エピソード2 試験②
みんなが固まってる中、風花が
どうしたんだい?お嬢ちゃん。
先ずは、中に入ってお茶でもどうだい。
そう言ってコテと言う名の少女を招き入れ。
そして、風花の机の前にある来客用のソファに座らせた。
何か飲み物出せよ!的な目配せをラリトにしてから、
じゃあ、話を聞かせてもらおうか。
ゆっくりと、優しく問いかけた。
えと…あのですね…
すこし困惑しながらも言葉を選びながら話始めた。
私、今一軒家に1人で住んでるんですけど…
家族もいました…お父さん、お母さん、弟の4人で暮らしていたんですけど…
最近…忽然といなくなっちゃって…
朝起きたら誰も居なくて…家中探しても誰もいなくて…
ふと、鏡に映った自分を見ると…
全身、真っ赤になってて…なんかベトベトで…すぐにシャワー浴びたんですけど、なかなか落ちなくて…
けど、そーゆーの時々あったんですよね…
朝昼、起きたら真っ赤になってる事…
いつも、家族がビックリして色んなことろに相談とかしてくれたんですけど…どこもダメで…それからもそんなのが続いて…
風花とモラルは目配せをしてからまた少女の話を聞き始めた。
ある日、思ったんですよ…コレは血じゃないのかなぁーって。
けど、どこも怪我してないし生理でもないし…
そーゆー事がおきた時は、必ず知り合いの人が突然いなくなるんですよ…
あー…もしかして私、記憶が無いだけで寝てる間に殺して回ってるんじゃないか?って。
ラリトがお茶を持ってきて、机の上に置いた。
どうぞ。
あっ…ありがとうございます…
一口飲んでから、また話を始める。
もう、嫌なんです…こんなのは…
だから…私を殺して下さい…
そしたら、身近な人達がいなくなるなんて事は無くなると思うんです…
風花が、こめかみに指をトントンとしながら
わかった!じゃあ殺してやろうじゃないか!
ラリトが、えっ?という顔をしてる横でモラルは無表情の顔をしていた。
だが、すぐには無理だ!ちょっと時間をくれないかい?
コテは、しばらく考えてから、
分かりました…どのくらい待てばいいですか?
そう尋ねた。
3日…いや、2日だ!それだけあったら準備が終わるから、殺してやろう!
コテは少し考えてから頷く。
じゃあ、2日後よろしくお願いします。
と、言って笑顔をみせた。
そして、色々と手続きをした後、立ち上がって深々と礼をして事務所を立ち去っていった。
ラリトが困惑した表情で、
ど、どうするんですか!ほ、ホントに殺すんですか?
うるせぇなぁー!
だから、最終試験だって言ったろうが!
お前が何とかしろよ!
モラル!お前も一緒に行け!
モラルは、深いため息をついて呆れている。
ラリトは、ただただ困惑している。
あっ!あとアイツも連れてけ!
そう言って奥の部屋に向かって大声で呼びかける。
ケイト!ケイト!こっち来い!
ラリトが不思議そうに
毛糸???と、頭の中に?マークが浮かんでいた。
風花が呼びかけると、奥の扉の奥でなにやら起動音がなってドアの下の方にある猫などが出入りするような小さな入り口からソフトボール位の大きさの白い何かが飛び出してきた。
そして、机の上に飛び乗ったと思うと左右の中心から1つずつまさにロボットというような腕が出て、下からは同じような脚と尻尾のようなものが出てきた。
正面上部には、丸いモニターが1つ付いており、そこが本当にモニターなのか単眼の眼の表示がされていた。口は無いようだ。
左の腕が出てきた上部には、KEY-10と書かれている。
なんだよ、風花!俺様になにかようか?
おう!ちょっとアイツらについてってやってくれ!
チラッと2匹を見て、
なんだ?知らねぇヤツが1匹増えてるじゃねぇかよ!
足でまといになるんじゃねぇぞ!
そう、悪びれもなく言い放った。
ラリトは、また訳の分からないのが出て来たな…と、思いつつも、さっきの少女の事を思い返していた。
さぁ、じゃあ行きますか。
と、その前にラリトさん着替えましょうか。
その服装じゃ目立ちすぎる。
帰って来る時も、結構ジロジロ見られてましたからね。
そう言って、いったん部屋から出て数分してから衣装をもってきた。
はい!これに着替えてから行きますよ。
白いシャツ、着物、袴に着替えた。ネクタイは苦しいと、言って付けなかった。
ほう、お似合いですよ。
馬子にも衣装って言いますからね。
ククッっと小馬鹿にしたように言った。
今は、ちょっとそれで我慢してくだい。
それしかなかったんで。
あっ、あとコレを。
と、いってイヤーカフを渡した。
それを耳に着けて下さい、通信機プラス位置情報、その他もろもろの機能がついてますから便利ですよ。
ケイトから色々情報も、もらえますからね。
おい!「さん」をつけろ!もしくは「様」をつけろよ!
ケイトさん!もしくは、ケイト様だろ!お前もまだまだ新人だろうが!
ケイトが怒った目をモニターに映し出していた。
え~、いいじゃないですか。
面倒臭いじゃないですか?今どき先輩後輩の関係なんて古いですよ。
そう言って言い直しはしなかった。
準備が出来たし、行きますか。
まだ、ごちゃごちゃ言ってるケイトを無視してモラルは歩き出した。
えっ?何処へ?
ラリトが不思議そうに尋ねる。
調査ですよ、調査。
殺すにしても、なんにせよ色々調べてからじゃないとね。
先ずは、彼女の家に行ってみましょうか。
わ、分かりました…
そう言って出口に向かうモラルの後ろを追ってケイトが肩にちょこんと飛び乗った。
モラルは気にも止めず歩き出した。
後を追ってラリトもついて行く。
行ってらっしゃーい!お土産よろしくねー!
と、双子が言う。
さっき買ってきたじゃないですか、また今度です。
そう言って外へ出ていった。
‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦
ケイト、ナビお願いします。
おう、ちょっと待ってろ…
ケイトの尻尾らしきものがスルスルと伸びて、モラルのイヤーカフに繋がって、なにか転送しているようだった。
ありがとうございます。
じゃあ、行きますか。
あ…はい…家の場所分かるんですか?
ああ、今ケイトから情報送ってもらったんで、分かりますよ。
目に入れてるコンタクト型のモニターに表示されてますから。
ここから、それほど遠くないみたいです。
歩いて行ける距離です。
‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦
ここみたいですね…
そこには、少し不気味なツタの絡んでいる家があった。
ラリトは、この家から不穏な気を感じているようだった。
ケイト、サーチお願いします。
わかった!
そう言って、目の前にある家をジッっと見つめた。
生命反応は感じられないな!
彼女は…居ないみたいですね。
ちょっとお邪魔させてもらいますか。
と、モラル。
えっ?ちょっとそんなの不法侵入じゃないですか!
まずいですよ、そんなことしたら!
慌ててモラルを制する。
いや、だって調査しないと何も始まらないじゃないですか?
ラリトさんも、試験合格しないと食べる事も寝る所もなく、どこかで野宿する事になるんですよ?
こんな見知らぬ街でやっていけるんですか?
元の場所に帰るんでしょ?
ま、まあそーですけど…
何も言い返せないラリト。
じゃあ行きますか。
渋々ついて行くラリト。
ドアの前でガチャガチャとドアノブ回す。
やはり、鍵はかかってますか…
ケイトお願いします。
しょうがねぇーな!モラルはホント俺がいねぇとなんもできないんだから!
ドヤ顔で言う。顔は無いのだかそう見えた。
モラルが、ドアノブの前に両手を差し出して
その上にケイトが肩から降りて乗った。
ふーん、かなり旧型の鍵だな…今はほとんどが電子ロックだってぇーのに珍しいな。
開けられないんですか?
モラルが尋ねる。
は?!んなわけないだろうが!こんなの楽勝だっつーの!
じゃあ、よろしくお願いします。
いいように使われてるのでは?と、ラリトが思っていると。
ケイトの両腕が1度中に入ってから手の先が工具の形をしたものが4本出てきてドアノブの鍵穴に手先を突っ込んでカチャカチャやっている。
ものの数十秒で、カチャっとなにかが外れる音がした。
ほら!簡単だったろ!
はい、ありがとうございます。
特に感情も込めず礼を言う。
じゃあ、お邪魔しましょうか。
そう言ってドア開けて中に入っていく。
お邪魔しまーす…
ラリトが律儀に言う。
中は、まだ日中だというのに窓にもツタが絡んでるせいで薄暗い。
入ってすぐ右側には、階段がある。
奥の方には居間なのか、そこに続く廊下がある。
じゃあ、俺は1階を調べるんでアナタは2階をお願いします。
当たり前のように言う。
えっ?私1人で行くんですか?
ラリトは驚く。
ええ、手分けして調べた方が早く済みますし彼女がいつ帰って来るか分からないでしょ?
まあ、そーですけど…
モラルがクスッと笑って、
あっ!もしかして怖いんですか?
ち、違いますよ!
私、こーゆーの初めてでどうしたらいいか分からなくて…
モラルが少し考えてから、
確かに、そーですね…
じゃあ、よろしくお願いします。
と、言って肩に乗ってたケイトを持ち上げてラリトの肩に乗せた。
しゃーねぇな!色々教えてやるか!
よろしくな!狐!
よろしくお願いします…それと私の名前は狐じゃなくてラリトです。
おう!ラリトよろしくな!
俺の事は、ケイトさんかケイト様って呼んでいいからな!先輩だから敬えよ!
分かりました、ケイトさん。
うながして、
じゃあ、2階へ行きますか。
‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦
1階では、モラルが1人で奥の居間の方へ向かう。
モラルは薄暗い中でもスイスイと進んでいく。
猫だけに夜目がきくようだった。
うっ!なんですかこの錆びた鉄のような臭いは…
居間の奥の方にあるキッチン横のドアへ向い
こっちですか?
そこにはあったのは洗面所と奥に風呂場のようだった。
風呂場を覗くと、辺り一面に血痕のようなもので汚れていた。
…これは、血…ですかね…
そういえば、なにか全身汚れてて洗い流したって言ってましたね…
に、しても…こんなに汚れるものでしょうか?
少し考えこむモラル。
一通り調べて、居間へ戻り閉め切ったカーテンを少し開けて外を覗いた。
そこには、小さな庭があり家庭菜園や花壇などがあり、隅の方には少し大きめの物置があった。
モラルはそちらの方を、何かを探るように見ていた。
‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦
一方、ラリトの方では。
ギシッギシッと、嫌な音をたてながら2階へ上がっていく。
ラリトも狐なので夜目はきくようでスイスイと上がっていく。
階段を上がりきると、3つの部屋があった。
手前から調べますか…
1番手前のドアを静かに開けて覗き込むと、そこには2つのベットと、三面鏡の化粧代があった。
横には小さな机と上にはノートPCが置かれていた。
どうやら、親御さんの寝室みたいだな!
んー…別にこれといって変わったとこは無いな!
ケイトが肩越しに話しかける。
そーですね、これといっておかしな気の流れも感じませんから、次の部屋行きましょうか。
次のドアも慎重に開けながら覗き込む。
そこには、勉強机と乱雑に放り出されたゲーム機などがあった。
ここは、弟くんの部屋みたいだな!
なんか、エッチなの隠してるかもしれないから探してみようぜ!
ケイトが、言う。
何言ってるんですか!私達は調査に来てるんですからね!
はっ!冗談の通じないヤツだなー!
お前がビクビクしてるから場を和ませてやろうとしてる先輩の親切心が分かってねぇーよな!
大きなお世話です。
真面目にやって下さい。
ここも問題無いみたいですから、最後の部屋に行きましょうか。
次の部屋の前に来た途端、ラリトの背筋がゾクッとした。
何か部屋から黒いモヤモヤしたものが見えますね…
えっ?そんなもん見えねーぞ?
モニターに映る目をパチクリさせて何度も確かめている。
ええ、ドス黒い陰湿な気が漏れ出てますね…
開けますか?
ラリトがゴクリと唾を飲み込んで言う。
ちょ、ちょと待て!
今、モラルを呼んだからみんなで確かめるぞ!
ケイトがモラルに連絡をとったようだった。
分かりました。
下の方から、階段をゆっくりと上がって来たモラルは落ち着いた口調で、
どうしました?何かありましたか?
ええ、この部屋…凄く嫌な気が出ています。
どうします、開けますか?
もちろん、開けましょう。確かめないといけませんからね、現象の根源を。
そう言ってモラルはドアに手をかけて躊躇なくガチャリと開けた……
……つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます