第47話 突然の提案

「総司、瑞希、ゴールデンウィーク空けておいてね?旅行に行くから。」

「へ?」

「は?」


 母親達の襲来から、少したったある日、突然母さんがそんな事を言い始めた。

 なんでいきなり旅行に? 


「ゴールデンウィークって・・・もう、週末じゃないか・・・まぁ、空いてるけど。何日だ?」

「5月の4日、5日、6日の3日間よ。良いかしら?」

「どこへ行くんだ?」

「な・い・しょ♡」

「・・・」


 母さん・・・母さんは若く見えるし、綺麗だけど歳をだな・・・うお!?


「・・・」

 

 母さんが笑顔で俺を見ている・・・無言で。


「・・・」


 なんかゾクッとした。

 母さんがまだ俺を無言の笑顔で・・・睨んでいる。

 なんて器用な真似を・・・

 わかった!わかったから!!

 これ以上、歳の事を考えるのはやめる!!


「わかった。じゃあ、泊まりの準備だけしとく。どうやって行くんだ?」

「車で行くわ。瑞希も良いかしら?」

「良いよ〜!旅行なんて久しぶりだね!楽しみ〜!!」


 ふむ・・・まぁ、最近色々あって気疲れもしていたからな。

 良い息抜きになるだろう。

 

 俺にあった色々。

 それは・・・学校生活に伴うものだった。

 

 あれから、俺の学校生活は激変した・・・という事も無いが、やはり、登下校、昼放課などに押しかけてくる柚葉、翔子、黒絵、それと教室でべったりのシオンのおかげ(?)で、俺はかなり目立ってしまっていた。

 今まで頑張って陰キャイメージを作り上げていたのに・・・


 それでも俺は諦めない!

 話しかけられてもおどおどして話し、猫背、ボサ髪、メガネと未だ継続している。

 

 ・・・だが、そんな俺を見て、光彦の野郎が大笑いしながら、


「お前なぁ、もう、それは誤魔化せて無いぞ?今、改めて見ると、違和感あるわ!」


 というので愕然としてしまう。

 そして、今までとは違い、


「光彦くんおはよう!暮内くんもおはよう!!」


 という様に、光彦に声をかける女の子達まで、俺に挨拶するようになってしまった。

 ・・・どうしようこれ?


 俺は対策を考えるも、残念ながら良案は浮かばない。

 日々、男子生徒からの怨嗟と・・・若干の羨望の眼差しと、女子生徒からの・・・興味深そうな視線に晒され、参っていた。

 

 そんなこんなで、ストレスが溜まり、かと言って、誰が悪いわけでも無く・・・というか、元々俺の我儘で始めた事だから、バラしたシオン達に当たれる訳も無く、今日に至る、という訳だ。


 今度の旅行で、少しは気晴らしになると良いなぁ・・・



「と、言うわけで、僕は今度のゴールデンウィークは用事があるんだよ。」


 そんな風に、昼飯中にシオン達に打ち明ける。

 教室だから、言葉使いは丁寧に!

 ・・・無駄な努力って言うな!!


 ちなみにこれは、もし遊ぶつもりだったら、早めに言っておかないと、と思ったからだ。


 文句を言われるかな・・・なんて思っていたのだが、


「・・・へ〜。そうなんだ。まぁ、あたしも用事あるから良いけど。」


 と、シオンが。


「・・・私もちょっとお母さんと旅行に行くから、仕方がないね。」


 と、柚葉が。


「・・・ウチもです。お母さんと出かける事になってます。」


 と、翔子が。


「・・・ふむ。奇遇だね。ワタシの家もそうなのだよ。母上と共に旅行に行くのさ。別荘までね。・・・にしても、ソウのその言葉使いは慣れないな。」


 と、黒絵が。

 ・・・言葉使いはほっとけ!


 しかし・・・なんだ。

 全員予定があったのか。

 なら、こんなに申し訳ない気分にならなくても良いか!

 ・・・それに、正直、気疲れから開放されそうだ!

 うん!テンション上がってきた!!


「そうなんだ。なら仕方がないね!じゃあ、休み明けに、お互いに土産話でもしようじゃないか!」


 俺がニコニコとそう言うと・・・ん?こいつらも笑顔だが・・・なんか黒い感じが・・・


「ええ、そうね・・・楽しみだわ。」

「そうだね・・・楽しみだなぁ旅行。」

「そうですね・・・今から待ち遠しいです。」

「その通りだな・・・心の底から待ち遠しいよ・・・なぁみんな?」

「「「うん。」」」


 ・・・なんだろう?

 凄く嫌な予感が・・・


 ・・・そんで、なんでこいつら笑顔で睨み合ってるんだ?

 怖いんだけど?


 背筋にゾクゾクしたモノを感じながら食事を進めるのだった・・・いや、本当に何これ?

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