§ 2―4 白いローブの女 ③新たな装備と力



「ちょっと待ってくれ! 」


「あ~、質問、文句、反論、確認等々は全部後にしてね。まず話を聴くこと。いい? 」


 彼女は面倒くさそうに蓮たちに言う。


「ふ……ふざけないで! こっちの言うことに答えて」


「はぁ……。また、殺されないと解からないかしら」


 一瞬で黙らせる、凄みをはらませた視線に、愛菜はたじろぎ、息を飲む。


「そっちの、弓使いさんもいいかしら? 」


「は、はい……」


 護も素直に従う。彼女はにっこり笑い、言葉を続ける。


「うんうん、いい子ね。じゃぁ、説明始めるから、よく聞いててね」


 彼女はこの地獄にそぐわない陽気な口調で説明を始めた。



「え~っと、まず、この地獄はまだまだ続きます。1面クリアって感じね。でね、まだまだ先は長いし、出てくる敵も強くなっていくわけなんだけど、当然、今のあなたたちじゃ到底先に進めないわ。だから、あなたたちには霊具れいぐを勝手に付けさせてもらったわ。で、霊具の使い方のレクチャーを始めるわね」


 緊張感なく笑顔で話しを続ける。


「百聞は一見にしかず。まずは、よく見ててね」


 白いローブの中からロングソードを取り出すと、左腕で剣をかかげる。剣についた水晶のような半球体の装飾があおく輝くと、剣の刀身が蒼い光沢に包まれる。


「はい、こんな感じ。武器の霊神珠れいこうじゅに力を送るイメージね。はい、やってみて」


 全然理解できない。剣が蒼く光ったことには驚くが、自分にそんなことが出来るとは、まったく思えない。愛菜も護も同じことを思っていたらしく、3人で顔を見合わせる。


「ほらほら、さっさとやるの! それとも、もう一回、死ぬ? 」


 笑顔でたちが悪いことを言う。しぶしぶ、言われたとおりにやってみる。


 鞘から刀を抜き、両手で前に構える。とりあえず、力を込めて握ってみる。何も変化はない。


「違う、違う! 力は入れないでいいの。集中して、イメージして。全身の蒼い力を武器の霊神珠れいこうじゅに流すイメージよ」


 蓮は心を落ち着かせる。目を閉じ、自分の身体に蒼いオーラが包まれている想像をし、そのオーラを刀のつかがしらにある水晶球に流す……。霊神珠れいこうじゅが輝き、刀身が薄くだが、蒼い光に包まれる。


 それを見て、天咲あまさき ひびきは少し目を見開き驚く。


(こんなに簡単にできるなんて驚いたわね。おそらく、彼は力の使い方を無意識に理解してるのね)


「できてるか、目を開けて確かめてみてね」


 その言葉に目を開けると、蓮は刀を包む蒼い光に驚く。


「これは、一体? どうして」


「その蒼い光が霊神れいこう力。命を力として具現化したものよ」


「命の力……」


 それを見ていた愛菜と護も、蓮が出来ていることで本気になり、深く集中しだす。白ローブの天咲が「ちゃんとイメージしないとダメよ」などのアドバイスを何度もし、2人の槍と弓にも蒼い光を包ませることに成功させた。


「こんなことができるなんて……」


「ぼ、ぼくにもできるなんて……」


 3人全員ができたところで、天咲は、うんうんと笑顔を送り、説明を再開させる。


「それが霊神れいこう力よ。霊神れいこう力をまとわせれば威力が数倍にも上がるわ。その武器についた霊神珠れいこうじゅがあなたたちのか弱い力を増幅させるはたらきをするの。だから、慣れるまではそのことを意識してね。ガントレットもブーツも同じだから」


 左手のガントレットとブーツを見て、手の甲とくるぶしにあるたまを確認する。


「じゃぁ、霊神れいこう力のことはわかったわね。それじゃ、後は頑張ってきてね」


 そうニコニコとしながら言い終わると、天咲は左手で祭壇を叩いた。それと同時に、足元の石床が開き、そこから滑り落ちる。


「な! 」


 かすかに「いってらっしゃーい」と呑気な声が聞こえてくる。他の2人は、気づいたときにはおらず、斜めに滑り落ちていく。


 30秒ほど滑り落ちると、薄暗い地下空洞に転がり落ちる。剥き出しの岩肌に腰を打ち、痛みが走る。


 すぐに周りを見渡すと、そこには小さなほこらたたずみ、空洞の奥には、鉄の胸当てを着けた、鉄仮面がこちらをにらみつけていた。


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