閑話 女子会(シオン、柚葉、翔子、黒絵)

「さて・・・では何から話そうかね・・・」


 現在の時刻は夕方の4時。

 少し早めに総司の家を後にし、四人で例の公園に来ている。


「あたしが気になるのは、お互いの気持ちがあったってのよ。一体どういう事?何があったって言うのよ?」

「・・・気になるかい?」

「当たり前よ!!」

「・・・正直、私も気になるかなって思ってますよ?」

「・・・私もです。」



 黒絵の言葉に、シオン、柚葉、翔子が同意した。

 黒絵は少し考えた後、全員の顔を見る。


 シオン達の顔には絶対に引かないという意思が感じられた。


「(まったく・・・ソウのやつめ。なんて罪づくりなんだ・・・今度殴ってやる!)」


 黒絵はため息をつく。

 そして、口を開いた。


「君たちは、ソウの事をどれくらい知っているんだい?」


 この黒絵の言葉に、シオンが答えた。


「あいつの正体は知ってるわ。でも、あんたとあいつの関係性がわからない。今、わかってるのは、あの時あんたが助けてくれた事だけ。」

「そうか。ふむ・・・どうしたものか・・・」


 黒絵は迷っていた。

 最悪、自分の正体がバレるのは構わないとして、これを話す事で、総司に迷惑をかけるかもしれない可能性があったからだ。

 だが・・・


「・・・て、駄目ねあたし。まず最初にしておく事があったわ。」

「ん?なんだろうか?」


 シオンの突然の言葉に、小首を傾げる黒絵。

 シオンは、柚葉と翔子を見ると、


「ほら、あんた達もでしょ!」

「え・・・?あ!そうか!そうだね!」

「・・・そうですね。大事な事でした。」


 三人がそう言って神妙な顔を作り、黒絵の前に整列した。

 

「・・・何を・・・」

「「「私達を助けて頂きありがとうございました!」」」


 大きな声で頭を下げながらお礼を言う三人。

 黒絵は、呆けたようにポカンとしていたが、徐々に顔がほころんで来ると、


「ふ、あははははは!」


 と、笑いだした。

 その笑みに揶揄する所は一切無く、本当に心の底から笑っているように、シオン達には見えた。


「・・・何がおかしいのよ。」

「ははは。いや、すまないね。そうか・・・君たちは・・・なるほどね。ソウが惹かれるのも無理は無いか。本当に良い子たちなんだね・・・うん、君たちならば大丈夫だろう。ワタシの秘密を話そう。ただし、どうせなら、ここは全員隠し事無しでいかないかい?自分とソウに何があったのかを、暴露し合おうじゃないか!」


 心底面白そうに言う黒絵に、三人は呆気に取られたが、提案自体は渡りに船だった。

 三人とも笑顔を見せる。


「いいわね・・・乗ったわ。」

「うん・・・私もまだ詩音ちゃんにも言えてなかったから、丁度いい機会だし。」

「・・・そうですね。私も気になっていました。柚ちゃんが疎遠になっていたのも、詩音さんがどうして仲良くなったのかも・・・勿論、会長さんの事も。」


 そう同意した時、黒絵がニヤッと笑って言った。


「ワタシ達はライバルだろう?だったら遠慮は無しだ。敬語は・・・まぁ西條さんは始めからしていなかったが、敬語もいらないし、私の事は黒絵で呼び捨てで良いさ。その方が対等だろう?」

「あたしも詩音でいい。黒絵って呼ぶわね。」

「じゃあ、柚葉でお願いします。私は黒絵ちゃんで。」

「・・・一番後輩の私は、中々敬語なしは難しいです・・・翔子と呼んで下さい。黒絵さん。」


 そう三人が言うと、嬉しそうに笑う黒絵。


「ああ、そうしよう。ワタシは周りから敬遠されているんだ。中々、対等な同性の者はいなかったから、少し憧れていてね。」

「・・・ああ、わかるわ・・・ねぇ黒絵?あたし達、総司が絡まない所では、友だちなのよ。あなたもどう?黒絵の気持ちは本当によくわかるし。・・・あなたが優しい良い人だってのも、よく分かるしさ。」

「・・・良いのかい?」

「私も賛成だよ。黒絵ちゃん、これからよろしくね?」

「・・・そうですね・・・私も中学の時、苦労した覚えがあります・・・今もですが。よろしくお願いします、黒絵さん。」


 その言葉に、黒絵は一瞬固まるも、その後に、三人が見惚れる程の笑みを見せた。


「・・・ありがとう。心の底から嬉しいよ・・・もう、半分以上諦めていたんだ・・・対等な同性の友人を作る事は。・・・こんなに嬉しい物なのだな・・・君たちは優しいね。」


 黒絵がそう言うと、シオンは照れくさそうにした。


「・・・こんなの普通よ・・・でも、この普通が、あたし達みたいなのには貴重なのよね・・・ま、それはそれ、総司は総司よ!わかってると思うけど、総司の事については、明確に敵だから!ライバルだからね!手加減しないわよ!!」


 そんなシオンの不敵な笑みに、同じ様に不敵な笑みを浮かべる黒絵。


「勿論だとも。詩音や柚葉、翔子が譲らないように、ワタシだって譲る気は無いさ。さて、差し当たって、暴露大会と行こうかな。誰から行こうか?」

「そうね・・・じゃああたしから行くわ。一番普通だと思うし。」

「なんですそれ。私だって普通ですよ。」

「まぁまぁ翔子ちゃん。まずは詩音ちゃんのお話しを聞こうよ。で、その後は翔子ちゃん、私、最後に黒絵ちゃんで!メインイベントだしさ?」

「おやおや・・・それは大役を仰せつかってしまったな。まぁ、良いだろう。では、詩音、頼むよ。」

「わかったわ。私が総司と出逢ったのはね?この公園で・・・」


 楽しそうに話し合う四人の乙女。

 時間を忘れて話に没頭する。


 そして、この話合いは、


「こら!お前ら何時までいるんだ!いい加減危なくなる時間だから、さっさと帰れ!!」


 買い出しに出た総司が、公園でこの4人を発見して注意するまで、続けられたと言う。


 最後の最後まで、4人は笑顔のままだった。



*******************

これで、第4章が終わり、全てのヒロインが出揃いました。

第5章からは、争奪戦が始まります。


総司の学校でのイメージがどう変わって行くのか、それと、総司を取り巻くある意外な関係が明らかにされます。


そして、そのせいで、第6章で総司はかなり苦労する事になります。

お楽しみに。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る