珈琲を飲める理由が貴方ならば
ましろ。
第1話 喫茶 アイビー
秋の心地よい風に流れ珈琲の香りが漂う
僕がこの喫茶店へ訪れるようになってから3ヶ月が経った。
初めは仕事終わりに少し休もうと思い入ったのだが気がつけば毎日のように訪れ、店主とも他愛もない会話で盛り上がる仲になっていた。
自己紹介が遅れたが僕の自己紹介をする事にしよう。
名前は、
職業は役職も特にはついていない会社員の25歳だ、毎日代わり映えのない日々を過ごしているがそこまで不自由だと感じたことはなく満足している方だとは思う。
僕は珈琲が元々好きではなかった、飲んだことがないが苦いイメージが幼少期からあるからか避けていたのかもしれない。
だが、今僕の手元に運ばれてきた飲み物は珈琲だ。
僕が珈琲を飲み始めたきっかけは名前すらも知らないがある女性だ。
初めてアイビーに訪れた際に彼女を見て一目惚れというのだろうか、不思議と好きだと思ったのだ。
毎日午後6時になり僕が訪れると10分きっかり後に彼女は来店する。不思議な雰囲気と儚げな表情が印象的だった。
本当はココアでも飲もうと思って入ったのだが彼女にいい格好をしようと見られてないと分かっていても大人な男性を装った。
「すいません、珈琲1つ、ブラックで。」
一口飲んだ時は正直後悔した、なんだこの苦い飲み物は。せめてミルクと砂糖を貰えばよかったと後悔したが全て飲み干した。
この時のことを店主は覚えているようで、顔に出ていたよと優しく微笑みかけるのだ。
恥ずかしい気持ちだが、今はこんなにも珈琲が好きになった。
今日は店主にこの喫茶の名前の由来を教えてもらおうと少し楽しみにしながら来たのだ。
「今更だけど、アイビーにした理由ってなんですか?」
「順くん花は好きかい?」
「詳しくはないですけど好きな方だと思います」
「アイビーは花とは違うんだがツルのような植物で花言葉は永遠の愛なんだよ」
「永遠の愛か、なんだか素敵ですね」
「愛は人によって形も種類も違う、私はこのお店が、ここに来てくださるお客様も、珈琲も愛している。ここに訪れる方が愛に気がついたり見つけたりそんな居場所になってほしいと亡き妻と始めた店なんだ」
店主の想いを初めて聞いた日だった。
そんな想いを込めてつけられた名前だったのだと知りずっと通い続けようとそう思った。
この空間と珈琲を味わいながら
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