第48話 シオンの母親
今日は旅行前日である。
俺は、
「折角だからおめかしして旅行に行きましょう?総司、お金出すから服を買っていらっしゃい?」
という、母さんからの有り難いお言葉を頂き、商店街を歩いている。
この商店街は、そこそこ栄えており、色々な所からわざわざ電車で来て買い物に来る人も多い。
また、寺もあり、老人から若者まで、しっかりと楽しめるようになっている。
特に誰かと会う予定も無いため、陰キャでは無く、普通の感じで、髪も整えている。
ぶらぶらと散策しながら、服を探していると、路地裏から争うような声が聞こえて来た。
女性2人が言い合っているようだ・・・というか、この声って・・・
そちらに足を向けると、母さん位の歳の人と・・・あれはやはりシオン?
「・・・だから放っておいてよ!干渉しないって言ってたじゃない!!」
「でも・・・流石に・・・がいる所に旅行に行くのはどうなの?」
「良いじゃない!お母さんには関係無いでしょ!?」
・・・お母さん?
あれ、シオンの母親なのか?
相手の女性をよく見て見ると、長い黒髪に、シオンに良く似た綺麗な顔立ち、それに、出る所はしっかりとしているも、スラリとしたプロポーション・・・確かにシオンの母親かもしれない。
「だから!!」
「でも・・・」
いかん、シオンは大分ヒートアップしているな。
やれやれ・・・
「ちょっと良いですか?」
「何よ!!関係ないやつは・・・って総司!?なんでここに・・・」
「・・・君は?・・・え!?・・・いや・・・まさか・・・でも・・・」
俺が声を掛けると、シオンはすぐに俺に気が付きトーンダウンし、シオンの母親も・・・ん?なんだか狼狽しているように見えるが・・・
「始めまして。僕は暮内総司と申します。シオン・・・さんのクラスメイトです。あの・・・何があったかわかりませんが、少し落ち着いて話しませんか?人目もあるので・・・」
「・・・総司・・・うん。わかった。あたしはそれで良い。」
「暮・・・内・・・。・・・嘘・・・まさか・・・」
シオンは落ち着いたな。
・・・シオンの母親は、なんだか更に驚いているように見えるが・・・
「・・・あの?」
「はっ!?い、いえ・・・んん!き、君が詩音のクラスメイトだって事はわかったわ。落ち着いて話すのもね。そうね・・・だったらあそこの喫茶店でも入りましょう。私がお金を出しますから。」
「いえ、自分で・・・」
「ごめんなさい。出させて。ただ・・・君も一緒に来てくれる?」
「・・・いや、ですが・・・」
「総司、あたしからもお願い。その方が落ち着いて話せそう。」
「・・・わかったよ。」
こうして、三人で喫茶店に入る事になった。
しかし・・・流石はシオンの母親だな。
凄い美人だ。
だが・・・シオンの話し通りであれば、浮気をしているとの事だったが・・・そんな風には見えない・・・まぁ、人は見かけによらないとは言うが・・・本当にそうだろうか?そうは思えないが・・・
「それで、何故揉めていたんです?」
「それは・・・」
「待って!お母さん、ちょっとこっちへ!」
「ちょ、ちょっと詩音!?」
・・・何故か俺から離れていくシオンとシオンの母親。
・・・俺、いらなくない?
あ、戻ってきた。
「・・・ごめん。あのね?詳しくは言えないの。今日のこれは、お母さんはあたしに干渉しないと言ったんだけど、文句を言ってきたから口論になったのよ。」
「・・・そうね。でも、流石に今回の事は行き過ぎだと思ったから・・・」
「あのね、お母さんよくそんな事を言えるわね。お父さんを裏切ってる癖に!!」
「っ!!そ、それは・・・」
「まぁ、お父さんもお母さんを裏切ってるみたいだし?あたしには関係無いけど、だったら、なおさらあたしに干渉しないで欲しいんだけど!!」
「・・・」
横目でちらりとシオンのお袋さんを見る。
お袋さんは、無言で・・・何かに耐えてる?
・・・あの表情は、後ろめたい事というより、むしろ・・・何かを伝えたいのを我慢しているように見える。
目には、シオンへの心配が溢れている。
・・・ふむ。
これはやっぱり・・・
「なぁ、シオン。ちょっと良いか?」
「ん?何、総司?」
「俺は詳しい事を知らない。だから、何故揉めているのかの詳しい所はわからない。けどな?親が子供に干渉するのは当たり前じゃ無いのか?」
「でも!」
「いや、わかるぞ?お前の言いたいことも。だがな?お前のお袋さんの場合、おそらく心配だから干渉してるんじゃ無いのか?」
「そ、それは・・・」
「・・・」
シオンは
「何が原因か知らないけど、それでも、お前のお袋さんは生きて目の前にいるんだ。それは話が出来るって事だ。喧嘩腰になるんじゃ無くて、心配を取り除くように説得するのも、子供の役目だと思うぞ?もっとも、聞く耳を持たない親なら、それも仕方がないが・・・俺が見る限り、お前のお袋さんはそんな風には見えないぞ。」
「・・・」
シオンは無言で俯く。
まったく・・・
俺はシオンの頭を撫でる。
「あ・・・」
「なぁ?シオン?俺は、お前が聡明なのを知っている。それに、度胸があって、しっかりとしているのもだ。そんなお前なら、ちゃんと物事を見える筈だ。そのまま良く聞いとけ。お袋さん、一つだけ正直に答えて下さい。」
「・・・何かしら?」
「あなたは、浮気、していませんよね?」
「!?」
「・・・」
俺の言葉に驚愕するシオンと、真剣に俺を見るお袋さん。
「・・・何故、そう思うのかしら?」
「・・・まぁ、大きくは勘ですが、もし、シオンの言う通り、あなたが浮気をしていて、シオンに興味が無いのであれば、そもそも心配して干渉するわけがない。」
「・・・」
「先程から見させて頂いているあなたは、とても心配そうだ。もし、ただ難癖つけたくて干渉したのであれば、もっと喧嘩腰だった筈です。違いますか?」
「・・・そうね。」
「そんなに子供を想える人です。だから、やはり浮気をしていないのではと思いました。答えて頂けますか?」
「・・・そうね。私は浮気なんてしていないわ。」
「お母さん!?え!?で、でも・・・あの男の人といつも出て行くじゃない!!すっごく親しげに!!それに、浮気みたいな事を自分で言って・・・」
そして、何かを諦めたような顔をするお袋さん。
「あの男性はね?私の実家に事情があって養子に来た、義理の兄なの・・・そして、あなたのお父さんの、本当の兄弟でもあるの。」
「!?」
「私は、いつも夫であるあの人の会社で社長補佐として舵取りをしているのよ。そして、あなたが浮気相手と思っていた人は、そこの専務よ。そんな関係じゃないわ。」
「じゃ、じゃあなんで浮気相手なんて嘘を・・・」
そこで、お袋さんは目を閉じ、俯いて話始めた。
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