第12話 君に会えない夜

出張

なんて寂しい響きだろう


2泊3日だが、君と会えないと考えるだけで寂しくて堪らなくなってしまう


仕事が終わってホテルに帰り、君と電話をする

今日はどうだった?

楽しかった?


君がそばにいない僕は、心なしか声が落ち込んでいたかもしれない


2、3時間電話をして

おやすみ、じゃぁまたねと言ってから無言の時間が数秒流れる


通話終了のボタンを押したくない


互いに仕事もあり負担や、良くない影響を与えたくないが、どうしてもそう思ってしまう。


君が寂しいと呟く

君を今すぐに抱きしめられたらいいのに


窓を開けて禁煙の張り紙がされているホテルで煙草の煙を見ながら

夜空を見る


星が綺麗だよ



君も今同じ空を見ているかな?

離れていても同じ空を見ていると

そう感じられると少し安心する


君が体調を崩し、会えなかった日があった

その時とはまた少し違うが

もどかしい気持ちになる


眠そうな声

嬉しそうな声

寂しそうな声

全てが君

でもいつも近くで話しているのとはまた違う


出張最終日にワインが有名な店に寄る

帰ったら君とワインを飲みながら話を沢山しよう。そんな夜があってもいいだろう。


夜に電話をして

またねと言って電話を切る


この赤い通話終了のボタンを押すのは

しばらくなくていい


仕事を蔑ろにはできない現実


少しであろうと君と時間を過ごしていきたい

改めてそう感じさせられた時間だった


明日帰ったらすぐに君の元へと行きます


いつもより

強く抱きしめてしまうかもしれないけれど


君もそれ以上に抱きしめてください


愛してると何度も言うかもしれません


もしかしたら泣いてしまうかもしれません


その時は見ないふりをして


少し笑ってくれたらいいな


君がいる日常を

君がいない日常を


どちらもかけがえのない時間だから



今夜は君を少し感じられるように


携帯を握りしめ


瞼を閉じる


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