§ 1―21 決死の作戦



 地面を震わせ大きな歩幅で近づいてくるサイクロプスに、2人は勢いよく向かっていく。


 蓮と愛菜は左右に分かれ、サイクロプスを挟んで構える。


 標的を蓮に向けたサイクロプスは、巨大な棍棒をいとも軽く肩口まで振りかぶり、やや斜めに振り下ろす。蓮は必死に後ろに飛んで避ける。想像を超えるリーチの長さで、豪快に振るわれる棍棒は、蓮にわずかに届かず、地面を叩く。その衝撃で地面が揺れる。


 あまりの力に、蓮のひたいに冷たい汗が一瞬であふれ出す。サイクロプスは、避けられたことにいらついているように、こちらをにらみつけている。


 その隙をついて、愛菜は後ろからサイクロプスの左の脹脛ふくらはぎを突く。「ウゥゥ」とうなりながらサイクロプスは眉を寄せ、顔の向きを変え愛菜をにらむ。そして、足元の愛菜に左拳を叩きつける。全力で愛菜は後ろに飛び退く。いつも無表情な愛菜の目元が震えていた。


 2撃、3撃と振るわれる剛撃を必死にかわす。蓮は、かすっただけでも致命傷になる恐怖に、前に切り込む足を重くさせていた。1分程度しか対峙していないのに、息が上がっている。それでも距離をとって、一つ目を中心に2人で右回りに動き続ける。


 横に動く2人に対して、サイクロプスが棍棒を横に振りかぶったところを愛菜が動きを変え、サイクロプスに突っ込む。咄嗟とっさのことに、サイクロプスの棍棒は中途半端な振りになり、地面を叩く。その隙を見逃さず、愛菜は即座に棍棒を持つ右手首を槍で突き刺すと、棍棒を放した。


「蓮!」


 愛菜が叫ぶまでもなく、察して蓮も前に出る。がら空きの左アキレス腱を力いっぱいに真横に断つ。サイクロプスはうめき声を上げ、膝をつく。


「今だ! 護!」


 息を殺し、狙いを定め続けていた護は、その声に反応し、大きな目に一直線に矢を放った。


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