第8話 君に会いたいと思う夜

 その日、僕はいつものようにアイビーで時間を過ごしていると一通のメールが来た。


___順さんごめんなさい、今日体調が悪くてアイビーには行けそうにないです。


大丈夫ですか?

ゆっくり休んでください、体調に気をつけて。


僕はそう返した。


会いに行っていいですか?


家まで行きます。


そう言えたらどんなに良かっただろう

僕の不甲斐なさに肩を落とす


大丈夫だろうか、それだけを考え

珈琲を味わえる余裕はなかった。


家に着き、メールを送ろうかどうしようか

何度も打ち込んでは消してを繰り返す。


もうきっと寝ているよな

そう思い携帯の画面を閉じる。


こんなにも近くにいるのに

何故だかとても遠く感じる


こんなことを彼女に伝えたらどう思われるのだろう。

笑い飛ばしてくれるだろうか

そんなこと気にしないでと言われるだろうか


君に会いたい

そばにいて、君が安心して寝息を立てられる存在になれたらどんなにいいだろうか


いま、君はどんな寝顔で寝ていますか?

安心してますか?

疲れてはいないですか?

幸せですか?


幸せかどうか問いかけるものではない

それは分かっている

でも君が幸せであれと

そう願うのだ。


薄暗い部屋の中にカーテンから

月の光が差し込む


今日は満月だ


こんな僕の不甲斐なさを

打ち消してくれるようなそんな光

君のような

まばゆすぎず

優しく照らしてくれる光だ



手を伸ばす


こんなにも近くにも見えるのに


届かない


いつかきっと


そう思いながら


少しでも掴めればと


優しく手を包み込む

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