん達は、車で、少し離れた土産物屋まで行くそうだ。
楽しそうにそんな事を話している。
瑞希は、俺とペアを組む者以外と、一緒にいるそうだ。
色々話が出来ると喜んでいるし、シオン達も微笑ましそうにしている。
「今回の旅行の写真を、学校の友達に見せる事になってるの。私のお兄ちゃんのお友達は、こんなに綺麗な人たちなんだよって自慢しようっと!!」
・・・おい、瑞希、だからそういう友達マウントはやめなさい。
「瑞希ちゃん?なんならお姉ちゃんって紹介してくれても良いよ?」
「そうだよみーちゃん!私もそうして!」
「瑞希ちゃん、じゃあ、私はお義姉さんで。」
「ふむ、ワタシも瑞希ちゃんの、友達であり姉でもある。存分にやるといい。」
・・・お前ら、それで良いのか?
というか、さりげなく外堀埋めようとするな。
「わーい!お姉ちゃんがいっぱいできた!!お兄ちゃん?この幸せ者め!!ペアになった人を楽しませるんだよ?」
瑞希・・・お前は、いったい何目線で話しているのか。
まぁ、元からそのつもりだがな。
こうして、朝の時間を過ごすことになったのは、まず、シオンだった。
俺達は、昨日黒絵と行った湖に行き、散歩しながら仲良く話しをする。
その時間はとても楽しかった。
「総司!楽しいね!」
「ああ、そうだな!」
「すっごく開放的な気分!!ねぇ、総司!」
「なんだ?」
こんなに楽しそうにしていると、嬉しくなってくる。
「脱いでもいい?」
「・・・なんて?」
前言撤回。
何言ってんだこいつ?
「だから、開放的な気分だから、もっと開放的になろうかと思って。」
「アホか!!見られたらどうすんだ!!」
「誰もいないじゃない。」
「俺がいるだろうが!!」
「総司は良いの。良かったわね?」
「いや、良くね〜よ!!こら!本当に脱ごうとするな!!」
「え〜?良いじゃないの。」
なんとか脱ぐのを止め、その代わりに、ずっと後ろから腕ごと抱きしめる事になった。
「・・・なんでこうなった?」
「だって、総司がそうやって止めてくれないと、身体が勝手に脱ぎ始めるから。」
「嘘つけぇ!!」
「何ようるさいわね。あんまりうるさいと、そっち向いて抱きしめて貰うわよ?耐えられるかしら?」
「・・・静かにします。」
・・・とんでも無いことを言いやがる。
そんなこんなで、二人の時間を過ごすのだった。
昼からは、最初が翔子、柚葉、そして、食事と入浴を挟んで最後が黒絵となっているそうだ。
まぁ、昨日程の真面目な感じも無いだろう。
シオンもそうだったしな。
そう思っていると、予想外の事が起きた。
母さん達が返ってきて、昼食の準備中の時だ。
ピンポーン!!
と、インターホンが鳴った。
・・・こんな所に来客か?
別荘だよなここ。
全員が首を傾げる。
・・・いや、母さんだけが、携帯を見て、にこりと笑った。
「さて、ではサプライズゲストと行きましょう。」
「・・・サプライズゲスト?それってどういう・・・」
黒絵のお袋さんが母さんに尋ねる。
「全員で迎えに行きましょう?良いから良いから!」
「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」
スキップしそうな足取りで玄関に行く母さんと、疑問に思いながらも、それを追う俺達や、お袋さん達。
がちゃっ
母さんがドアを開ける。
そこには・・・
「こんにちわ。」
「「!?」」
シオンの母親がいた。
「お母さん!?どうしてここに!?」
シオンがそう叫び声をあげ・・・固まっていたお袋さん達が、何かに思い至ったのか、驚愕の表情を見せた。
「・・・まさか!?」
「嘘!?」
「桐生先輩!?」
・・・は?
なんでお袋さん達が驚いて・・・それに・・・桐生先輩ってなんだ?
「久しぶりね小娘達。それと・・・双葉さん?顔を合わせるのは本当に久しぶりね。」
「はい!お久ぶりです琴音先輩!!」
優しく微笑むシオンの母親と、凄く嬉しそうな母さん。
そして、
「ちょ、双葉センパイ!!どういう事ですか!!」
母さんに詰め寄る柚葉のお袋さんと、
「そうです!なんで桐生先輩がここに!?双葉先輩、連絡とってたんですか!?」
同じく、初めて見る、焦っている感じの翔子のお袋さん、
「さっき詩音さんがお母さんって言ってましたよね!?双葉先輩!!ちゃんと説明して下さい!!」
そして、いつも冷静な印象なのに、そんな様子がかけらもない黒絵のお袋さん。
「う・ふ・ふ・!ドッキリpart2大☆成☆功!!」
てへって顔で、そんなお袋さん達を見て、そんな事を言う我が母、4◯歳女性。
だから歳を・・・って、それより、なんだ!?
どういう事だ!?
全員知りあいだったのか!?
視界には、俺と同じく唖然としているシオン、柚葉、翔子、黒絵、そして瑞希。
「も〜!双葉センパイはいっつもそうです!!」
「そうですよ!!今回ばっかりは清見が正しいです!なんで事前に言ってくれないんですか!!」
「翼の言う通りです!そうやって、こちらを驚かせて楽しむの止めて下さいって散々言ったじゃないですか!!」
「ほらほら、小娘達、騒々しいわよ?もうちょっと大人として落ち着きなさいな。」
「「「桐生先輩のせいでしょうが!!」」」
「あらあら・・・相変わらず子供ねぇ・・・」
「「「う〜!!!」」」
・・・目の前には、噛み付いている柚葉と翔子と黒絵のお袋さんと、それを余裕の笑みであしらうシオンのお袋さん。
そして、めちゃくちゃ笑顔が輝いている母さん。
・・・ホント、なんなのコレ?
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