第6章 旅行

第50話 聞いてない!!

「総司〜?準備出来たかしら〜?」

「ああ、もう大丈夫だぞ?」

「じゃあ、荷物の積み込みやっちゃって。車の中列に入れといてくれれば良いから。荷物は玄関横においてあるカバン全部ね!」

「あいよ〜・・・って、三人分にしては随分多いな・・・それに中列?なんで?」

「女性は荷物が多くなるのよ!良いから早く!!」

「へいへい。わかりましたよっと。」


 現在、旅行当日の朝だ。

 未だに目的地は聞いていない。

 一応、水着を持ってくる様に言われたんだが・・・まだ、時期的に早すぎないか?

 どこかの、温水プールにでも行くのだろうか・・・まぁ良いか。

 深く考えても仕方がない。

 母さんは、言い出したら聞かないからな。


 俺は、母さんの指示で、荷物の積み込みをする。

 ・・・やっぱり、結構荷物あるなぁ・・・ん?こんなカバン見たこと無いが・・・母さんか瑞希が新しく新調したのか?

 にしては、新品には見えないが・・・まぁ良いか。

 考えても仕方がない。

 さっさと、終わらせよう。


 荷物の積み込みが終わると、母さんと瑞希が玄関ドアを開けた。


「終わったかしら?」

「ああ、置いてあったのは、な。」

「じゃあ良いわ。瑞希は助手席、総司は、運転席側の一番後ろね?ちゃんとシートベルト締めるのよ?」


 えらく細かいなぁ・・・


「シートベルトは良いが・・・俺が助手席の方が、補助が出来て良くないか?」

「何よお兄ちゃん!私には出来ないっての!?」

「い、嫌、そういう訳では無いが・・・」

「ほら、総司?瑞希もそう言ってるし、早く乗って!」

「・・・わかったよ。」


 ちなみに、ウチの車はワンボックスだ。

 三列シートである。

 後部・・・三列目にはドアが無いんだが・・・何故三人しか居ないのに一人で一番後ろに?


「そこなら、着くまで寝ていられるでしょ?向こうに着いたら、力仕事は全部任せるんだから、休める時に休んでおきなさい?」

 

 ・・・なるほど。

 ん?俺今考えてる事、口に出してたか?

 ・・・相変わらず、勘がいいな母さんは。

 というか力仕事があるのか?

 一体どこに行くんだ?


 ・・・まぁ良いか。

 疑問は尽きないが、指示に従おう。

 どうせ教えてくれないし、考えるだけ無駄だしな。




 俺は一番後ろの奥に乗り込み、シートベルトを着用する。

 そして、運転席に母さんが乗り込み、助手席に瑞希が乗り込み、後部座席にシオンが乗り込み・・・ん?

 何か違和感が・・・


「おはよ総司!今日からよろしくね!!」


 シオンは俺の隣に座って挨拶してくる。

 うん、元気な挨拶だな。


「ああ、おは・・・はぁ!?な、なんでシオンが居るんだ!?」


 そうだ!

 何故シオンがいる!?

 あまりにも自然で止められなかった!!


「それじゃ出発進行!!」

「「おー!!」」

「待て!母さん!!説明を!!きちんと説明を!!」

 

 母さんの号令と、瑞希とシオンの返事で、車が発信する。

 俺が一人であたふたしていると、シオンが俺を見てニヤッと笑った。


「総司。」

「な、なんだ!?というか、何故シオンが!?俺に説明を・・・」

「これで・・・逃げられない、ね?」

「!?」


 まさか・・・まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか、まさか!?


 俺・・・められてる!?


 俺は急いでバックミラー越しに母さんの顔を見る。

 その口元は・・・弧月に開いていた。


 それを見た瞬間、フラッシュバックする記憶。

 あれは、母さんが昨日誰かと電話をした後、ご機嫌だなと問いかけた時の事だ。


『ええ、ちょっとね。さあ総司?風邪引かないようにね?・・・明日から、旅行楽しみましょう?、ね?』

『あ、ああ。そうだな。しっかりと息抜きさせて貰おうかな。久しぶりの家族水入らず・・・しがらみを忘れさせて貰うよ。』

『ええ、そうね・・・ボソッ』


 この時の母さんが何か言っていた。

 深く考えなかったが、そもそも、、なんておかしい!!

 何故疑問に思わなかった!?


 それにボソッと言ったあの言葉!

 あの時はよく考えなかったが、口の動き方と、薄っすらと聞こえて来た声から推測すると、おそらく!!


『ええ、そうね・・・そんな事ができるなら、ね。』


 こうだ!

 やっぱり!!

 嵌められたーーーーー!!!

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