CHAPTER.2 黒き森の生存競争

§ 2―1 仄暗い地下での斬りあい



 この薄暗い地下で目を覚ますのは何度目になるだろう。6度目? いや、確か7度目か。すぐ横に見える小さなほこらが、終わらぬ戦いと痛みを嫌でも認識させられる。


「……またか」


 上体を起こすと、カチャ、と金属音が鳴る。左手のガントレットの金属プレートがれる音だ。金属プレートで覆われたガントレットの手の甲には、何やら小さな文字が刻まれている金のふちのある青い宝玉があしらってある。その宝玉は、あの白服に履かされた金属のブーツのくるぶし部分にもあり、また、刀の柄頭つかがしらさやにも装飾してある。


 立ち上がり、制服の上から巻かれた腰袋にくくられた鞘から刀を抜く。


 足場の悪い地面の奥に、もう見慣れた人影が立っている。壊れた鉄の胸当てと、不気味な鉄の仮面をすっぽりかぶった刀使いだ。


「今度こそは……」


 殺される恐怖と痛みがないわけではない。勝てるとも思えない。心が折れないように必死に歯を食いしばり、刀を握り歩き出す。



 霊神れいこう力のコントロールも少し慣れてきた。一太刀だけでも……。そんな目標を勝手にもうけて走り出す。それに合わせて鉄仮面も走り出す。


 意識を足に送ると、ブーツの宝玉があおく光る。一気に遠間から猛烈もうれつなスピードで踏み込みながら、刀を横に振るう。しかし、鉄仮面は容易に刀で受ける。それと同時に、横に回り込み振るわれた刀を、なんとかかわす。


 間髪入れずに振るわれる鋭い打ち込みをなんとか刀で受けるが、1撃1撃、れんの腕がしびれるほどの衝撃が走る。


 受けきれず刀をはじかれ、膝をついたところに刀が振るわれると、キィィーン! と金属音がひびき渡る。必死に刀を受けたガントレット越しの衝撃が、左手を麻痺させる。それでも、必死に右手の刀を振るうが、鉄仮面は後ろに下がり、難なくかわす。


「ここだ!」


 ブーツの宝玉が光り、後ろ脚で踏み切り一気に踏み込み、刀を横にぐ。とらえた! と思った瞬間、鉄仮面は刀で軽く斬撃をいなし、そのまま返した刀で左肩から袈裟けさに斬られる。


 骨と肺と心臓が、引き裂かれる。



 勝てない……。でも、少しは戦えるようになった。次こそは……。



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