第5話 英語圏Vtuber-ふかめたる
散らかった部屋。
ベッドの上で肩を落としてiPadをいじっている
「ハァ~………」
彼女の口から深いため息が出る。
「祭りになってるよ……彼氏乱入って……! 終わった。私のVtuber人生終わった」
「V……え? お前学校行かずに何やってたの?」
「コレ!」
海外のネット掲示板だった。書いてある文字全部が英語なので何が書いてあるのかさっぱり分からんが、「Fuck!」「shit!」と言った俺でも知っているような下品な言葉が並んでいるので、あまり気分のいい内容じゃなさそうだ。
その掲示板には画像が張られており、先ほどモニターに映っていたサイバースーツを着たCGキャラクターが映っていた。
名前は……FUKA―Metal。
「フカメタ……?」
「『ふかめたる』! 私が魂やってるVtuberキャラクター!」
「『ふかめたる』? Vtuber? ああ、何か聞いたことがある。今ってそういうのはやってるんだろ? アニメとかゲームのキャラクターの皮被って歌うたったり、踊ったり」
「言い方ァ!」
来夢からドロップキックが飛んできた。
「グハッ……!」
思いっきり腹に刺さったが、体重がメチャクチャ軽かったのでそこまで痛くはなかった。腹にたまっていた空気は全部出たが。
「いきなり何しやがる!」
「視聴者さんを騙しているみたいな言い方しないで! 私たちは最ッ高に萌えられるキャラクターを創造して提供しているんだから! 確かに声を出したり動きをつけたりするのはこの私、橘来夢だけど、バーチャルの世界にはちゃんといるの! 『ふかめたる』ちゃんが!」
iPadに映っているサイバーな美少女キャラの画像をバンバンと叩く。
「そうかよ。で、ようはあれだろ? 学校に行かずにお前はそのふかめたるちゃんになって金稼ぎしようとしてたってわけだろ? だけど、そんなに歌が上手いわけでも運動神経がいいわけじゃないお前が儲かるようには」
「それだけじゃないわよ! ゲーム実況で人気になるVtuberだっているし、ユウちゃんにはどうせわかんないわよ!」
ユウちゃん。
久しぶりに呼ばれた。
子供っぽいから中学校に上がって以来呼ばれたことがなかった。
何だか照れる。
「……で、ずっと気になってたんだけど」
「何?」
「さっきから出してる画面、その『ふかめたる』とかいうキャラクターのことを語り合ってる掲示板なんだよな」
「見ればわかるでしょ」
「なんで英語なん?」
ずっと気になっていた。
さっきチラッと見てたモニターに映ったコメント欄も、ほとんど……いや、全部英語だった。
問われた来夢はこともなげに、
「そりゃ私、英語圏で活動してるVtuberだし」
「へ?」
英語圏?
「Vtuberって、個人で活動してる人もそりゃいるけど、有名なのは事務所に所属してグループで活動してるの。私の所属は「パロライブ」ってグループの英語部門。「パロライブEnglish」所属の『ふかめたる』っていう未来からやって来たサイボーグ美少女Vtuber。それがバーチャル世界の私」
少し、誇らしげに胸を張る来夢。
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