第46話 宝物を壊された後

「もう!なんでそんなにショックを受けてるのよ!!」

「そうだよそーちゃん!」

「まったくその通りですね。まぁ、どうしてもムラムラが止められないのであれば、私が受け止めて・・・」

「いやいや、翔子。それはワタシが受け持とうじゃないか。ついでに、ソウ、慰めてあげよう。こっちに来ると良い。」


 ・・・はぁ・・・この悲しみは女性にはわからんよ。

 ・・・お気に入りだったんだがなぁ・・・


「はぁ、仕方が無いわね。総司!えい!!」

「うわっ!?シ、シオン!?ふぐぅっ!?」


 いきなりシオンに顔を掴まれ、胸の谷間に挟まれた!?


「あっ!?詩音ちゃん何やってるの!?」

「そうです!離して下さい!!は〜な〜し〜て〜!!」

「むっ!?詩音!何をやってる!!」


 三人がシオンと俺を取り囲む気配がする・・・というか・・・いかん・・・匂いと感触で頭が・・・


「よしよし総司?ね?映像よりもこっちの方が良いでしょ?だからそんなに凹まないで?」

「・・・」


 頭がぼーっとする・・・

 ・・・ずっとここに居ても良いかもしれん・・・


「そーちゃん!!」

「ふえ?ぐむっ!?」


 身体を引っ張られ、シオンから離される。

 だが、すぐにまた視界が闇に包まれ・・・ついでに暖かい何かにも包まれる。


「あっ!?ちょっと柚葉!?」


 この匂いは・・・柚葉か?

 おお・・・さっきよりも包まれる感じが・・・


「ほらそーちゃん?こっちの方が落ち着くでしょ?詩音ちゃんよりも、私のほうが大きいもんね?」

「なんですって!?この〜!!柚葉〜!!」


 ・・・ああ、ここに住みたい。


「もう!柚ちゃんも離しなさい!!総司先輩!!こっちです!!」

「おわっ!?ぎゅっ!?」


 柚葉から引き剥がされると、そのまま引っ張られ、ベッドに倒れ込むと、何かに顔を挟まれた。

 さっきとは違いすべすべした感じ・・・匂いは翔子だ・・・ここは?


「私は柚ちゃんや詩音さん程、胸は大きくありませんが、ここなら関係ありませんよね?ほら?どうですか?」

 

 翔子の声が上の方から聞こえる・・・すべすべした何かを触ると・・・足?太ももかこれ?


「あん♡総司先輩触り方がいやらしいです♡」

「ふぇ?ふ、ふまん!!」

「あ♡しゃべっちゃ駄目です・・・」


 口が太ももに押し付けられているので上手く喋れない。

 

「こら!翔子!はしたないぞ!!そっちがその気なら、ワタシはこうだ!!」

「うお!?な、なんだ!?」


 凄まじい力で無理やり引っ張られ、頭を外されると、そのまま上から何かを被せられた。

 目の前には・・・肌色?


「・・・な、なんだこれ?」

「あ♡ソ、ソウ・・・声が響くじゃないか・・・」


 布地の上から頭を押さえられ、肌色に押し付けられる。

 黒絵の匂いに包まれて・・・ん?胴体にも何か巻き付いてるような・・・


「ちょ!?黒絵やりすぎよ!!」

「そ、そうだよ!!服の中に頭突っ込ませるなんて!!」

「う〜!!凄い力です!!この足、総司先輩の胴体から離れません!!」

「ふ、ふ、ふ、ワタシを物理でどうにか出来るはずも無い。このまま逆転させて貰おうか!!」

「ふがっ!!ふがっ!?」

「ん♡ソウ・・・興奮してるのか?」


 そんな声が聞こえる。

 だが、何も考えられない・・・というか強く押し付けられて息が・・・


「ちょ、ちょっと黒絵!??総司がビクンビクンしてるんだけど!?」

「もしかして息が吸えてないんじゃ!?」

「く、黒絵さん!!早く離して!!」

「はぁ・・・はぁ・・・ソウ・・・♡」

「黒絵!!興奮してる場合じゃないって!!早く離さないと総司が死んじゃう!!」


 ・・・何か聞こえるが・・・だんだん視界が真っ白に・・・







 俺の目の前には4人が正座している。

 それぞれシュンとして俯いている。


「あのなぁ、気持ちは嬉しいがめちゃくちゃしすぎだ。」

「「「「ごめんなさい」」」」


 最初はかなり怒っていたが、しょんぼりしているこいつらを見ていると、怒る気も失せてくる。

 はぁ、仕方が無い、か・・・


「あんまり無茶はやめてくれ。頼むから。」

「「「「はい。」」」」

「よし・・・さて、時間も遅くなって来たし、そろそろ下に降りよう。」


 俺達はみんなで下に降りる。


「あら?楽しそうだったわね?」

「ええ、ここまで聞こえて来たわ。色々。」

「ふふふ。総司くん大変ね?」

「そうね。まぁ頑張りなさいな、男の子。」


 母さん達が話しかけてきた。

 ・・・なんだか随分仲が良さそうに見えるな。

 この短時間に何を話したんだ?


「さて、それじゃあおいとましようかしら。柚葉?帰りましょう?」

「そうね。翔子も帰るわよ?」

「黒絵。帰るわよ。ご挨拶なさい?」


 そんな母親達の言葉に、


「・・・う〜ん・・・仕方がないね。そーちゃんまた明日。そーちゃんママ、また来ますね?お邪魔しました。」

「お母さん、今日、総司先輩を泊めようと思ってたのですが・・・また今度にしましょう。阻止されそうですし。総司先輩、お義母様、お邪魔しました。」

「ソウ、お母様、お邪魔しました。また伺います。ソウはまた明日な?」


 そう言って、家を出ようとする・・・時に気がついた。


「じゃあね〜!!」


 何故シオンがこちら側に?


「・・・ちょっと待って。なんで詩音ちゃんが見送る方なのかな?かな?」

「そうです・・・詩音さんも帰りますよ?ほら!早く!!」

「うむ。詩音、早く家を出るんだ。」

「え?あたしまだ帰らないわよ?」


 ・・・何言ってんだこいつ?


「駄目です!詩音さんも帰るんです!!」

「そうだよ!ズルいよ!!」

「ああ、そうだね。詩音!迷惑をかけちゃ駄目だろう!?」


 焦った様子でそう叫ぶ三人。

 

「え?でも、総司、嬉しいわよね?さっきの続きが出来るかもよ?」


 ・・・まったく、こいつは・・・


「・・・まぁ、シオンも危なくなる時間だから帰れ。送ってくから。」

「え〜?・・・まぁ、仕方が無いか。」


 口を尖らせてそう言うシオン。

 

 こうして、突発的な来襲イベントは幕を閉じた。

 にしても・・・疲れた・・・

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