第4話 17歳の女子高生 Ⅱ

若い女の人の運転手って、珍しいな。タクシーの運転手といったらおじさんばかりなのに……。なつみは真っ黒なタクシーに乗り込んだとき、真っ先にそう思った。


「すみません。私、泣いてしまって。」

「いえいえ。大丈夫ですよ。」

「私が会いたいってお願いした友達は、中学の時に部活でいじめられて自殺してしまったんです。その子は、私の親友でした。でも、私はその子の親友と言っていいような人間ではありません。」

「何があったのですか?」

「はじめは、ごく一部の人間が彼女のことをいじめていました。それを知った私は、私だけではどうしようもできなくて顧問の先生にそのことを言ったのですが、『いじめなんて嘘だろう。いつもみんな仲良さそうじゃないか。』と言って、信じてもらえませんでした。いじめはどんどんエスカレートして、ある日いじめている側のリーダー格の女の子が私もいじめている側の人間になれと言ってきたんです。そして、もしそっち側の人間にならなかったら、私のこともいじめてやると言ってきました。私は、はじめは抵抗しました。私だけはなんとしても彼女の味方でいるんだって。でも、徐々に私への嫌がらせも始まってきて、怖くなって、私は最終的にいじめる側になってしまった。私がいじめる側になった数日後、彼女は3階にあった部室から飛び降りて亡くなりました。私が彼女を殺してしまった。本当に取り返しのつかないことをしてしまった……。」

なつみは大粒の涙を流し始めて、うつむいてしまった。

「そんなことがあったんですか。実は、私も死者なのです。」

「え?そうなんですか?!」

なつみは目を丸くした。

「はい。『死者の世界』にも、現実世界、この世と言われている場所と同じように仕事というものがあって。このタクシーの運転手も『死者の世界』の仕事の1つです。」

「他にはどんな仕事があるんですか?」

「この世と同じような仕事もありますが。『死者の世界』ならではの仕事もあります。例えば死神とかがそうですね。」

「へぇ、……。『死者の世界』にも仕事があるなんてびっくりです。」

「私もはじめは驚きました。もう少しで、織田雪様の元へ到着いたします。私はいじめのことに関しては、何も知らないので口を出せる立場ではありませんが、その時、伊藤様がどう思っていたのかお伝えしたほうが良いと、聞いていて思いました。」

「雪は、もう私に会いたくないと思っているかもしれません。でも、少しでも話ができたらと思っています。自分勝手ですが……。」

「はい。」

『死者の世界』の賑やかな明かりが真っ黒なタクシーを照らしはじめていた。

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