第51話 ネタバラシ

「もう・・・総司、いつまで拗ねてるのよ。それとも・・・私が来たら・・・嫌?」

「ぐっ・・・!!」


 シオンに身を乗り出され、上目遣いをされる・・・くぅ!?あざとい!!


 ・・・はぁ。

 仕方がない、か・・・どうせ、母さんも瑞希も噛んでいるんだろ。

 まぁ、シオンだけで良かったと思おう。

 全員だと、それこそ気が休まらなくなるしなぁ・・・


 旅行中、シオンに振り回されるかもしれないが・・・最近、それも悪くない・・・というか、シオンや、柚葉、翔子、黒絵が嬉しそうに、楽しそうにしているのを見るのは嫌いじゃないからな。


 考えようによっては、こんなに可愛いくて、綺麗な子と旅行に行けるのは、役得かもしれん。


 俺は、シオンの頭に手を置き、軽く撫でる。


「嫌じゃないぞ。まぁ・・・来ちまったものは仕方がない。だったら、楽しまないとな!」

「うん!ありがとう総司!!」


 シオンが、輝く様な笑顔で抱きついて来る。


「うわっ!?近い!シオン近い!!離れろ!!」

「何よ!良いじゃないちょっとくらい!あの子達も居ないんだしさ!!」

「いや!そういう問題じゃ・・・おい!瑞希!母さん!!何笑ってるんだ!!元はと言えば、内緒にしてた母さん達がだな・・・」

「いいじゃんお兄ちゃん!綺麗な女の子に抱きつかれるなんて、嬉しいだけでしょ!」

「そうよ総司?それに、もし言ってたら、あなた逃げたでしょ?」

「う・・・」

「ほらね。あなたのそういう所、本当にお父さんそっくりだわ。お父さんもね?人気があって、いつも大変そうだったの。」

「・・・」


 ・・・読まれてる。

 もし、あらかじめ知っていたら、ぶっちゃけ用事を適当に作って逃げていたかもしれん。

 だってなぁ・・・いくら仲が良くても、女の子と旅行ってのは・・・なぁ・・・そりゃ付き合ってるなら有りかもしれんが・・・この、惹かれているだけの今の状態で行くのは、不誠実な気がするし・・というか、父さんもそうだったのか・・・多分、母さんに振り回されたんだろうなぁ・・・


「にしても、同じような手で引っ掛かるなんて・・・血は争えないわね、本当に。」

「・・・」

 

 昔を懐かしむような表情を見せる母さん。

 ・・・父さん、出来れば生きて今の俺にアドバイスして欲しかった・・・こういう時どうすれば良いのかを・・・あ、でも、父さんも嵌められたみたいだから無理か。


「まぁ、この際だから、しっかりと色々と考えなさいな。別に、人を好きになるのは、悪いことでは無いのよ?詩音さんも含めて、みんな良い子じゃないの。ちゃんと気持ちを定めてあげなさい。」


 ・・・言われなくてもそうするさ。


 幼馴染みで、おそらく当時好きだった柚葉。

 同じく幼馴染みで妹みたいに見ていたのに、今は慕ってくれる可愛い後輩に思えてきた翔子。

 一時いっときは、おそらく気持ちが通じ合っていた黒絵。

 そして・・・付き合いは浅いが、その分、真正面から距離を詰めて来るシオン。


 どの子も魅力的だ。

 正直、俺には勿体ない気もする。


 だが、それではいけない。

 それは逃げだ。


 惹かれているのは認めないといけない。

 その上で・・・どうするのか、俺がどうしたいのか考えないとな。


 そんな事を考えていると、シオンが俺の頬に手を添えてきた。


「・・・な、なんだ?」

「ねぇ総司・・・今は、私だけを見てよ。ね?折角お邪魔虫は居ないんだし、さ?」


 お邪魔虫って・・・

 まぁ、言いたいことはわかる。

 そうだな・・・少しは、前向きに考えないとな。


「・・・ああ、分かったよ。少なくとも、今はシオンの事を見る。」

「ホント!?やったぁ!!それじゃあね?あのね?この間お母さんと話したんだけどさ〜・・・」


 そうして、移動中、ご機嫌なシオンと話しながら、移動する。

 ・・・まぁ、今回の旅行、シオンとの事をしっかりと見定めるか・・・












 ・・・そんな風に思っていた時もありました。


「おはようそーちゃん!!いい天気で良かったね?」

「おはようございます総司先輩。旅行楽しみましょうね?・・・色々と。私、新しい下着買ったんです。後で見せますね?二人っきりで・・・」

「やあ、ソウ。おはよう!ここはうちの別荘でな?色々案内しよう!なに、2人きりになれる秘密の部屋なんかもある。なんだったら、後で一緒に行こうじゃないか。声も漏れにくい筈だぞ?ナニをしても・・・な?」

「・・・・・・」


 ナニ・・・コレ・・・?


 どういう事!?


 目的地に到着し、目の前には大きな一軒家。

 見渡す限りに他に建物は無い山の中。

 黒絵の話では、北上家の別荘らしい・・・

 俺は、母さんを振り返る。


「ドッキリ大☆成☆功!!うふふ・・・」


 ・・・やりやがった!

 めちゃくちゃ楽しそうな顔をした母さんと瑞希、柚葉と翔子と黒絵のお袋さんがいる!!

 

 そうか・・・オレ一人だけ・・・知らなかったのか・・・

 完全にやられた・・・これ!絶対気が休まらないヤツじゃん!!!!


「総司〜?覚悟しなさいよ〜?」

「そーちゃん?私頑張るからね?」

「総司先輩、私も覚悟を決めています。何があっても・・・そう、ナニがあっても受け止めますから!!」

「ソウ。任せろ。全てワタシに委ねると良い!!お前の身体の事はよく知っている!!必ず満足させてやろうではないか!!!」 


 ・・・やっべぇこいつら・・・めっちゃやる気出し・・・

 ・・・俺、無事に乗り切れるんだろうか・・・


 俺は、これからの3日間に、不安を覚えるのだった。

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