第32話 そばにいる。
入院が決まってからは、手続きや準備で気が付けば1週間が過ぎていった
この服も可愛いから持っていく
そう言いながら準備をしている君を見て少しほっとしたような、心がざわつく気持ちになった。
その答えはすぐに知ることになる。
病室に着き、荷物を鞄から全て出して引き出しにまとめ終え
「また明日もくるからね」
そう伝えるご両親に
「こんなに元気なんだから毎日は来なくていいよ!」
彼女はそう言った
屈託のない笑顔で。
病院を出てから忘れ物をしたことに気がつき病室の前に行くと小さな声が聞こえてくる
怖いよ、死にたくない。
繰り返し彼女は声を押し殺しながら何度も、何度も言うのだ。
違和感はこれだった。
怖いわけがない、不安なはずがない
忘れ物したから戻るね
メールを彼女に入れて返信が来てから少しして病室に向かう。
目を腫らし
なんでもないよ、無理に笑う君を僕は抱きしめた。
大丈夫、そばにいるから
そんな言葉を、態度を求めてないのだろう
それでも君に伝えないと
いけないと思ったんだ。
君が不安になれば何度でも
君が嫌だと言っても何度でも伝える
そうしないと君は僕の横からいなくなってしまうんじゃないだろうかと怖かった。
君の左手の薬指にある指輪に僕の全ての答えが詰まっている
それを口にするのは恥ずかしい気持ちもある
それでも愛してると君が眠るまで言い続けた
もうすぐ春が来る
木々は騒めき
優しい暖かな風が窓から吹き込む
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます