§ 1―14 逃れられない浄化
「ハッ!」
飛び起きる。急いで後頭部を人差し指と中指で触れる。頭がある……。恐る恐る手のひらでも確かめると、頭部の硬さとモサモサと
最後に見た光景を思い出し、目を丸くする。
「水無月さん!」
首を振り、周辺を見回すが彼女の姿は見つけられなかった。彼女の白い髪はよく目立つ。
横に落ちている刀を拾い、立ち上がる。先ほどまでの怒りもすっかり消えていた。その代わりに、彼女が消えてしまったのではと、ただただ心配する気持ちになっていた。
とりあえず、
神殿を見ると、建物の裏側のようなので、石畳の道を目指し神殿方向に歩き出したとき、あの鐘の音が聞こえてきた。
グアァァーン……。グアァァーン……。
いくつもの青ざめた声が上がり、数人が
遠くで上がる悲鳴が聞こえ出す。2つ、3つ……。聞こえてくる場所が増えていく。そして、一番近くに聞こえた声の先の真後ろに振り返る。
昨日と同じように、ハルバードを持つ化け物が、まさに
昨日は腹を貫かれ、ついさっき、頭をゴブリンにかち割られた。その痛みと恐怖が蘇る。貫かれるのは嫌だが、このまま、殺されて、殺されて、殺されて、殺されて……。何も感じない。心が痛むことない日々を迎えたいとも思う。そのために、マンションから飛び降りたのだから。
刀を持つ腕の震えは止まったが、力も入っていなかった。剣道部にいたときの経験から、向かい合った相手に対して、背を向けて逃げるという選択肢は思いつきもしない。ただ刀を相手に向けて、構えているだけの姿勢をとる。
「グガアァァァ!」
周りの学生を殺しながら、近づいてきたミノタウロスは、蓮を見て
しかし、蓮は後ろに身体3つ分下がり、斬撃を
何度も振るわれる斧槍は
そこにもう1体のミノタウロスが参戦する。蓮はちらっと後ろを確認し、同時に振り下ろされるハルバードを、今度は前に飛び込み、相手の
怒り狂い、
横薙ぎされたハルバードを大きく後ろに下がり躱したとき、背中に何かが当たった。身の丈を遥かに超える岩だ。これ以上は下がれない。相手が振りかぶるところで前に出ようとする。
そのとき、後ろの岩を貫いた斧槍が、そのまま、蓮を背中から突き刺さした。
蓮は意識を失う直前に、後ろを見た。そこには、右の角がないミノタウロスが、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます