第43話 苦難は続くよどこまでも

「なぁ・・・なんで?」

「「「「何が?」」」」


 今は放課後である。

 そして・・・俺の家の俺の部屋である。

 ・・・何故か、シオンと柚葉、翔子と黒絵がいる。

 そして・・・後に言うが、ちょっと特殊な状況になっている。


 どうしてこうなったのか。

 それは、放課後の教室まで遡る。




 色々と打ちひしがれた俺は、放課後、ここ最近の流れの通り、シオンと柚葉、そして翔子と帰ろうとした所だった。


「ソウ、ワタシも一緒に帰って良いかな?」


 校門前に黒絵が待っていた。

 周囲には、様子を伺うような人が何人も見える。

 ・・・こいつ、やっぱり目立つなぁ・・・


「・・・生徒会は?」

「ん?今日は休みだ。」

「・・・本当は?」

「休みという事にした。」


 あっけらかんと言う黒絵。

 

 理由を聞いてみた所、朝の件で副会長と会計の男子が急病で帰宅、残るは庶務と書紀の女の子だけの為、黒絵が急遽休みとしたようだ。


 ・・・そんなんで回るのか?


「問題無いよ。そもそも、かなり先の案件まで進めてるからな。このワタシの進捗管理に抜かりは無い。」


 ・・・流石は完璧生徒会長ってか。


「しかし、お前の家は俺の家とは逆方向だろう?」

「ああ、今日はウチの母が、ソウのお母様に挨拶に行く事になってるんだ。だから帰りは車で帰宅する事になっているよ。」

「はぁ!?なんだそりゃ!?」


 どういう事だそりゃ!?

 挨拶ってなんだ!?


「ん?先日の件で、母がお礼を言いたいと言ってな?お母様と瑞希ちゃんには伝えてあるぞ?知らなかったのか?」

「・・・初耳だ。」


 おい母さん!

 そういう事は先に言っておいてくれよ!!


「・・・やるわね黒絵・・・まさか外堀から埋めてこうっての?」

「・・・これは、私もお母さんを召喚した方が良いのかな?」

「・・・そうですね・・・確か、うちのお母さんも今日は家にいた筈・・・」

「くっ!?あたしには真似出来ないわね!!」


 柚葉と翔子の言葉にシオンが悔しがっている。

 シオンの家は、両親と不仲だからなぁ・・・って違う!なんでお袋さんを呼ぶ必要があるんだ!!


「ふふふ・・・我が北上家には迅速果敢に攻めろと言う家訓もあるのだよ!後手に回ったな三人とも!」


 黒絵が両腕を胸の前で組んで仁王立ちして不敵に笑っている。

 ・・・お前、どこの魔王なの?


 すると、柚葉と翔子が携帯をポチポチとし・・・ニヤッと笑った。

 ・・・なんか嫌な予感がする。


「おい、柚葉と翔子。お前ら何を・・・」

「さあ!帰ろう!」

「そうですね!帰りましょう。」

「おわっ!?」


 俺が問いただそうとした時、突然、柚葉と翔子に腕を引っ張られた。


「あっ!?こら!あたしの場所も作れ!!」

「む!?ズルいぞ二人共!!」

「早い者勝ちだもーん!!」

「そうです。早い者勝ちです。」


 俺を囲んでぎゃーぎゃー言い合う4人を引き連れ・・・正確には連れ去られる俺に向けられる、嫉妬の視線の嵐。

 俺はため息をつきながら、帰路につくのだった。




「ん?この車・・・」


 自宅に着くと、駐車場に見慣れない一台の車がある。

 黒塗りの国産高級車だ。


「ああ、母上、既に到着していたか。」

「「「母上?」」」


 シオンと柚葉と翔子が驚いている。


「ん?我が家では父は父上、母は母上と呼ぶよう言われている。何か変かな?」

「・・・まぁ、あまり一般的では無いな。黒絵の家は、昔ながらの武術を教える道場で、家もでかい。ある意味、お嬢様って奴なんだろう。」


 唖然としているシオン達三人に、一応補足してやる。

 三者三様に納得しているシオン達をそのままに、玄関を開け自宅に入ろうと・・・

 ん?なんか靴多くないか?

 いや、靴というか・・・パンプスというのか? 


「ただいま。」

「「「「お邪魔します」」」」


 ぞろぞろ引き連れ居間に入ると、そこには、


「あら、暮内くん、いえ、総司くん。こんにちは。お邪魔しているわね。」


 黒絵のお袋さんと、


「お久しぶりねそーちゃん。あら!格好良くなっちゃって!お邪魔してるわ。」


 柚葉のお袋さん、


「おかえりなさい、先日ぶりね総司くん。」


 翔子のお袋さんが、母さんと瑞希と一緒にお茶をしていた。


「・・・」


 なんだコレ!?

 何がどうなって・・・は!?さっきの柚葉と翔子のはもしかして!?


 俺はバッと2人を振り返ると、柚葉も翔子もバッと顔をそむけた。

 こいつら・・・確信犯だな・・・


「総司、おかえりなさい。柚葉ちゃん達もこんにちは。総司?ご挨拶くらいしなさい?」


 母さんの言葉に、動揺を抑え込む。


「こ、こんにちは。」

「「「「こんにちは」」」」


 俺の挨拶と共に、シオン達も挨拶をする。

 こいつらは、見る限り一切気後れしていない。


「そ、それで、これは一体・・・」

「ああ、先日の件で正式にお礼を言いに伺ったのよ。総司くんには迷惑をかけてしまったからね。私達の間違いを正してくれてありがとうね?黒絵に辛い思いをさせずに済んだわ。」

「私は、柚葉がおバカだったせいで、そーちゃんにも辛い思いをさせたでしょ?だからお詫びに、ね?それに、久しぶりにそーちゃんの顔も見たかったし。」

「私は、あお・・・北上さんと同じね。翔子を助けてくれた事のお礼を言いに来たのよ。あの時は本当にありがとね?」

「い、いえ・・・」


 黒絵と柚葉と翔子のお袋さん達の言葉に、どぎまぎしてしまう。

 何せ、三人が三人とも、柚葉や翔子、黒絵を成長させたような綺麗な顔立ちと、大人の女性なプロポーションだ。

 そんな風に微笑んでお礼を言われると照れてしまう。

 ・・・にしても、翔子のお袋さんは、何を言いかけたんだ?

 黒絵のお袋さんを呼ぶとき不自然だったような・・・


 そんな事を考えていると、そんな空気をぶち壊すように、瑞希があっけらかんと、とんでも無いことを言った。


「それにしても・・・みなさん、とてもお綺麗ですね!流石は柚ちゃん達のお母さんだ!見て!お兄ちゃんの顔。あれ、絶対照れてますよ?」

「「「「っ!!」」」」

「「「あら♡」」」


 その言葉に、目が釣り上がるシオン達。

 そして、嬉しそうにする母親達。


 馬鹿!瑞希!変な事言うな!!

 そんな事を言ったら・・・


「総司!あんたまさかそういう性癖が・・・」

「違う!!」


 ほら!

 シオン達が噛みついて来たじゃないか!


「・・・そーちゃん!!お母さんで変な事考えないで!!考えるなら私にして!!」

「馬鹿!お前親の前で何言ってんだ!!それに、んな事考えてねーよ!!」

「総司先輩?私と一緒になったらお母さんもついてきますよ?だから私にしましょう?」

「翔子はそのネタどこまでひっぱってんだ!!それにお袋さんの前で言うか普通!?」

「ソウ・・・まさか、お前が母上をそのような目で見ているとは・・・安心するんだ、ソウ。私も同じ様に成長する筈だ。だから、それまで我慢しろ。」

「アホか!だから違うって!確かに皆さん綺麗だとは思うがそんな目で・・・」


 俺がそこまで言った時だった。


 すっと立ち上がった三人のお袋さんが、俺に近寄って来た。


「嬉しいこと言ってくれるわね・・・総司くんは私のような歳上が良いのですか?黒絵も歳上です、良かったですね?」


 何が?何が良かったの!?


「ありがとうそーちゃん・・・まさか私の事をそんな風に見てるなんて・・・でも、ごめんなさい。私は夫を愛しているの。だから、代わりに柚葉をあげるわ。大丈夫、柚葉も私の血筋よ?大きくなるわ。」


 いや、見てませんし!

 それに大きくなるって何が・・・うん、だろうな・・・じゃなくて!!


「総司くん?翔子がああ言ってるので、お手伝いするわね。夫には・・・夫にだけは内緒にしておいてね?その分サービスするから♡」


 何言ってんの!?

 何する気!?

 いや、その顔でウィンクはめちゃドキドキするけども!!

 

 てゆーか近い!!

 みんな近すぎる!!

 もうちょっと離れてくれ!!


 母さん!?

 ケラケラ笑ってないで止めてくれよ!?

 瑞希!

 お前は何ガン見してんだ!

 なんにもしないぞ!

 てゆーか、お前のせいだからな!!


 そんな俺を見咎めて、シオン達が母親達を押しのけて群がって来た。


「総司!うちはお母さんは無理だけど、その分あたしが頑張るから!上に行くわよ!!」

「違うもん!私が頑張るんだもん!!今こそコンプレックスを武器にする時だよ!!」

「いえ、お母さんも協力してくれるようなので、東儀の力を見せる時です。総司先輩、今日は家に泊まって下さい。父は単身赴任中です。どれだけ大きな声をあげても大丈夫です。ナニをしても・・・ね?」

「ソウ、母上の言う通りだぞ?ワタシは母上似の美人となるだろう。それに、北上の女は尽くす女だ。私は自分の身体が頑丈だという自負もある。どんな行為でも受け止めて見せよう。」


 おい!!

 ちょっとお前ら落ち着けって!!

 無茶苦茶な事を言ってるぞ!?


 やめろ!

 くっつくな!!

 ひっぱるな!!

 服を脱がそうとするな〜〜〜!!!!



 や〜め〜ろ〜!!!

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