第59話 それぞれの過ごし方 シオンの場合

「・・・あれ?俺・・・」

「あ?起きた?」


 目を覚ますと、そこは子供部屋としててがわれた部屋だった。

 俺は布団に横になり、シオンはその俺に添い寝しながら携帯をいじっていた。


「総司は、あの後お風呂でのぼせて気絶しちゃったのよ。それで、みんなでここまで運んだってわけ。」

「そうか・・・そりゃ済まなかった・・・待て。俺、服着てるんだが・・・」


 俺がそう言うと、シオンはスッと目を横に移動させた。

 ・・・まさか


「あ、あのままじゃ風邪引いちゃうでしょ?だから・・・その・・・みんなで身体を拭いて・・・服を着せたのよ・・・」


 シオンは、頬を赤く染め、そう呟いた。

 それって・・・見られたって事だよな!?


「マジか!?嘘だろ!?」

「だ、だって・・・しょうがないじゃないの・・・あのままに出来ないでしょ!?」


 いや、そりゃそうだが・・・


「だ、大丈夫よ!別に総司のは恥ずかしいモノじゃ無いみたいだし!!むしろ誇って良いらしいわよ?」

「いや、そういう問題じゃ・・・ん?それはどういう・・・」

「あ!?・・・な、なんでも無いわ!」

「嘘つけ!!頼むシオン!教えてくれ!!」


 俺がそうシオンに懇願すると、シオンはバツが悪そうにした。


「・・・あの後、私達も動揺しちゃって・・・その、すぐに総司のお母さん達を呼びに言ったのよ・・・」

「・・・まさか・・・」

「・・・その・・・それで、で総司の介抱をしたんだけど・・・その時に、柚葉や翔子、黒絵のお母さんがそんな事を言ってたのよ・・・『そ、そーちゃんのこ、こんなに大きいの?・・・すっかり大人になって・・・』『す、凄いわね・・・こんなのどうなっちゃうのかしら・・・?』『・・・まさかこっちも規格外とは・・・やりますね総司くん。』『・・・総司、お父さんのよりも・・・立派になって・・・』って言ってた・・・」


 ・・・・・・嘘だろ?

 俺、シオン達だけじゃなくて・・・お袋さん達にも見られたってのか?

 てゆーかそれ母さんも混じってない!?


「・・・もう、黙ってたくないから、ちゃんと言うけど、その時の総司のア、アレは・・・大きくなってたから・・・それが見られちゃって・・・」

「・・・・・・」


 ・・・よし!死のう!!


「ちょ、総司どこ行くつもり!?」

「・・・ちょっと首吊ってくる・・・」

「駄目よ!そんなの!!ちょっと総司!!!」


 俺が起き上がろうとしたところ、シオンがしがみついて止めてきた。


「・・・こんな辱めを受けるとは・・・死ぬしか無い・・・」


 ぽつりと俺がそうこぼした時、シオンが真剣な顔で俺を押し倒し、馬乗りになってきた。


「総司!!しっかりして!!何よ!そんなに恥ずかしかったの!?」

「・・・そりゃな・・・」

「わかった。」


 俺がそう言った瞬間、シオンは来ていたTシャツを脱ぎ捨てた。


「な、何してるんだ!?」

「総司が、死ぬほど恥ずかしいって言うなら、あたしも同じ事する。それでおんなじでしょ!!」


 シオンは、器用に履いていたショートパンツを脱ぎ捨て、ブラとショーツだけになる。


「や、やめろシオン!もういい!!俺が悪かった!!」

「何よ!あたしは総司に見られても嫌じゃないもん!!」


 シオンはそのままブラを外そうと後ろに手を回す。

 いかん!!


 俺は無理やり身体を起こし、シオンを押し倒して両腕を掴んで覆いかぶさった。


「放して!!」

「待て!わかった!もうやめろ!!」

「だって!!」


 シオンが涙を溢れさせた。


「総司が・・・総司が・・・死ぬって・・・私達がした事で、総司が死ぬって言うんだもん!!」


 ・・・しまった。

 俺はなんて馬鹿なんだ。

 俺がそんな事を言えば、シオン達は責任を感じちまうって言うのに・・・


「・・・すまん、シオン。これは俺が悪い。ごめん・・・」

「うう・・・死ぬとか言わないでよ・・・そんな悲しくなる事、言わないでよ・・・」

「ごめんな・・・」


 シオンが涙を流しながら、悲しそうな顔をする。

 ・・・こんな顔をさせたいわけじゃないのに・・・


 俺が、そんな風に考えていると、シオンがぽつりぽつりと話しはじめた。


「・・・あたしね?総司に凄く感謝してるの。貞操の危機を救って貰って、お母さんとの仲も取り持って貰った・・・それに・・・好きって気持ちも教えてくれた・・・」

「・・・」

「そんな総司を苦しめちゃったの・・・どう、償えば良いのかわからないの・・・だから・・・」

「もう・・・良いんだ。お前たちは誰も悪くない。悪いのは俺だ。俺の言葉を、お前たちがどう受け取るのか、考えなかった俺が悪いんだ。本当にごめん。」


 ・・・反省しないとな。

 俺は手を放して、シオンの上からどこうとした。 


「総司・・・総司!」

「!?」


 シオンがそのまま首に手を回して引き寄せてきた。

 そのままシオンに覆いかぶさってしまう。


「シオン!放して・・・」

「少しだけ・・・少しだけこうしていさせて・・・お願い・・・」

「・・・わかった。」


 シオンの匂いが、暖かく、柔らかい感触が、伝わって来る。

 ・・・不思議と焦りは消え、落ち着いてきた。


 もっとも、興奮は消えていないけどな。

 童貞には刺激が強すぎる・・・


「・・・総司・・・あたしね?総司の事、本当に好きよ?愛してるわ。」

「・・・シオン・・・」

「だから、本当は今すぐ抱かれたい。初めてよ。こんな気持ちになったのは。」

「・・・それは」

「言わなくていい。総司がそんな事出来ないのはわかってるもの。それに、この気持ちはおそらく、柚葉も翔子も黒絵も同じだと思うしね。だから・・・総司、あたしの事が好きになったら・・・すぐに言って。その時は遠慮しないから。」


 ・・・シオンは俺の首筋に顔を寄せ、そう言った。


「シオン・・・あいつらにも言ったが、俺はまだ、親父の死の記憶を乗り越えられていないんだ。だから、まだ、付き合うという事に消極的だし、惚れるのに時間がかかるかもしれない。お前に惚れるかどうかもわからない。もし・・・もし、見限るなら、遠慮なく言ってくれ。その時は・・・」


 俺がそこまで言いかけた時に、シオンは首筋からバッと顔をあげ、そのまま俺の頬にキスをしてきた。


「舐めないで!あたしの気持ちはそんなに軽くないわ!!あたしは絶対に総司を惚れさせる!どれだけ時間がかかってもね!」


 睨みつけるように俺に宣言するシオン。

 ・・・こいつ、本当に強いな。


「・・・わかった。覚悟しとくよ。」


 俺が、そう答えると、シオンはニヤッと笑った。

 頬を赤く染めながら。


「・・・そうしなさい。・・・それにしても・・・その・・・総司の硬いのが・・・ちょっとヤバい所に当たってるんだけど?何?当ててるのよって奴?」

「!?す、すまん!!」

「おっと。逃さないわよ?」

「!?」


 俺は思わず離れようとしたが、シオンは俺の首に手を回し、思いっきり力を入れて抱き寄せた。


「んっ!・・・こ、これは刺激が強いわね・・・はぁ・・・」

「や、や、やめろシオン・・・動かすな・・・」


 声が震える・・・や、やばい・・・


「あっ♡・・・良いじゃないの。今はあたしの時間よ?あの子達との取り決めは、自分からは頬にキスするまでと、最後まではしない事。もっとも、総司からした場合は除外だけどね・・・あん♡・・・これは、総司からしたんでしょ?」


 シオンが、俺の目を見て、自らの舌をべーっとした。


「は、離れろシオン、いや、離れるから手を離せ・・・!」

「嫌よ。だって誘惑する絶好のチャンスじゃないの。」

「頼むシオン!!」


 俺の格好は、おそらく熱を放出する事もあってか、Tシャツにボクサーパンツだけだ。

 ダイレクトに感触が伝わっていて、・・・若干湿って・・・駄目だ!!これ以上意識しちまうと・・・


「シオン・・・お願いだ・・・」

「・・・そうね。これ以上だと、総司に嫌われそうだし、放してあげるわ。」


 シオンが手を首から放したので、俺は勢いよく距離を取った。


「今日はこれくらいで勘弁してあげるわ。」

「・・・お前なぁ。」

「・・・何よ。総司があんな事言うからいけないんじゃない・・・あたし本当に悲しかったのよ?」


 シオンがムスっとしてそう言う。

 

「・・・それは本当に悪かった。」

「ま、良いわ。しかし・・・なるほど・・・あんな感じなのか・・・良い参考になったわ。」


 あっけらかんとしてそう言うシオンに、思わず苦笑する。


「・・・お前は・・・本当にブレないな。」

「当たり前よ。総司を好きなのよ?引いてどうするのよ。障害があるならぶち破る。それがあたしよ。」

「・・・お前はやっぱり強いよ。」


 だから、こんなに眩しく感じるんだろうな。

 それは俺には無い強さだ。


 同じものを、柚葉や翔子、黒絵にも感じる。

 

 ・・・俺も、ちゃんと向き合わないといけないのかもな。

 自分の弱さと。


 そんな事を考えながら、この後は普通に話しをしてシオンの時間を過ごしたのだった。


 そして、シオンの時間が終わり、子供部屋に戻ってきた柚葉達に、二人共下着姿のまま話していたのを目撃され、激怒した柚葉達に正座させられ、説教される事となった。


 ・・・勿論、俺だけ。

 なんで俺だけ?

 


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る