第6話 いつの間にか、幼馴染がめっちゃ稼いでた……
———いや、当たり前のように話しているけど。
「お前……英語何ていつできるようになったんだ?」
知っている限り、こいつに留学経験はないはずだが。
「いや~、アメコミにドハマりしてさぁ……日本で発売されてないコミック読むために必死で英語勉強して、ついでに人気バトルロワイヤル形式FPS・【
「煽るなよ……」
弱いものいじめしてたんか。なんか幼馴染の闇を見た。
「で、せっかく身に着けたからなんかに生かせないかなぁ~って思ってたところに、有名Vtuberグループの「パロライブ」が英語話せる人材募集ってしてたからさ。運命だと思って応募したってわけ」
結果、受かってVtuberデビューしたってわけか。
「お前、海外で活動してるなんて凄いんだな……」
「でへへ……」
思わず褒めてしまった。
ゲームが大好きで、こっちから誘ってやらないと決して遊びに出かけなかった内気な幼馴染が、いつの間にか大きく成長してしまったように見えた。
「これでも結構稼いでるんだよ。一回の放送で百万円稼いだこともあるし」
「百万⁉ メチャクチャ稼いでるじゃねぇか!」
「海外ってまだVtuber文化が定着してないからさ。斬新でかなり注目されてるんだよね。収入のほとんどは事務所に持っていかれて動画制作費に使われて、手取りはぐっと減るんだけど……それでもそこら辺のサラリーマンなんかよりずっと稼いでるんだから」
胸を張る
「すげぇな……学校行く必要ないじゃん。もうそれだけ稼いでるんなら」
「………そ、そうね」
あれ?
褒めたつもりだったんだが、
「で、あんた何しに来たのよ。随分久しぶりに幼馴染の部屋にノックもなしに入り込むなんて」
「ノックはしたわ。お前が放送に夢中で気が付かなかっただけだろうが。つーか部屋のドアも、玄関も開けっ放しにしてたお前が」
「アアアアアアアアアアアアアァァァァァ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~‼」
「うわっ、びっくりしたぁ……え、何で今大声出したの?」
「思い出したぁ……終わったんだぁ……あんたのせいで私のVtuber人生終わったんだ……」
両手を床に付き、四つん這いのポーズで全身で絶望を表す。
うなだれる
「あんたの声。放送にばっちり乗ってたのよ……それに、私が異常に動揺したことで彼氏が乱入したってファンのみんなに思われて炎上してんのよ……騙されたって、ビッチって、どうしてくれんのよ……! せっかく築いてきた私のネットでの地位が……こんなつまらないことで、一気に崩れ落ちるなんて……」
「えぇ……諦めんの早くない? どうとでも言えるだろ。兄ちゃんが入って来たとか」
「言っても信じてもらえるわけない……」
「いや、言ってみないとわからないだろ。英語で試しにコメント出してみろよ」
「ネットの奴ら何て所詮自分が信じたいものしか信じないのよ……一度ビッチっていじめることができるおもちゃって頭の中で変換したら。そのおもちゃを遊び飽きるまで遊びつくす。あんたはネットのこと知らないだろうから……わかんないだろうけど……もう『ふかめたる』は終わりよ。あ~ぁ……あ~ぁ……」
こいつ……!
そう言えば、メンタルは昔からメチャクチャ脆かった。少しのことで傷ついて、ずっとその傷を引きずって自分を追い込む。ネガティブスパイラルに直ぐ入るし、自分から入っていくんだから手に負えない。
「いや、馬鹿じゃねぇの。いいからとりあえず言い訳してみろって」
「無理だよ……」
せっかく英語とVtuberという人に誇れる武器を入れたっていうのに、まだ自分に自信がないのか。
「あのなぁ、確かに失敗したらそれを飽きるまでからかって遊ぶような奴はいるだろうさ。だけど、一度の失敗でみんながみんなお前から離れるわけないだろ? 気にしないでついてきてくれる奴もいる。そいつらは本当にお前のことが好きな奴らだ。お前の動画を毎回楽しみに待っててくれる奴らじゃねぇの? 知らんけど。そういう奴らは絶対要るだろ? 一部のアンチを気にして、多くのファンをないがしろにするのは、不義理って奴じゃないのか?」
「…………うん」
視線を逸らして、小さく来夢は頷いた。
何だか、その様子が俺には説教されて不貞腐れた子供の様に見えたが「ちょっと出てって、やってみるから」と告げて俺を追い出し、なにやら扉越しにパソコンをカタカタ叩く音と、英語で何か言っている声が聞こえてきた。
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