第43話 一難去ってまた一難

 なんとか、部屋まで逃げて来られた。

 お袋さん達は、母さんと瑞希と談笑しているようだ。


 俺が部屋に逃げると、シオン達もついてきた。


 ・・・自室にいるのに落ち着けない。

 ・・・もう、俺、今日疲れてるんだよ・・・勘弁してくれ・・・


「さて・・・黒絵、頼むわね。」

「ああ、任せろ。それはワタシが適任だろうからな。」


 ん?

 なんの事だ?


 ・・・おい、黒絵、何故俺を羽交い締めにする?

 ・・・翔子、シオン、何故俺をベッドぎわに押していく?


「なぁ・・・なんで?」


 拘束された俺が問いかける。


「「「「何が?」」」」


 以上が、先に言った特殊な状況である。

 俺の疑問には、まったく答える気は無いようだ。

 何が目的だ?

 

 ん?・・・柚葉、何故お前は本棚に近づいて・・・ってまさか!?


「おい!柚葉!止めろ!!」

「駄目だよそーちゃん・・・そーちゃんが悪いんだよ?」

「黒絵!離せ!!」


 ぐっ!?

 絶妙な力加減で外せない!?

 それに・・・背中に!背中にあの感触が!!

 やっぱりこいつ結構あるな・・・て違う!!

 くそっ!!力が抜ける!?


「ソウ、往生際が悪いぞ?そもそも、お前がちゃんと教えてくれていれば、このような事をしなくて済んだのだ。それに・・・役得、だろう?ふ〜♡」

「うひゃ!?耳に息を吹きかけるなぁ!!うあっ!?」


 シオンが俺の服の下に手を這わせて来やがった!!


「そうよ総司。これはあなたが悪いの。大人しくしていなさい?」

「シオン!?止めろ!!どこ触ってんだお前!!」

「どこって・・・やっぱり良い腹筋してるわね・・・」

「腹筋は良い!だが、それ以上、下に手を動かすなぁ!!」


 そんな時、じたばたした俺の手が、翔子の胸に当たってしまった。


「・・・あん♡総司先輩ったら・・・もう!そういうのは、2人だけの時にして下さい!・・・あ、お母さんと一緒の時も可です。」

「うっ!?す、すまん翔子!わざとじゃなくてだな・・・って、そうじゃなくてだな!?」


 ・・・くそ!

 連携とったこいつらが、こんなに厄介だとは!!

 下手に動くと大惨事になりかねない・・・


「あった!!」

「しまった!?」


 柚葉が紙袋を本棚の裏から取り出した。

 満面の笑みだ。


「柚葉!やめろ!頼む!後生だ!!」

「ふっふっふ・・・そーちゃん!年貢の納め時だよ!これを見られたくなければ、私と付き合って貰おう・・・」

「こら!柚葉!あんたそれはズルいわよ!!」

「そうだぞ柚葉!それは良くない!」

「柚ちゃん?そんなの駄目だよ!それなら、柚ちゃんの目の間で、総司先輩と凄いことしちゃうけど良いの!?」

「ダメー!!・・・わかったよ・・・ちぇっ。」


 くっ!?

 駄目だ・・・こいつらを説得できそうに無い・・・

 このままじゃ・・・


 なんとか抵抗しようにも、流石は黒絵。

 一向に外せる気がしない。

 それに・・・


「んっ・・・はぁ・・・ソ、ソウ。そんなに・・・あっ!動くな・・・擦れて・・・あん♡」


 やめろ〜!!

 黒絵変な声出すな!!

 こんな状態で反応したら、隠しようがないだろうが!!!!


「御開帳だよ!!」

「あっ!?」


 そんな俺を他所に、柚葉がブツを取り出す。

 愕然とする俺・・・と、興味津々でブツを見るシオン達。


「え〜っと・・・『生徒会室での情事 先輩生徒会長とのイケナイ放課後』『いつの間にこんなに!?巨乳になってた幼馴染みの誘惑』『お兄さん!わたし負けないから! 美少女な妹系後輩女子を快楽落ちに』『ギャルしかかたん。クラスメイトのギャルが陰キャの僕を襲ってくるんだが!?』・・・そーちゃん・・・これ・・・」


 真っ赤になっている柚葉、シオン、翔子・・・顔が見えないが多分黒絵も。

 全員が動きを止めて、俺とブツを交互に凝視している。


 俺は・・・俺は・・・


「死なせて・・・くれ・・・」 


 真っ白に燃え尽きた。




「そーちゃん?元気だして?」

「・・・」

「そうですよ?そんなに恥ずかしい事では無いですよ?年頃の男の子はみんな持ってるのでしょう?」

「・・・」

「うむ。元気があって良いじゃないか。ソウ、気にする事はないさ。」

「・・・」


 俺は、部屋の隅で膝を抱えてうずくまっていた。

 死にたい・・・


 そんな俺を元気づける柚葉たち・・・いや、お前らのせいだからな?


 しかし、そんな俺の顔を、ぐいっと両手でつかみ無理やり上げ、目線を合わせるシオン。


「もう!総司!しっかりしなさいよ!」

「・・・だが、」

「良いじゃないの!あたしは正直嬉しかったわ!!これって意識してくれてるって事でしょ!?じゃあ、いいじゃない!!」

「・・・シオン。」


 ・・・すまない。

 これ、実はお前たちとこんな状況になる前に手に入れたものなんだ・・・


「そ、そうだよ!そーちゃんが好きなタイプになれて良かったって思うよ!」

「柚葉・・・」


 いや、柚葉違うんだ。

 俺は特別デカイのが良いわけでは・・・


「そうだな・・・ま、まぁ、ソウがどうしてもと言うのであれば、このようなシュチュエーションでするのもやぶさかでは無い。確か、生徒会室には監視カメラは無かった筈だしな。」

「黒絵・・・」


 いや、それはまずい。

 あくまでもフィクションだから許されるんだしな。


「むしろ、総司先輩が普通に性欲あって良かったと、ホッとしてます。・・・まさか、ここまで今朝言ったのと酷似しているとは思いもしませんでしたが・・・これは言えなくて当然ですよね。」

「翔子・・・」


 マジでそれな。

 あの時、かなり驚いたんだよ。

 言えるわけないんだよなぁ・・・


 しかし、そんな言葉の数々に、少し落ち着いてきた。


「・・・すまん。なんというか・・・反応に困るものを見せた。」

「いいえ、元はアタシ達が無理やり見たんだしね。ごめん。」

「ごめんねそーちゃん・・・どうしても気になったの。そーちゃんの好みが。」

「私もごめんなさい。ええ、そうです。柚ちゃんの言うとおりです。ですが・・・」

「ここまで我々に近しいものとは思いもしなかったが、まぁ、遠いよりも良いしな。それとソウ、すまなかったね。」


 お互いに謝罪し合い、見なかった事になった・・・つもりは俺だけだった。


「さて、お互いに謝ったし・・・これはもういらないわね。パッケージ見る限り、あたしの方が可愛いし。」


 は?

 

「そうだね。もうポイしちゃおう!こんなの!そーちゃんの目の毒です!!私の方が大きくて可愛いし。」


 な、なんで!?


「うむ。やはり、映像では不健全だろう。まぁ、ソウ。安心しろ。ワタシと付き合ったら、どれだけ発散したくなっても受け止めてやろう。それに、ワタシの方が綺麗だしな。」


 ま、待ってくれ!

 これ、お気に入りなんだ!!


「総司先輩?もう、こんなものは必要ありません。ムラムラしたら私がいるでしょう?生涯私が、私だけが先輩の性欲処理をします。それに私の方が可愛いでしょう?というわけで・・・」


 お前らの方が綺麗でスタイルが良いのは認める!

 だから、や、やめ・・・


「「「「えいっ!!」」」」


 バキッ!!


「ああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!?」


 俺の絶叫とDVD宝物が割れる音が室内に響き渡った。

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