第3話 17歳の女子高生 Ⅰ
コツ、コツ、コツ、……。電話をしながらローファーの音を鳴らして、制服を着崩した女子高生が歩いていた。
「もしもし?お母さん?どうしたの?あ~、ごめん。連絡するの忘れてた。今、駅から帰るところだから。うん。それじゃ。」
ちょうど今、午後8時をまわったところだった。帰りを心配したお母さんからの電話に面倒くさいと思ったのか、女子高生は電話が終わった後、ため息をついた。
「もうこんな時間なんだ。明日も学校面倒くさいな。」
その女子高生は、タクシー乗り場に向かった。タクシー乗り場には今までに見たことがない真っ黒なタクシーが止まっていた。女子高生は真っ黒なタクシーを怪しく思ったが、他にタクシーがいなかったため真っ黒なタクシーに恐る恐る乗った。
「この車、タクシーで合っていますか?」
「はい、そうです。」
若い女性のタクシー運転手が女子高生の方を見て、笑顔で応えた。
「じゃ、自宅までお願いしたいんですけど。住所は、……。」
「申し訳ございません、お客さま。その行き先は、対応区域外となっています。このタクシーの行き先は1箇所のみとなっていまして、その行き先というのは『死者の世界』となります。」
女子高生の言葉を途中で遮って、運転手が言った。
「え、……。」
女子高生は訳が分からず、言葉を失った。その様子を見た運転手は、微笑みながら女子高生に声を掛けた。
「亡くなってしまった人やペットなど、お客さまにはもう一度お会いしたい方はいらっしゃいますか?」
「ということは、……。このタクシーに乗れば、亡くなった人に会うことができるということですか?!」
「はい、そうです。」
女子高生は、このタクシーの正体を理解した。その途端、女子高生は涙をポロポロと流しはじめた。
「私、どうしても、もう一度会いたい人がいるんです。中学の時の友達に会いたいです。」
目を真っ赤にして、手と声を震わせながら女子高生は運転手にお願いした。
「かしこまりました。このタクシーを利用するにあたってお名前をお伺いしなければいけないのですが、お客さまのお名前と、そのご友人のお名前を教えていただけないでしょうか?」
「私の名前は伊藤なつみで、友達の名前は
「ありがとうございます。それでは、織田雪様の元へ向かいます。おっと、その前に、……。ティッシュどうぞ。」
「ありがとうございます。よろしくお願いします。」
真っ黒なタクシーは、黒い雲が淀んでいる空に向かって走り始めた。
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