第58話 ブラッディ・クロス

「はい、そーちゃん、かゆい所はありませんか〜?」

「・・・ありません。」

「よいしょ、よいしょ・・・先輩、背中大きいですね・・・それに硬い・・・たくましくて素敵・・・」

「・・・普通です。それと、言い方考えてね?」

「こうやって身体を洗ってあげると、小さな頃に、父上の背中を流したのを思い出すなぁ。」

「・・・お前が今洗ってるの、俺の胸や腹だからな?」

「こんなもんかしらね・・・総司?後、そこだけだから、タオルとって?」

「とれるか!!丸見えになるだろ!?」


 俺は今、全員に一部を除いて全身を洗われてる。

 それぞれ、手でやってるからこそばゆいやら恥ずかしいやら・・・なんでこいつら恥ずかしくないの?ねぇ、なんで?


「こうして見ると・・・総司スタイル良いよね・・・」

「うむ。鍛えてあって良い体だね。ワタシ好みだ。」

「うん・・・がっちりしてて・・・小さな頃、一緒にお風呂に入った時とは違うね・・・」


 ・・・柚葉、そりゃ、幼稚園くらいの頃と一緒にされてもなぁ。

 シオンはまじまじと見すぎ。

 黒絵は好みとか言うな。


「・・・総司先輩、ちょっと背中舐めてみても良いですか?」

「・・・良いわけないだろ。」


 翔子は、もうちょっと欲望を隠そうよ。


「さて、それでは湯船に入るとするか。ああ、心配はいらないぞ?我々は、水着を着る前に、軽く洗ってあるからね。」

「・・・入らなきゃダメか?」

「「「「ダメ」」」」

「はぁ・・・分かったよ・・・」


 俺は、タオルを押さえつけながら立ち上がり、湯船に向かう。

 つ〜か・・・これ、後ろ、ケツ丸見えなんじゃないか?


「じゃあ入るわね〜?」


 ・・・近い!

 こいつら、俺を囲む様に、めっちゃ近くにいる。


「なぁ・・・もうちょっと離れない?」

「良いじゃないの。」

「そうだよ。私達は別に嫌じゃないよ?」

「そうです。むしろ、この方が良いです。」


 ダメか・・・

 ・・・しかし、こんな事になるとはな・・・


「なぁ、黒絵、これってお前が言い出したのか?」


 俺が、一番計画を組んでいた可能性が高い黒絵にそう問いかけると、黒絵は、微妙に納得がいっていなさそうな顔をした。


「・・・違う。これはな?母上達が計画したのだよ。」

「・・・何?」


 母さん達が?

 一体何を考えてんだ?

 年頃の娘達を混浴させるなんて。


「どうも、母上はソウをかなり気に入ったようだ。本気で婿にしようとしている。まぁ、それはワタシも同じだがね。」

「あ、それはうちも同じだよ?お母さんもお父さんも、そーちゃんのこと大好きだから。」

「私の家も同じですね。お母さんは本格的に協力してくれるみたいです・・・だから先輩?今度家に遊びに着て下さいね?母娘でサービスするので。」

「・・・」


 翔子の家に行くのは危険だな・・・気づいたら食われてそうだ。

 にしても・・・どういう事だ?

 正直、柚葉の家や、翔子の家はまだわかる。

 昔から俺の事を知っているからな。

 

 黒絵の家は・・・むしろ無礼を働いたイメージしかない。

 にも関わらず、この扱い・・・せん。


「ああ、そうだ。総司は知っているとして、みんなにも言っとかなきゃね。あのね?私もお母さんと和解したから。総司のおかげでね。」

「え?そうなの?良かったね!」

「良かったです・・・にしても、総司先輩のおかげってどういう事ですか?」

「ああ、気になるな。それと、詩音、良かったな。だが、何かあればまた相談すると良い。いつでも、力になるからね。」

「ありがとう黒絵。あのね?・・・」


 シオンが詳細の説明をしている。

 ・・・まずい。

 少しのぼせて来た・・・


「は〜・・・そうだったんだぁ・・・」

「誤解を解けて良かったです。」

「うん。その通りだね。にしても・・・こう言ってはなんだが・・・詩音の父親は、どうしようも無いな。言い方が悪くて申し訳ないが・・・」

「良いのよ黒絵。私もそう思うし。それで、お母さんも総司の事気に入ったみたいなの。だから、頑張れって応援してくれたんだ!」


 そうか・・・母娘仲が良好そうで良かったな・・・ってヤバい。


「す、すまん。俺、そろそろ限界かもしれん・・・」

「あ、そうよね。もうかなり入ってるもんね?」

「ああ・・・悪いが先に出る。」


 俺はそう言って立ち上がる。

 そして、一歩踏み出そうとした所で、本格的にくらりときて・・・


「危ない!ソウ!!」


 黒絵が俺を抱きとめた。

 

「すまん・・・黒絵・・・」

「「「「・・・」」」」


 ん?

 なんで無言?


「こ、こ、これが・・・総司の・・・」

「ち、小さな頃と全然違う・・・」

「・・・はぁ・・・はぁ・・・ごくりっ。そ〜っと・・・」

「こら!翔子!!手を伸ばすな!!・・・そ、それにしても・・・随分と・・・その・・・立派なのだ・・・な?」


 ・・・なんの事・・・は!?

 ま、まさか・・・


「うわああああああぁぁぁぁ!?」


 俺は飛び起きようとして・・・またふらついてしまい・・・


「総司!?きゃ!?」

「そーちゃん!!うひゃ!?」

「!?ひゃん!?」

「あ♡そ、ソウ・・・こ、こんな所で・・・」


 全員を巻き込んで盛大にすっ転んだ。

 

 仰向けの状態で、なんか顔が柔らかいものに包まれて、両腕は・・・すべすべした柔らかい何かを掴んでおり・・・大事な所は暖かい何かの感触が・・・


「「「「!?」」」」


 朦朧とする意識の中、目を開けると、そこには肌色が。

 顔を包まれている。

 これ・・・まさか・・・


「あ・・・そ、ソウ・・・なんて大胆な・・・♡」


 黒絵のビキニがズレてじかに顔を包まれ、


「あ・・・はぁ・・・そ、総司・・・ん♡・・・どこ掴んで・・・」

「そ、そうです・・・せん、先輩ったら・・・こんな所でだなんて♡・・・はう・・・」


 両手はシオンと翔子のビキニの下に潜りこみ鷲掴み、


「そそそそーちゃん・・・なんか硬い感触が・・・だ、だ、だんだん大きく・・・」


 某所に押し付けられた柚葉の凶悪な胸部装甲を、押し上げている、という凄まじいことになっている事に気が付き・・・匂いや視覚、感触が・・・


 ブッ!!


「きゃあ!?総司!?」

「いかん!!思い切り鼻血を吹き出したぞ!?」

「そーちゃん!?大丈夫!?そーちゃん!?」

「柚ちゃん揺らしたらだめ!!そこの床に寝かせましょう!?」


 そんな声を聞きながら視界が暗転していく。

 

 最後に見えたのは・・・血に染まった俺のタオルだった・・・

 がくっ・・・

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