第2話 きっかけ
久しぶりの休日、普段はスーツで行くが今日は普段着でアイビーに足を運んだ。
時間は勿論いつも通りの午後6時、あたりは薄暗くなり始めている。
10分後に彼女が来る。
さすがに3ヶ月もほぼ毎日顔を合わせてるので会釈をすると彼女がこちらへと向かってくる。
「隣いいですか?」
僕は緊張で胸がいっぱいになりながら
「ええ、どうぞ。」
と一言。
素っ気ないと思われただろう、だが僕にはこれが精一杯の返事だった。
「いつもスーツなのに今日はお休みなんですか?」
知ってくれていた事に驚きが隠せない
「そうなんです、たまには私服で来ようかと思いまして」
ふふっ、と彼女は微笑み沈黙と時計の音だけが響く。
なんと声をかければ良いのか、女性と話すのに慣れていない僕からすれば隣に想いを寄せる女性が座ってるだけで今にも珈琲カップを落としてしまいそうなくらいだ。
「あの、」と僕は声をかける
「はい、なんですか?」
「珈琲はお好きなんですか?」
「珈琲もここのお店の雰囲気も好きですよ、珈琲の香りに包まれて幸せな気分になります」
「僕もです。良ければまた時間あえば一緒に珈琲飲みませんか?」
「実は私1週間出張でここに来られないんです」
僕はそういう意味で言ったのでなかったが僕がもっと分かりやすく言えばよかったと落ち込んでいると
「また出張から帰ったらご一緒させてもらいますね」
「はい!」
嬉しさのあまり無邪気に返事をしてしまい顔が真っ赤になる。
店主は恐らく僕の気持ちを分かっているからか頑張ったねとでも言いたげな顔でこちらを見ている。
すいませんとお辞儀をする。
「良ければ貴方の名前を教えてもらってもいいですか?」
「私は高崎
「雫さん、いい名前ですね。僕は佐藤順です。」
彼女の名前を知れただけで僕の休日は色鮮やかなものになった。
その後は特に話すこともなく彼女が家に帰って仕事の準備をするということだったので、またとだけお互いに挨拶をし僕もアイビーを後にした。
雫さんか、何度も頭の中で考えながら家に着いた。
寝る準備をし、ふと外を見ると満月がとても綺麗な夜だった。
いい1日だったと思い返す。
貴方も同じ空を見ていますか
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