第57話 束の間の休息・・・にならず!

 時間は午後6時だ。

 最後にシオンの時間を残し、先に夕飯となった。


 今日の夕飯はカレーらしい。

 ・・・上手い!


 舌鼓を打っていると、母さんが、俺に話かけてきた。


「総司?今日は疲れたでしょ?ご飯食べ終わったら、あなたが最初にお風呂に入りなさい?」

「ん?俺は最後でも良いぞ?シオン達や母さんや、お袋さん達だって疲れてるだろ?」


 まぁ、気を使わないとな。

 男は俺だけだし。

 レディーファーストってやつだ。


 しかし、そんな俺の気遣いをぶち壊した奴がいた!!


「総司・・・そんな事を言って、お母さんはともかく、詩音さんや柚葉ちゃん達、柚葉ちゃんのお母さん方の残り湯を堪能するつもりなのよね?お母さんわかってるわ!」

「お兄ちゃんキモい!!」


 母さんのとんでもない濡れ衣に、瑞希が気持ち悪そうに両手をさすりながら俺から距離を取る。


「アホか!!そんなわけねーだろ!!」


 あんた母親だろ!?

 何言ってくれちゃってるの!?


「そーちゃん・・・こんなおばさんを女として見て・・・性欲強いのね。」

「仕方がないですね。私が背中流してあげましょうか?」

「総司くん?男の子ね・・・」

「違います!!そんな事考えていませんよ!?」


 柚葉達のお袋さん達もそんな事言いやがった!!

 あ〜!!もう!!こっちは気を使ったってのに!!


「わかった!わかりましたよ!!最初にお風呂貰いますから!!!」

「あらそう?黒絵さんのお母さんの話では、ここは道場の合宿でも使用するから、

お風呂も大きめなんですって。複数人で入れるから、時間はそんなに気にしなくて良いそうよ。良かったわね?」

「は〜・・・まぁ、ありがたく、のんびりさせて貰うよ。」


 やれやれ・・・全然気が休まらん・・・せめて風呂くらいはゆっくりさせて貰うとするか・・・



side黒絵


「さて・・・あなた達、黒絵から話は聞いていますね?」


 総司が入浴準備に行った後、母上がワタシ達を見て、そんな事を言った。


「あの・・・本当に良いのでしょうか?」


 詩音がそう母上達に言う。

 気持ちはわかる。

 何せ・・・これを提案したのは、母上達なのだ。


「ええ、詩音さん。私は総司の母親として、許可するわ。」

「私もよ。柚葉、しっかりとそーちゃんにアピールするのよ?」

「翔子。頑張るのよ?あなたが、妹のような相手からの脱却を図る駄目押しです。良いわね?」


 ・・・信じられん。

 普通の親であれば、絶対に反対すると思うのだが・・・

 そして一番、信じられんのは・・・


「黒絵。あなたは一番先輩・・・つまり大人です。大人の余裕を見せつけなさい。・・・存外、それは効くものです。」


 厳格な母上まで許可を出すとは。

 それに・・・何か実感が籠もっているのか、苦々しげな表情をしている。

 ・・・珍しい事もあるものだ。

 昔に何かあったのだろうか?


 まぁ、良い。

 存分に利用させて頂こう。


「柚ちゃん達頑張ってね!!」

「ええ!」「「うん!」」「ああ!」


 瑞希ちゃんの言葉に、力強く返事をする。

 我々は頷きあって、決意をして準備を開始する。

 くくく・・・ソウの驚く顔が目に浮かぶな!!





side総司


「はぁ〜・・・良いなあコレ・・・落ち着くわ〜・・・」


 大の字になり、湯船に浸かる。

 母さんから聞いた通り、余裕で足が伸ばせるくらいこの風呂は広い。

 これなら、シオン達が全員で入っても大丈夫だろうな。


 申し訳ないがゆっくりさせて貰おう。

 それにしても・・・今日は色々話が出来て良かったかもしれん。

 まだ、シオンの時間が残ってはいるがな。


 それぞれの想いは良く分かった。

 シオンもおそらく、そんな話がメインになるだろうな・・・

 

 後は・・・俺の気持ちがどこにあるのか、だ。

 その為にも・・・強くならなきゃな。


 父さんの死の記憶を、本当の意味で乗り越えられるくらいに。




 そんな風に考えていた時だった。

 

 カラカラというドアがスライドする音がした。

 なんだろう?

 もしかして、瑞希か母さんが用事があったのかな?


 まぁ、良いか。

 用事があるなら話しかけてくるだろう。


「総司〜?入るわよ〜?」

「そーちゃんお背中流してあげるね〜?」

「違います!総司先輩の背中を流すのは私です!柚ちゃんじゃありません!!」

「そうか。ならばワタシは前を流そう。」

「「「それはダメ!!」」」


 え?

 ・・・シオン達・・・だと・・・?

 みんな水着を着てる・・・スタイル良いから似合ってんな・・・

 目のやりどころに困るなこれ・・・って、


「・・・は?・・・・・・はぁぁぁぁぁぁぁ!?」


 おい!!

 何入って来てるんだ!?

 って・・・水着!?

 なんでそんなものを・・・あ!?母さんが言ってたの・・・まさかこの為!?

 嘘だろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?


「お、お前ら!!なんで入ってきた!!!!!」


 咄嗟に、タオルを湯船に入れ、と、あるところを隠す。


「だって、時間が勿体ないじゃない。」

「そういう問題か!?」

「大丈夫だよそーちゃん!お母さん達の許可は取ったから!!」

「そういう問題でもない!!というか許可出したの!?俺の許可は!?ねぇ!?俺の許可は!?」

「総司先輩、おちついて下さい。声が反響してうるさいです。近所迷惑になります。」

「落ちるけるかぁぁぁぁ!!それにご近所さんはいね〜だろ〜が!!!」

「まぁまぁ、ソウ。それよりどうだ?ワタシの水着は。ほとんど人に見せた事が無いのだぞ?レアレアだぞ?感想は無いのか?」


 すすっと近寄った黒絵が俺を見下ろしながらポージングをする。

 黒いビキニが黒絵に良く似合っている。

 こいつ・・・流石は完璧超人なんて言われるだけはあるな・・・

 

 ・・・ごくりっ。


 ・・・は!?

 い、いや、そうじゃないだろ!!


「に、似合ってはいる!が、そうじゃない!!俺が言いたいのは・・・」

「黒絵ずるい!!総司!あたしは!?どう!?」

「そうだよ!そーちゃん!!私も見て!!」

「総司先輩!!私も見て下さい!!・・・なんなら触っても・・・良いですよ?」


 ぐいっと身を乗り出して詰め寄るシオン達。


 シオンは・・・青と緑のグラデーションのビキニで・・・色々装飾もあり、いかにもギャルっぽい。

 スタイルの良い、シオンには良く似合っている。


 柚葉は・・・凶悪だ。

 暴力的な胸を包む白色のビキニからは、今にも零れ落ちそうなたわわな果実があり、目を惹かれそうになる・・・こいつ、何カップなんだ?


 翔子は・・・メイド?

 メイド服を模したというのか・・・メイド柄の水着だ。

 超ミニのスカートみたいなのもついてる・・・これはこれで・・・ん”ん”!ち、違う!!そうじゃなくて!!


「みんな似合ってるよ!正直たまらん!!だが、だからこそ今は困る!!俺、こんな格好なんだぞ!?」


 何せ隠すものはタオル一枚・・・それも、濡れて透けているし、肌にも張り付く。

 ・・・まずい・・・反応しかけてる・・・


「やった!!」

「うん!似合ってるって!!」

「良かった・・・結構悩んだんです・・・だって、詩音さんも黒絵さんもスタイル良いし、柚ちゃんは反則だし・・・」


 ホッとしているシオン達。

 いや、だからね?それどころじゃないよね?


「さて、ソウ。出ろ。背中を流してやろう。」

「い、いや、俺もう洗った・・・」

「拒否するのであれば、このまま抱きつく。」

「分かった!!出る!出るから!!」


 ・・・どうなるんだこれ・・・

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